日毎に敵と懶惰に戦う

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歌舞伎役者 片岡仁左衛門 を見る

6時半起床。ホテルの裏山に散策路があるらしいので、ちょっと歩いてみる。夕べの小雨が、低いなりの山の上では雪になっていたのか、うっすらと雪化粧した冬枯れの野山。遠くに見える山々も雪をかぶっていた。
朝飯をホテルの食堂で。食べて出かける。蹴上から烏丸御池に出て、地下鉄を乗り換えて国際会館まで。現地で落ち合う約束にしていた大学時代の先輩とばったり出会い、そのまま「び・ぜん・ぎゃるり」に向かう。
今回、京都に来ているのは、「歌舞伎役者 片岡仁左衛門」を見るため。十三代目片岡仁左衛門の晩年を追ったドキュメンタリーで、監督は「痴呆性老人の世界」などでも知られる羽田澄子。なにが特殊かと言って、とにかく長いんである。全六部、10時間以上ある。だから、気軽にみようったてそうそう見られない。しかし、出来が大変良い映画で、岩波ホールで上映された際には、大変な盛況であったと言う。それを今回、見ようと思う。
二日間の通し券を事前に買ってあり、パンフレットを貰って入場。地下のホールは中野芸能小劇場の天井を高くして余裕を持たせたような劇場だった。映画の感想は、長くなりそうなので後で。第一部の終了後、片岡秀太郎の舞台挨拶があったが、とうてい六十過ぎとは思えぬ肌艶の良さであった。
昼飯は近くのそばやでにしんそば。旨くも無く不味くも無く。マクドナルドでコーヒーを飲んでから第二部。休憩時間には同じ建物の中の喫茶店でコーヒーとクリームブリュレ。そして第三部。回を重ねるごとに人数は増えていき、最終的には200席のホールに120〜130人くらい入っていただろうか。二日通し券を買った人が多いらしく、また、思ったよりも若い女性が多いのが印象的であった。
終わって、地下鉄で五条まで出て、アランヴェールホテルにチェックイン。これから夕飯を食いに行くところ。

で、飯を食ってきた

ぶらぶらと歩いて、折角だからね、と先斗町へ。適当な店にとりあえず入って、刺身だのかきだの。それなりに美味しかったが、いまいち京都らしくないので適当なところで腰を上げて、またふらふら。
鍋が食いたくなったので富美家という店に入る。個室に通されて、蒸かきやら湯葉のから揚げやら。鍋は鴨鍋を頼む。鴨の肉がなかなか結構で、豆腐も美味しく、出汁も良い味で、いいお店であった。雑炊で〆ておなか一杯になってみせをでる。
ぶらぶら歩いて帰りつつ、天下一品があったら入ろうと思ったのだが生憎通り道に無し。寂しく宿に入る。

片岡仁左衛門

仁左衛門にとって、歌舞伎とは音楽であるな、ということを強く感じる作品。若い大部屋の役者たちに稽古をつける場面も、すべては音楽である。間である。芸とは間である。
公家言葉や鼻濁音など、言葉へのこだわり。インタビューに答える中でも、ちょっとしたニュアンスの違いに気を付けながら言葉を言い換えるシーンがあったりして、言葉への強いこだわりが感じられる。
とにかく、神仏を拝む姿からして絵になる、芸になっている、これぞ役者、という生きる姿を見せつけられるような映画なのだ。稀有な芸人である。
晩年、ほとんど光を失っているのだが、仁左衛門は明るい。鷹揚で機嫌よくインタビューに答え、芸談を語る。語る姿が本当に嬉しそう。