日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

奈義町現代美術館

カプセルホテルで5時10分起床。われながら、旅先でありながら大変に勤勉なことであるなあ、と呆れもし感心もする次第。
嗽手水に身を清め、と言ってもあんまり清まりそうにもないところであるが、まあいいや、三ノ宮まで歩き、JRの普通列車に乗って大阪まで。桜橋口に出て、7時の津山行き高速バスに乗る。新幹線に頼らずに、奈義町になるべく早くたどり着くルートを探索した結果、こういうことになったわけであり。
途中の美作インターで高速バスを降り、目の前のスーパーで時間を潰す事暫し、豊沢交通という路線バスに乗り換えて奈義町を目指す。10時15分着。
さて、奈義町現代美術館である

磯崎新作品、内部に恒久展示のアート作品を3つ展示する。建築とアートが一体になった『コミッションワーク』は、直島をはじめ最近増えているけれど、先駆となったのはこの施設なのである。いかにも町営という感じののんびりした雰囲気の窓口を抜けて中へ。写真撮影はどうぞどうぞご自由に、ということだそうな。

宮脇愛子の『うつろひ』は展示室の導入部にある。うねるワイヤー。

岡崎和郎の『HISASHI-補遺』。月の形をした空間で、前後に開いた窓からは風が吹き込んで鳥のさえずりもかすかに聞こえるのだけれど、とても静かで。歩くと音の反響が凄く、歩いたり立ち止まったりしながら、音と、差し込む光をゆったりと楽しむ空間。

白い壁に作り出される影のグラデーションが、杉本博司の作品も思い起こさせたりするのだった。
そして、荒川修作+マドリン・ギンズの『偏在の場・奈義の龍安寺・建築的身体』。相変わらずわかったようなわからんような、ようするによくわからん解説文を斜めに読んでから入る最初の空間は黄色に満たされ、地元の人たちの写真が張り巡らされている

そして、中心部の円筒の中、ちょっとあぶなっかしい螺旋階段を上ると、建物の中からも目立つ大きな円筒の中に入るのだった

円筒の上部から差し込む光にやわらかい光に満たされた空間。円筒の先の方までいって振り返ると

うーむむむ、またしても感覚がおかしくなりそうな不思議な空間…。

しばし絶句してぐったりと疲れて出る。光のに包まれた明るい喫茶コーナーでエスプレッソを飲み、外へ



やっぱりこれは、この円筒のインパクト勝負だよなあ。
この建物は町の図書館も兼ねていて、こちらもなかなか素敵な空間なのだった

図書館の窓から、全体が良く見える

まあしかし、直島ほど、何度も行きたくなる、というところではないなあ。すぐ近くの町の施設で昼飯、軽く山菜うどんで済ませ、バスで津山に出る。

旅先から携帯で

28日は早朝の便で伊丹へ。法隆寺に行ってから大阪のギャラリー巡り、なんばパークスなど。夜は淀屋橋で烏鹿さんなどと飲み。
29日はよっぱらい研究所の皆様と灘の酒蔵を巡り、昼から日本酒を飲み倒し、夜も御影で飲み。
今日は大阪から早朝の高速バスに乗り、奈義町現代美術館へ。津山を散策してから倉敷に出て、大原美術館を堪能。美味しいピザも堪能。夜は尾道泊りです。
明日はしまなみ海道を自転車で巡って今治、松山へ。明後日は松山観光、内子から宇和島を経由して中村へ。その次の日は高知から帰宅の予定でございます。
それでは、皆さんもよい連休を!

津山の町を

岡山行きの列車まで50分ほどあるので、少しく町を散策しよう。津山というと津山三十人殺ししか思い浮かばないのは相すまぬことであるが、ここは古くから栄えた城下町だ。ほいでもって、男はつらいよの最終話の撮影をしたところでもある。満男君が、後藤久美子の結婚式の邪魔をするところですね。あんまり時間が無いので、駆け足で。


古い家並みが残っていて、なかなか良い雰囲気。一軒の旧家、町屋を公開していたので入ってみたり。それで、だんじりが飾られていたので見てみたのだけれど

だんじりって自走するのですね

なんかシュールな感じだ。おっと、時間がありませぬ

本当に駆け足で、汗をかきながら駅まで戻り、津山線の人となる

倉敷・大原美術館

津山から1時間とすこし。岡山で乗り換えて、倉敷へ。岡山倉敷と言えば、長野松本と並んで、同一県内で対抗意識の強い市として有名なわけですがさて。以前にも一度倉敷には来ていたのだが、その時は大原美術館は訪れていなかったのだった。では今回は行ってみましょう。
雰囲気の良い美観地区、さすがに気合の入っている倉敷の美観地区の中心に大原美術館はある



まずは本館。洋画の素敵なところがずらり。最初の部屋ではシャルル・コッテが素晴らしいなあ。特に『聖ジャンの祭火』の空気感がとてもよい。2階に上がって、やはりルノアールの『泉による女』とゴーギャンの『かぐわしき大地』。いいものはいい。ほいでもって、ルオーの『道化師』と『呪われた王』も結構。現代の作品も随分あるのか。心憎い品揃え、さすが大原だなあ。
別館の方に行くと、まずはやはり萬鉄五郎。私大好きなんですよね、萬鉄五郎。ほいでもって、だんだん進んでいくと、小沢剛とか会田誠とか旬の作家のがずいぶんあって、それから西洋絵画、日本画いずれにしても、『どう見ても○○です本当に…』というような、つまり脂の乗った作品が多いのだった。
町田久美もあるし、つい先日、VOCA展で見たばかりの樋口佳絵もあるし、おお、ジュン・グエン=ハツシバの映像作品まで…。歴史もあるし進取の精神もある。こりゃ確かに、この美術館は街の誇りであろうなあ。
今日は開館時間が延長されて7時までやっているらしいので、ここで一旦外に出て、こちらは5時までしか開いていない、アイビースクエア

の中にある児島虎次郎の美術館の方へ先に。

この人の絵は、日本で描いた作品が一番いいですねえ。若い頃に海外で描いたのとか、晩年に海外を旅して描いたのは、あんまり。朝顔の少女の作品が、不思議な光に溢れていて、大変に素晴らしかった。
一旦外に出て、美味しいと評判のピザ屋で早めの夕飯。なかなか美味。それから今度は大原家別邸の有隣荘へ。

ここでは素敵な邸宅の中で、現代美術の作家の作品をちょくちょく展示しているのだった。今回は岡田修二の油彩。襖絵のような大胆な構図の、墨絵のような油彩と、日暮れ時が迫るお屋敷のなかで静かに向かい合っているとなかなかの至福。ちょっと監視の人が多すぎるけれど。ほいでもって、美術館に戻り、工芸館のほうへも。


おお、ここは駒場にある日本民藝館のようなところだ。そして、それよりもっと高密度だ。焼き物も良いのだけれど、圧巻は棟方志功の部屋で、その建物の雰囲気と版画が見事に融合していて、いくら眺めていても飽きないような空間になっているのだった。いやあ、素敵…。
それから再び本館に戻ったのだけれど、開館時間が延長されているためにほぼ人のいない空間でゆったりと絵を眺めることが出来、実に幸せな時間をさらに体験することができたのだった。やっぱり、さすがだわ、大原美術館

尾道の夜

だいぶん、優雅に時を過ごしてしまった。倉敷から三原行きの普通列車に乗り、尾道にたどり着いたのは8時過ぎ。本日のお宿『港屋』にはいるが、家族経営の、これぞ駅前ビジネスホテル、というようなところだった。嫌いじゃない、というか結構好きなのだが、女性にはあまりオススメしない。そろそろ荷物が重くなってきたので不要な洗濯物など家に送ろうと、箱を所望したら気前良くくれたし、コンビニに行くのに自転車を貸そうか、といってくれたり、大変フレンドリーな宿である。
晩飯は早めに食ったので、ビールの1杯でも、と外に出るがあまり店も開いていない。店の人とおぼしきおばちゃんが、一人でカウンターに座ってテレビを見ている店。うーん、迷ったが、まあいいや。
とりあえずビールを頼み、オススメにしたがってたこぶつと竹の子。なかなか美味いのだが、このおばちゃんが話し好きの人で、尾道の方言丸出しで放言、という感じ。以下、抑揚たっぷりな素敵な広島弁に脳内変換してみてください。
今日は倉敷から来たといえば『倉敷、あそこは大原しかないじゃろう。名物とかいうて里芋出されたが、そんなもん、いくらでも食えるわ』広島のフラワーフェスティバルに人が沢山来るという話で『人に酔うわぁ本当に。屋台みたいなもん、沢山出て、誰も買いやせんのに』テレビを見ながら『ロシアの油田かなんか、まあええようにコケにされて、日本で巻き上げた金を湯水のように使って平気なんじゃろう、大企業のマヌケのやりそうなことじゃあ』テレビで野球中継を見ながら…横浜の抑えにクルーンが出てきて『なんじゃあ、この肌の色の。どうせ途上国の人間じゃろう』広島ファンなのだろうが、黒田が出てくると『ああ、この黒田、だめじゃあ、こんなの。いかんわぁ』解説者が黒田を褒めると『なにをゆうとるんじゃあ、なんもわからんと、駄目じゃあ、あんなの』よほど黒田が嫌いらしい。そのほか、あらゆる物につっこみが入り、おばちゃんと二人、笑いを堪えるのに苦労しながら不思議な時を過ごす。
いい加減なところで切り上げて、宿に戻って就寝。明日の天気は雨らしい。不安だ。