日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

まずは浜松へ

5時起床。旅先でも毎日早起き。お年寄りが早起きなのは、体力が無くて寝ていられないからだと聞くが…。
テレビをつけたら、森繁がカクシャクとしてインタビューに応えていて、満州にいた当時の話をトウトウと語っていた。満人のお友達の話が面白かったが、どう考えても昔の映像だろうなあ…。
6時半頃、荷物をまとめて宿を出て、京都駅へ。パンと野菜ジュースを購入し、7時22分のひかりの人となる。飯を食い、新聞を読んでいるうちに浜松着。東海道は数限りなく往復してきたが、伊豆周辺を除く静岡県内でまともに下りるのははじめてかもしれない。というわけで、浜松と言えば

アクトタワー。静岡県内で一番高いビル。展望台に登ってみようと45階まで行ってみたが、営業時間は10時からで残念でした。エレベーターから一枚だけ。

駅のほうに戻ってみる。浜松はエスカレーターは左立ちなのだな、と観察したり、遠州鉄道のバスターミナルが見事に字義通りのロータリーなので惚れ惚れしたりしつつ

遠州鉄道新浜松の駅へ。遠州鉄道は、専用のFelicaが使える。凄い。そのわりに、普通に切符を購入いたら、昔ながらの鋏を入れてくれた。

30分少々、街の中をトロトロと走って西鹿島。路線バスに乗り換えて天竜川を渡り、旧天竜市街のバス停で下りる。

秋野不矩美術館

浜松まで来た目的は、秋野不矩美術館。この画家は知らなかったし、勿論、この美術館の存在も知らなかったのだが、
http://d.hatena.ne.jp/hiratsukam/20070312/1173658220
を見て、そして先日行った藤森照信の展覧会
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20070421/1177161726
を見て、これは一度は行かなくては、と思っていたのだった。美術館へ向かう坂道を登っていくと、山の塞のような、その凄い存在感、宮崎アニメに出てきそうな存在感。



藤森照信さんの、構造よりもとにかく壁だ!仕上げだ!的な志向が遺憾なく発揮された、とても素敵な建物。焼いた杉、荒々しい土壁、石の瓦、重厚な扉。
 
中に入っても、壁の仕上げもとても優しい。いろんな素材、工法が使われている。
 
この秋野不矩さんの作品も、インドに通い詰めて描いていたという絵は、どの絵からも土の香りがするような、とても優しい絵なのだった。靴を脱いで、床にぺたんと座り、白い壁、高い天井から降り注ぐ日の光に包まれて絵を見るも楽し。



テラスに出ても、そよそよと風が吹いていて、環境に溶け込むような建物の中にいると自分も溶け込むようなのだった。

この建物も名残惜しく、後ろ髪を曳かれる思いがしながら、坂道をゆっくり下ったのだった。

さて昼飯。美術館で、近所の飲食店の地図をくれたので、浜松名物のうなぎを食べましょう。『やっこ』という店は

通りに大きく開いた窓から、おじさんが炭火で焼くうなぎの香ばしい香りが漂う、昔ながらの素敵なうなぎやで、地元の人で賑わっていた。うな重はパリッと焼けていて、脂がよく乗っていて、大変香ばしい、おいしい鰻でございました。

掛川『資生堂アートハウス』、そして三島へ

天竜二俣の駅まで歩く。
途中、『餃子』の看板をみかけ、おお、浜松の餃子か、と食べる気まんまんになったが、学校帰りの中学生が寄り道するようなしもた屋風の店舗、と呼べるのかも微妙な店の中、小さな子どもが澱んでいたのでさすがに躊躇して素通り。
駅からは天竜浜名湖鉄道掛川行きに乗る。

のどかな単線をとっとこ進み、居眠りするうちに掛川駅。さて、JRに乗り換えて東へ向かうか…と思ったけれど、駅の案内板で『資生堂アートハウス』の文字をみつける。ああ、掛川にあるのかあ。駅から近いみたいだし、歩いて行ってみましょう。新幹線がごうごうと通りすぎる高架脇を西へ西へ。


芝生に囲まれたこの建物は、谷口吉生であるらしい。しかし、芝生に入ることが出来ないので、周囲をぐるりと見て廻ることはできなかった。
http://www.shiseido.co.jp/museum/
内部は入場無料で、工芸品やら彫刻やら。人間国宝の人のガラス器や焼き物やら、とても美しかった。舟越保武の彫刻が何点かあり、これもとても良いのだけれど、舟越保武って確か、舟越桂の父親だったよね?
同じ敷地内にある企業資料館は、金曜日だけの開館なので残念。

再び、重い荷物をかついで東へ東へ、掛川駅に戻る。
掛川駅から14時19分興津行きの普通列車に乗車。静岡で下車し、ここから三島までは新幹線でショートカット。静岡三島間は新幹線の特急券が安いのです(途中にある新富士駅は、新幹線開業後に出来た駅だから)。わずか18分で三島着。
ここから、坂茂の特殊製紙Pam
http://www.tokushu-paper.jp/pam/index.html
に行こうと思い立ったのだけれど、ここは予約必須な上、平日しかやっていないのですね…。じゃあ、変わりに、ヴァンジ彫刻庭園美術館に行きましょう。

ヴァンジ彫刻庭園美術館

三島駅から無料送迎バスで20分。だいぶん丘を登ったところに、『クレマチスの丘』という、少々くすぐったい名前のところに、美術館はありまする。あんまりやる気の無い受付で1200円なりの入場券を購入し、中へ。

駿河湾も見通せる斜面に面して建物が建ち、周囲の芝生に彫刻が。箱根の彫刻の森美術館みたいだけれど、もっと品が良い感じだ。イタリアのヴァンジさんは具象の人なんですね。

建物の中へ



敷地内にレストランのマンジャ・ペッシェがあるそうで、ああ、マンジャ・ペッシェといえば、千駄ヶ谷にある、昔々、GQ的価値観に生きる男女を観察した店ではありませんか。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060527/1148773815
そんなレストランもあるので、ここでは結婚式も出来るらしく、ウェディングドレスに身を包んだ花嫁さんとご一行様がうろうろしていた。

 

美術館を出て、少し坂道を登る。このあたりは高級別荘地らしい。すこし歩いて、吊橋のある公園へ。

二連に連なるつり橋。独り吊橋効果。何も起きません。
さきほどの美術館以外にも、この丘にはビュッフェの美術館などがあり。

そのミュージアムショップを覗くと、なぜか大量のミッフィーグッズが。必至で我慢したのだが、反則級の可愛さに我慢しきれなくなり、絵葉書、メモ帳などお買い上げしたのでありました。心細い財布がさらに軽く。
再び、無料送迎バスに乗って、三島へ。三島のコンビニでお金を下ろして一息つく。三島からは18時01分の熱海行きに乗って、まず熱海へ。
熱海から東京行きの普通列車に乗り換え、ロングシートに腰を下ろし、桂枝雀の『寝床』を聞いてうふふふ、と笑ううちに車窓は湯河原真鶴根府川小田原駅の少し手前、腰の曲がった老夫婦が、夕暮れが迫る中、山の中にとぼとぼと向かっていったが、大丈夫だったろうか。
平塚も過ぎ、あっとゆーまに横浜駅東横線に乗り換えて家路に着いたのだった。