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日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

ひたすら鈍行で

4時半起床。今回は1泊2日で越後妻有、十日町津南への旅。暫く足を運ばないと、突然行きたくなってしまう。特に夏の、容赦なく照りつける太陽と美しい里山の風景が、目を瞑れば瞼の裏に浮かぶようで、わたしゃ本当に、あのあたりが大好きなのだなあ、と思う。
5時20分ごろに自転車で家を出て、新川崎まで約20分。5時49分のエアポート成田は、成田空港から海外に向かうのだろう、大きな旅行用カバンを抱えた人たちが大勢乗り込んでいた。新橋で山手線に乗り換え、上野駅。6時27分の高崎線上野駅の発車番線であるけれど、1階のホームから出る普通列車はもう無くなってしまったのだろうか。行き止まりの、あの終着駅の風情漂うホームが大好きなのだけれど。
老夫妻と同席しつつ、高崎まで。高崎駅で朝飯に駅弁の『とりめし』を購入して乗った8時24分の水上行きは、青春18きっぷ旅行者、あるいは高校生の団体などでなかなかの混雑で、渋川を出る頃、いくらか余裕の出てきた車内でお弁当をかきこむように食べるうちにすぐに水上駅に着く。

さて。今回、光の館の宿泊予約はしてあるのだけれど、それ以外の行程を考えていない。ここまでの車内、プリントアウトしてきたバスの時刻表とにらめっこしながら考えていたのだけれど、やはり路線バスで巡るものじゃないなあ、大地の芸術祭は。去年のように自転車は借りられるのかしらん?と、水上の駅から十日町市役所の観光課、芸術祭の窓口に電話してみたら、去年のように公式にはしていないけれど、貸せないことも無い、というお話。これは有難い。とりあえず、明日貸して貰うことにして、今日は津南方面に行ってみようかな、ということにする。
9時50分の長岡行きに乗り、川柳川柳の大ガーコンを聴きながら(なんでそんなものを…)、国境のトンネルを通過。白くなったのは夜の底ではなく、車内外の温度差で窓がそうなったのだけれど、とにかく信号場ではなく駅である土樽を過ぎるとすぐに越後湯沢駅。ここで帰省客で混雑する10時34分のほくほく線に乗り、十日町駅には11時過ぎにたどり着く。

河岸段丘を眺めて

十日町駅駅前、銀行でお金を下ろし、津南方面行きの路線バスに乗る。バスではなく、飯山線で移動したいところだけれど、何しろ本数が少なすぎてまともに使えないので、路線バスなのであります。ミオンなかさとの『鳥たちの家』が車窓に見えたりしつつ、津南の町役場で下車。マウンテンパーク津南に向かいます。
信濃川によって形成された河岸段丘を眺められるのが売りなんですけれども

とりあえず作品鑑賞。こんなんもありますが、


やっぱりここは蔡國強の『ドラゴン現代美術館』か。

ほどよく草生した、登り窯スタイルの(実際に登り窯としても使う)美術館。この日は何もイベントはしていなかったけれど

合宿中の高校生?大学生?を横目に、坂道を歩いて下る。暑い。とても暑い。コスモスが咲いている

下る途中の集落、『かささぎの家』がある集落には案内図があって、すべての家の『屋号』が書かれていた。地方の集落に行くと、周囲の人の苗字がみんな同じだったりするので、屋号で区別するのですね
 
坂道を下りきったところ、小さな集落のなかにぽつんとある小さな駅が、飯山線の『越後田中』駅。

小さな駅舎の中で待っていても暑くて死にそうなので、反対方向の列車にとりあえず乗車。列車の行き違いをする、日本最高積雪の駅で有名な森宮野原まで出て、十日町に戻る。駅前の蕎麦屋で、天ざると生ビールで遅い昼飯。

光の館に泊まる

十日町から15時45分のバスに乗って、ナカゴグリーンパークに向かう。というか、こっち方面に向かうバスは、1日に4本しか無いのであります。乗り逃がしたらタクシーじゃ。元町というバス停で下りて、坂道をひたすらに歩いて登ること20分弱。光の館だ。

最初の大地の芸術祭、2000年の時に作られた、ジェームズ・タレルの作品。陰影礼賛にインスパイアされたこの建物は…、って、詳しくはwikipediaを見て欲しいのですが
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%83%AB
とにかく、泊まれるアートとして名を馳せているわけであります。直島のベネッセアートハウス、松之山の夢の家に続いて、光の館。とうとう泊まる機会を得たわけであります。まあ、今回は1人で、ですが…
係りの人に案内していただくと、今回の同泊の方もややあってやってくる。少人数だと、3組まで同泊になる仕組み。建物についての詳しい説明、各種設備の使い方説明などをしてもらい(夜は誰もいなくなるのだ)、前払いで精算をしてから、同泊の方とご挨拶。今回の同泊の方は、若いご夫婦でした。うわー、なんか、いろいろと、申し訳ないなあ、これは…(いや、何がって、ねえ…)と思ったのだけれど。兵庫の在住で、バイクで佐渡を廻ってきたというご夫妻、大変に気さくで良い雰囲気の方々で、滞在中、いろいろとお世話になったりしながら、楽しく過ごすことが出来た。本当にありがとうございます。
宿泊する部屋割りを決めたりしつつ、とりあえず、汗を流すために風呂を使って

さて、18時39分から、日没の『Light program』がはじまる。この建物の屋根は可動式になっており、動かすと、一番大きな部屋の天井がぽっかりと空いて、空をそのまま眺めることが出来るようになっている。

そして、天井に仕掛けられた光ファイバーと相俟って、幻想的な空間が出現するわけであり。日暮れ時と夜明け時には、この光ファイバーがプログラムされた通りに暗くなったり明るくなったりして、刻々変化する空の色との組み合わせで、実に感動的な光のショーが繰り広げられるわけです。これは宿泊者しか見ることのできない、まさに宿泊者の特権。
時間になり、可動式の天井を開けて、寝転がって空を眺める。







じっと、天井を見上げて、だんだんに暗くなっていく空と、『あれ?変わったのかな?』と思うほどに微妙に変化する光を眺めていると、なにやら不思議な気分になってくる。そして、真っ暗になると、一面の星空が。

60秒間シャッターを開放しても、この程度にしか写らないけれども。
さて、ご飯。私は2000円の仕出弁当をお願いしていて、時間になったら車で運んできてくれたのだけれど

同泊の方は自炊で、材料を買い込んできて、広い台所で調理していた。ここのキッチンはなかなか立派な洋風のキッチンで、調理器具や食器類はずいぶんキチンと揃っているし、炊飯器やオーブンレンジ、ついでに食器洗い器まであるという、至れりつくせりっぷり。枝豆や茄子などご相伴にあずかりつつ、天井の上に星空の見える部屋で一緒に食事。
旅の話などに興じていると、外からどーんと大きな音。花火が上がっている。回廊に出ると、一つずつ打ちあがる花火、方向と距離からすると、信濃川沿い、下条のあたりだろうか?思いのほか良く見えて、嬉しいプレゼント。十日町の市街の方面からは、盆踊りの、なんだろう、民謡だろうか、も風に乗って聞こえてくる。

魚沼や頚城の盆踊りは、夜遅く始まる盆踊りで、そこで流れる音楽は、外に向かう明るさではなく、何かを抱えたような、内に向かう、そんな音。陰に籠ってと言ったら失礼だろうか、静かで、静かだけれども脈々と力強い死者への思い、聴いていると物悲しくなるような、そんな音なのだった。
さて、そろそろ、天井は閉じましょう
 
外に出ると、空一面の天の川、そして星、星、星。暗闇の中に浮かび上がる、光の館の建物も美しい。

廊下の光も美しい

風呂もまた、青い光ファイバーに包まれた、幻想的な空間なのだった

明日の朝、日の出のLight programは時間が早いので、そろそろ寝ましょう