日毎に敵と懶惰に戦う

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天理、山の辺の道、そして奈良へ

客先で仕事が終わり、始発を待つ。空がほのかに白んできて、生駒山の稜線が見え始める。山頂に続く明かりが美しい。やがて、朝焼けが

始発に乗って、大和西大寺で乗り換えて天理へ。この時点でまだ6時ちょい過ぎ。コンビニで買った弁当で朝飯を済ませて、自転車を借りる。天理駅の西側、裏側にある『吉本レンタサイクル』というお店では、朝の7時から自転車を借りることができるのです(実際は、もうちょっと早く行っても貸してくれそう)。1日のレンタル料金、800円を払って、さあ出掛けましょう。
天理市は、言わずと知れた天理教の本部がある宗教都市。ちょっとこの航空写真をみて貰いたいんですが

大きな地図で見る
天理教の本部を中心にして、同じような形態の建物が本部を囲むように、ところどころに建てられていますね。最終的には、ぐるりと完全に周囲に建て込む計画になっている。これは『おやさとやかた』と言う。天理教新宗教の中でもかなり古い部類に入り、戦前戦後を通じて信仰を拡大してきた。天理は教祖の出身の地であり、また『ぢば』と呼ばれる天理教の聖地があるところ。航空写真の中心に『ぢば』があり、それを囲むように礼拝所などの本部施設が建設されている。
また、天理教は10年に一度の大祭を中心に、日本中、世界中から信者が集まることになっており、その際に宿泊する施設が必要になってくる。これを普通の旅館などでまかなうのではなく、『詰所』と呼ばれる地域ごとの宿泊施設で賄う。市内の各所にこの『詰所』があって、下の地図の緑の部分は全部『詰所』です

規模の拡大に伴い、この『詰所』はどんどん増えて、また中心施設が拡張するたびに外へ外へと移転を繰り返してきた。ほいで、無限拡張するのではなく、ある一定のアウトラインが引かれたのが、さきほど述べた『おやさとやかた』計画。本部を中心に、ぐるりと囲むような鉄筋コンクリートの4〜8階建の建物を建てて、天理教関係の教育施設や管理施設、詰所をどんどん入れていきましょう、ということになり。その建設が延々と進んでいるというわけです。

このあたりの知識については、ほとんど、五十嵐太郎による『新宗教と巨大建築』によります。この本は面白いので是非読まれたし

新編 新宗教と巨大建築 (ちくま学芸文庫)

新編 新宗教と巨大建築 (ちくま学芸文庫)

天理市にやってきてまず驚くのが、この独特の形態の『おやさとやかた』の建物




壁のような建物がどこからでも見えます。かなり異様。そして、駅から目抜き通りの商店街を抜けていくと教会本部に辿りつくようになっている


そして、極めて大きな、天理教本部





写真にあまり人が写ってないけれど、これは朝早い時間だったため。昼になると信者の人が大勢歩いている。おそらく、これだけ見ると、こんな右見ても左見ても教団関係の施設、教会の法被着ている人がぞろぞろ歩いている、なんか町歩いている人みんな天理教の関係者みたい、あんまり近づきたくないわあ、と思うかもしれない。ところがどっこい、天理教というのはえらく開放的でして、わたし信者でもなんでもないんだけれど、さきほどの本部の建物にも普通にあがれるし、信者の人がお祈りしている脇で静かにしていても何も言われないし。本部の建物は回廊になっているんですが、それを普通に歩いていても特に何にも言われません。
天理に行ったら是非、この教会本部には入って見てほしい。写真撮影はできないんですが、『ぢば』を囲んだ畳敷きの場所とか、ピカピカに磨かれた回廊とか、一見の価値はあるかと思います。信者の人の歌っている『みかぐらうた』も、なんとも言えない節廻しでね…。いいだわ、これが。帰りに『みかぐらうた』を収録したテープまで買ってしまった。駅から本部への目抜き通りにはお土産屋、仏具屋などが集中しており、天理教に関するものは何でも買えます。その値段が、びっくりするぐらい実利一辺倒というとか、リーズナブルなのにも驚いたですよ。
あ、そうだ、天理の紹介は、以前にココロ社さんもしてましたね、あわせてどぞー
宗教都市 天理の巨大建築群と、神のニワトリ群! - ココロ社
さてさて、じっくり観察したので、先へ進もう。今回は、天理にある『石上神宮』を起点に、『大神神社』まで、山の辺の道を行こう、というのがひとつ大きな目的。山の辺の道は、その途中に記紀万葉集に現れる地名が多数存在する古くからの道。古墳も多数存在し、神社は神社で式内社のバーゲンセールやー、という地域。そこを自転車で行こうというわけで、まずは『石上神宮』から。
石上神宮 - Wikipedia



特に多くを語りませんが、日本最古ともいわれるこの神社、いちいちなんもかんも神々しい感じで。池も鶏も神々しい。若冲の絵に出てきそうな鶏ですよ


ぼろい建物が、さりげなく国宝です、とか書いてあるからたまらんですよね…。自分の写真を見ていたら、その肝心の国宝の写真が無くて愕然としましたが。さて、この神社からは山の辺の道を行くんだけれど、『山の辺の道へは自転車で』みたいなキャッチフレーズを都合よく解釈した自分を少々恨みます…


こんな感じは、まだ自転車が漕げるからよいほうで。いやまあ、普通に舗装された農道みたいなところも多いんだけれど、それはあかんやろ、という石畳、果ては石段、ホントに人が通っているんですか、みたいなところも…


ですがとにかく、案内看板はしっかり整備されており、安心して先に進むことはできるわけで。近鉄の駅に置いてあるウォーキングガイドも必携なので持っていくよろし。もとは奈良盆地が湖だったころ、その縁にできた道であったのではないか、という話の通り、少し高台から盆地を見下ろすように歩くので、とても気持ちが良いですね

なんか山があるなー、と思うと、普通に天皇陵だったりします。奈良恐るべし


この右手のも古墳

墓地の中に古墳が!というよりも、古墳に墓地が!か

立派な民間もたくさん


さりげなくある神社が明神大だったりしますからね、奈良は怖いね。これは穴師坐兵主神社

しかし…暑い!山の辺の道、けっこうハードなうえに、炎天下が多くて、こんな暑い日に歩くべきところじゃないですよ、これは…。いい加減行きも絶え絶え、徹夜明けの身に応えてきたところで、大神神社の摂社、桧原神社に到着。山に向かって鳥居があるだけ。山が御神体なんですね


そこから、マウンテンバイクがほしいなー、というようなオフロードを進むと

はい、三輪明神、大神神社

大神神社 - Wikipedia
このへんになると、起源が古すぎて何が何だかよくわかんなくなりますね。ここも本来は三輪山御神体なので鳥居しかなかったんだけれど、後から(と言っても、江戸時代)拝殿を作ったそうな。『中心、元祖ほど偏差は大きい』という、以前に聞いた言葉を思い出す。この神社はまた、酒の神様でもあるので、奉納のお酒もたくさんあるし

拝殿には立派な杉玉が!

よい神社でございました。ほいでもって、三輪はもちろんそうめんの名産地でもあるので、昼ごはんはそうめんで。ほそーい麺が涼やか

とにかくのどが渇いてしょうがないので、どこに行っても麦茶だの水だの、がぶがぶ飲みながら。さてここからは、国道を天理まで戻りましょう。三輪明神の鳥居を振り返り


途中、国道沿いにあった、『山本』という有名なところでそうめんをお土産に購入。国道169号線を北上してくと、距離表示は『天理6km、奈良15km』と。うーん。このあと、天理で自転車を返して、奈良に行くつもりだったけれど。奈良でも移動の足に自転車はほしい。また奈良まで行って借りるのも面倒だな…。というわけで。たいした距離じゃないので、もう、この自転車で奈良まで行ってしまうことにしましょう。そうしましょう。
炎天下でかなり辛くなってきて、途中のコンビニでかき氷を食べ、牛乳を飲んで放心することしばし。奈良公園にむかうまえに、一か所寄り道。みなさん、『白雪ふきん』ご存じだろうか。とても質の良いふきんで、女性へのちょっとしたおみやげに大変喜ばれると思うんだけれど、あれの製造元は奈良なのです。
白雪ふきん|蚊帳生地から生まれた、雪のように真っ白で清らかな万能ふきん
そして、本社ギャラリー販売所が、この国道沿いのすぐわきにあるらしい。行かねば、と住宅地へ。住宅地へ…住宅地だなあ…え、ここなの?

一軒家です。一応、御用の方はチャイムを鳴らしてください、と書いてあるので、鳴らして中へ。

カチャカチャと鍵を開けてくれて、綺麗なお姉さんにいざなわれて、中へ…なるほど、確かに小さいながらも品揃え豊富なギャラリーがありました。ここで、遷都1300年記念限定のふきんや、たち吉とのコラボふきんなどを購入。とてもよい感じでした。面白いね。
またまた自転車を北に向けて、いよいよ奈良公園へ。奈良ホテル(いっぺん、泊まってみたいなあ…)の脇を通り過ぎ、奈良国立博物館。今日の奈良の主な目的は、ここの仏像展だったので
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2010toku/shihou/shihou_index.html
いやもうほんと、国宝重文のオンパレードで、東大寺法華堂の金剛力士立像も素晴らしかったけれど、それ以外も見どころばかりだった。木造薬師如来立像の堂々たる体躯が素晴らしい。仏像修理100年という展示のほうも、これが修理後の姿です、みたいな感じでぽいっと国宝が置かれていたりしまして、奈良とか京都とか、ポテンシャルがはんぱねえな、って感じですね…。仏像を大いに堪能。ここへは一度、正倉院展にも来てみたいよね…。
その後はお約束で、鹿を見に飛火野へ





奈良公園の鹿の傍若無人レベルはすごいよね、神の使いだからしょうがないね…。鹿を求めてぶーらぶら



夏ですねえ…

さて、そろそろ天理に戻りましょか。ならまちに入り込み


ぜいたく豆本舗でちょっとしたお土産購入(ここの豆は美味かった)。あ、なお、今回の旅も、京阪神エルマガジンのお世話になっています。エルマガめ、良さげな本ばかり作りおってー。天理についてもちゃんと解説してある良い本だったよ。はじめての旅行者向きじゃないけどね帰りは国道169号線ではなく、桜井線の線路に近い、裏路地を南下。この道に古い建物が随所に残っており、予想外に面白かった。ほんと、空襲受けてない地域はポテンシャル高くて困るよね…。天理の商店街でおみやげを購入し、自転車を返却。結局、10時間も借りていたことに。ありがとうございます。
天理の駅から近鉄に乗り、大和西大寺で乗り換えて鶴橋へ。石切を出た後の、大阪の眺めが美しかったなあ。鶴橋では、昨夜のネットカフェでちょっと忘れ物を受け取ってから、東上温泉と言う銭湯へ。水風呂もあり、汗を流して実にさっぱり。ああー、極楽じゃー。残しておいたシャツと下着に着替えて、さて。一旦、近鉄でなんばに出て、お土産を購入。みたらし子餅とか、蓬莱の豚まんとか。
御堂筋線で本町に向かい、目指すはもちろん、いつものお店

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まずは生ビール、2杯をたちまちのうちに飲みほして、おつまみは鱧の天ぷらとまぐろユッケ、このマグロ美味いなあ。前回涙をのんだ鮒ずし、きょうはちゃんとありますよ!ああ、この芳醇な香り!日本酒貰おう日本酒。純米大吟醸のこれ、生酒の口あけがある?嬉しいなあ。ああ、琵琶湖の珍味も忘れちゃならない、子鮎の甘露煮、海老豆、シジミ、うう、美味いなあ。あ、生酒、もう一杯貰えますか。うんうん。なんかこのへんでもう少しつまみを追加した気がするが思い出せない、お酒は濁り酒を追加で貰ったぞ。最後はお茶漬けでしめましょう、ああ、もうこんな時間、2時間以上いたかな、そろそろ夜行バスが出る、ありがとうありがとう、また来ますからね!
御堂筋線

梅田に降りるあたりまでは良かったんだけれど、桜橋口はどこだろう?って一瞬迷ったあたりからちょっと混乱してきて、大丈夫でしょうか足元が。ふらふらっと視界に入った兄ちゃんが見事なマーライオン状態、水ゲロを噴射したのをみたあたりで混乱に拍車がかかってきたけれど、なんとか無事に桜橋口に到着。お盆前の夜行バスターミナルはアジア的カオスで


私は東京まで4000円くらいの超特割青春320号、最後の一席を確保した最前列、4列シートで隣に腐女子っぽいお嬢さんが座っておりましたが、とにかく座って、あとはお休みなさいなのです…。充実した一日でありました。なお、この日の記録はGPSで取得しております。ママチャリで55kmも走ったらしい…
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