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日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

日本海側を行く出張日記

6時起床、7時前に家を出て、横浜で乗り換えて東海道線で東京へ。相変わらず、発車直前になるまで扉があかない上越新幹線を寒いホームで震えながら待ち、発車3分前にようやく車内へ。Maxときの自由席は人倫にもとる2階の6人掛けシートを嫌って5人掛けの1階から人が埋まり、ぐったりするうちに国境のトンネル、窓の外はまっ白になって越後湯沢に到着。長岡では雪はすっかりその存在感を弱めて、それでもこの週末は降ったのだと言う。客先で打ち合わせをし、どうにも某N社さんは無責任ですねえ、なんて話で。長岡は雪の合間に冷たい小雨が降る。
終了後、現地の営業の人に連れて行ってもらい、長岡の小嶋屋へ。小嶋屋と言えば十日町のへぎそばが真っ先に思い浮かぶが、この小嶋屋は系列なのだろうか。美味しかったが、十日町方面にくらべるとつるっとしていて上品な麺で、私はもっと荒々しいのが好きかなあ、と。
さて、と。これから、信濃大町に移動しないとならない。そしてどういうルートを取るかという話になるわけで、やはり素直に最短距離は北陸線糸魚川まで出て、そこから大糸線、となるわけで。しかしながら本数の少なさは如何ともしがたく、12時半過ぎの長岡駅から、最短で信濃大町に到着するのが18時45分。もう少し早い経路はないのか。越後川口から飯山線、越後湯沢まで出てほくほく線の特急で糸魚川、検討するまでもなく。一度高崎まで戻り、長野まで新幹線を乗り継ぎ、バスで信濃大町というコースは有力であったのだけれど、4月以降のバスの春ダイヤなら早く着けるのだけれどねえ、という。これはもう仕方ないので、とニコニコしながら言うわけですがなにしろ出張で大糸線の非電化区間を乗る機会なんてあるとは思わなかったので!とにかくしょうがないなあ、と嬉しくなりながら糸魚川から大糸線ルートですよ!あとでビックリ、な事態も待っていたわけですが。
さて、大糸線経由にしても、まず糸魚川まで向かうのが一苦労。特急北越の次の便は13時56分長岡発。仕事の電話など入りながら時を過ごし、特急北越の人となって、西へ向かう。近所の座席の女性が、30分以上車内で歯を磨いている。柏崎を過ぎると右手にはひたすらに日本海が拡がり

そう、だから、どこまでいっても、くらい、冬の日本海

やがて直江津、ここからJR西日本に入り、少し走るともう糸魚川にたどり着く。


糸魚川の駅の隣には北陸新幹線の高架路線がすぐに見えていた。開業はいつだっけ、3年ぐらいあとか

なにしろ、ここで次の列車、16時35分まで1時間23分も待たなければならない。何年振りだろうか、新宿始発の夜行鈍行で大糸線に入り、乗り継いで辿りついた高校生の時以来、15年くらいぶりだろうか、糸魚川に降りるのは。最新の水戸黄門シリーズでもヒスイの産地として登場した糸魚川は、またホッサマグナ…糸魚川静岡構造線の終端でもあり、塩の道の起点でもある。駅前にある観光センターを一通り眺めて後、駅前を回遊するような道をあるけば、蔵など見えて歴史がついている

その界隈を少し抜けるとすぐに国道8号線、日本海が見える。日本海に向かって展望台が見える

コートと手袋で傍観しても所詮は東京の生ぬるい冬を過ごすためだけの装備、冬の日本海を前にすれば無力に等しく、それはそれは冷たい雨が降り、水平にふく風の中を、意を決して展望台まで行ってみれば

海が見えて

海沿いをトラックが掛け抜ける国道の風景ぞ寂しき。ああ。駅に戻ろう

戻れば概ね16時ごろか、駅近いスーパーに足をのばし、甘エビで有名な糸魚川の街、地物の海産物の充実ぶりでも見てやろうという気持ちだったのだけれど、なんということか。CGCグループのスーパーに、地の魚など、パックに入れられて小さくなっている甘エビが1袋あるのみで、それ以外に地物の水産物などまったく見えないのだった。これは驚愕。びっくり。なんだかなあ。
そんななんだかなあの気持ちを抱えたまま、駅に戻り、時刻表を眺めると…あれれ、なんか変だ。16時35分発の南小谷行きがあるんじゃなかったっけ?16時41分発の平岩行きってどゆこと…?   ……   ああああ!駄目だ!自分は、3月12日改正の時刻を、駅の備え付け最新時刻表で見ていたのだ…。3月11日までは、16時台の大糸線は平岩までで、南小谷から信濃大町行きに乗り継ぐことなどできないのだよ…。なんたる不覚。自分で自分が腹立たしくなるが、なーに、この時間ならどうせ辿りついても今日は仕事にならず。なら、もういいや、と。次の17時台の列車なら20時前に信濃大町に辿りつける。大事なのは明日なのだし、まあ、いいじゃありませんか、こういう出張があっても。
この時点で予想外の1時間以上があき、うん、こうなったら、寿司を食べてしまおう。駅から歩いて近い『江戸前 重寿し』という店に入り、イマイチ活気は無いお店で生寿しのセットを。ううう、やっぱり、日本海側がなんでもかんでも魚が美味いなあ。ややあって途中から登場した若旦那に甘エビを追加したらば、今、市場から到着したばかりですと家族で皮むきして出してくれた甘エビ、それはそれは、プリっぷりで美味しゅうございました。
なんだかんだとするうちに時間は過ぎて、はい、南小谷行き、1両編成のディーゼルカー

列車に乗って発車前の窓の外を見ていれば、ふおおお!トワイライトエクスプレスたんが通過していったよお。ふおおお…。興奮冷めやらぬうちに列車は駅を出て、雪のほとんど残っていない糸井川から10分も経たぬうちに豪雪に包まれる大糸線は凄いと改めて感じるわけでありまして

小滝を出たあたりから列車は悲鳴を上げるようで、平岩、北小谷、そして南小谷。真っ暗になった駅に、空気を輸送していたかのような列車が停まっている

南小谷の駅には、静かな雪が舞っている。心が研ぎ澄まされるようで、心地よい


この駅、待合室にコタツがあるのよ…


気動車から電車に乗り継いでさらに南下する。車内のなんと静かなことか

信濃大町に到着したのは、ようやっと、20時前。これからまず宿に向かう

部屋に風呂トイレはないけれど、4200円でなかなか清潔なお部屋なり

荷物を置いてすぐに、ちょっと一杯だけ、街に出る。しんかんとした街の中を歩き、商店街の中にあるたきょうと言う店へ。カウンターに座ってまずは生ビール、そして、めばるの煮付け、かきの醤油焼きを頼んで、しばらくぼんやりと時を過ごす。一人で居酒屋に入って、あんまり物事も考えず、別のお客の会話を聞くともなく聞きながら、過ごす時間が好きなのです。
めばるの煮付けをつつきながら、ビールが空いたころ、ちょっとだけ日本酒にしようと、大国、白馬錦、黒部 の、地酒原酒3点セットを注文。460円なり。一緒に牡蠣が出てきた、これは美味そう!

牡蠣がボリューム満点であるよー。地酒の原酒もそれぞれの個性があって美味しく、暇そうになった店主と、出張のこと、横浜のこと、昔は大糸線まで乗り入れていた夜行列車のことなど、よしなしごとをしばらく話したのだった。
で、まあ、その。いや、端的に言えば良い店だけれど。工夫してるけど家庭料理の域をちょっと出ない味付けとか、正直すぎる値付けとか、カウンターに並んだ招き猫のファンシーな置物とか、スタイリッシュを気取ってみたがどこか間抜けな感じとか、100円ショップな品物で一所懸命ラッピングした感じとか、話好きすぎる店主とか、個人経営の居酒屋が醸し出すちょっと残念な感じの例題の宝庫、というようなお店ではあった。もちろん、端的にはいい店なのだし、ニュアンスは所詮ニュアンスなのだし、ちゃんとお客はついているのだし、私が何か言う筋合いでは、まったくもって無いのだった。無いのです。そんなことがつらつら頭に浮かびながら、人の歩かない街を宿へと戻り

広い風呂に入り、布団に入って、出張だか旅行だか、なんだかよくわからない1日には終わったのでした。そして、出張経費の浮いた分はほとんど飲み食いに消えるのでした