日毎に敵と懶惰に戦う

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横浜美術館『横山大観展 良き師、良き友』

横浜美術館で5日からはじまった、『横山大観展 良き師、良き友』の内覧会に行ってきた。

http://www.visitluxembourg.jp
なお、写真は特別に許可をいただいて撮影しています。横山大観の展覧会に行くと言ったら『富士山描く人?』『そうそう…』みたいな会話があったぐらいで、富士山描く人、良い意味でも悪い意味でも日本画の“巨匠”みたいなのが大観のイメージなんですよね、通常。自分もそれほど積極的に好きなイメージじゃないし。これまで日記で言及したのも、長い巻物の生々流転見たときや、あるいは

横山大観の『迷児』は、木炭で画かれており、童子の周りを孔子と釈迦とキリストと老子が取り囲んでいる、というワケワカラン絵。
東京国立近代美術館『揺らぐ近代』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

横山大観の作品が2つならんで『旭日』『宮城』て、なんやそら
サッカー女子W杯、三渓園、モトヤ、国立博物館、秋葉原、元町公園プール、そして酒房ぴー - 日毎に敵と懶惰に戦う

うーん…(笑)ただ、今回は最初の写真で若い日の(わりとイケメン!)(なんとなく山口晃っぽい!)お姿が掲示されているとおりで、比較的若いころ、巨匠の位置に収まってしまう前の大観に焦点を当てた展覧会なんですね。

東京藝大の前身、東京美術学校で、『良き師』岡倉天心に心酔して学んだ明治期から、『良き友』今村紫紅小杉放菴小川芋銭、冨田溪仙とともに歩んだ大正期にかけての作品が並びます。特に、16日までにか展示されない目玉

厳島神社所蔵の『屈原』は必見。絵から漂ってくる雰囲気が只者ではない。東京美術学校を追われた岡倉天心を仮託して描かれた作品。ただ、人物と、そのまとう暗雲は迫力あるんですが、後ろを飛んでいる鳥の目つきが漫画みたいだったりしてなんだか笑ってしまうんですが…。あと、これも16日までの展示です、茨城県近代美術館の『流燈』

横山大観は小さいころから画家を目指していたわけでなく、製図を仕事にしていた父親の元、建築を学ぼうかなあ…とか思いながら、東大で英語を学んでおり、美術学校に入った22の時から本格的に絵をはじめた人。だからその、なんというか、わりと絵が理屈っぽいというか、ネイティブに上手い絵を描く、という人じゃないのね…。まあ、顔なんか見てると特に、あっ…(察し)感があるんですが…

初期の作品だと、ひとつひとつ、新しいことに挑戦してみようという意思が感じられたり、色使い、朦朧体、いろんなところにハッとさせられるところがあって、見ごたえはあります


横浜らしい展示も。英語が堪能な大観が、茨城の五浦と、三溪園フェノロサを案内した時の見取り図。下が三溪園ですね。

原三溪が発注したという作品もありました。で、あれ?横山大観なのに富士山は無いの?と思った方のために、ちゃんと富士山も用意されますです

中盤後半に進んでいくと、描きこみの多い大作もいろいろ出てきまして…


でもあたいは、朦朧体を試行錯誤しているようなやつが、今回は発見がいろいろあって。日本画というジャンルで何をしていかにゃならんのか…みたいな焦燥感みたいなものも感じられて、面白かったな

後半の展示はむしろ、小川芋銭とか、今村紫紅が見ものだと思います。あ、そうそう、陶淵明、弦を張らない琴を演奏して音を想像して楽しんでいたらしいけど、要するにエア琴やん…時代を先取りすぎる…という作品があった

横山大観の、日本画をどうにかしなければ…みたいな思いと、結局それで政治力を持って君臨した結果、今日の日本画はこういうことになってます…みたいな、今日の日本画の現状がいかにしてこうなったのか、みたいなものが透け見えてくるのが今回の展覧会の裏テーマなんじゃないかなーと思ったり。見よこの人物相関図

だから、14日は終わっちゃいますが、こっちは文句なく良い竹内栖鳳展とか(ああ、京都だなあ、と。京都の狩野派にしても、京都学派にしても、正しく京都のあり方としての京都…)山種の速水御舟と合わせて見ると良いんじゃないか、と思うわけです。


今回、山口晃が6人の肖像を描いていて、これもお見逃しなく。あ、そうだ、横山大観と言えば、晩年は飯食わずに酒だけ飲んでいた(ただこれももともと好きだったわけじゃなくて、大酒呑みの岡倉天心に酒ぐらい飲めるようになれ!と言われて訓練した結果…というのがなかなか泣けるエピソードなんですが…師匠大好きだったんだね…)という話が好き。広島の酔心しか飲まなかったそうで。今回の売店にもお酒売ってました

というわけで、今回の横山大観展は11月24日までです。