日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

大久保の羊(への期待)と、高野文子や地理人やワイン展

土曜日、朝からブログ書いて、朝飯喰って掃除して洗濯して部屋掃除して、としていれば、もうお昼前。さてどこへ行こうかな、とりえあず目白の高野文子原画展に行こうかな…と湘南新宿ラインに乗ったあたりで見逃せない情報を入手し、私は大久保に向かったのだった

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大久保の駅のホームから見えるガチな看板、これだ。20年前に予備校に来ていたころや、学生時代にうろついた頃とはすっかり変わった大久保駅前の雑踏を踏み越え、こちらのお店

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狭い階段を上る…んん、なかなかハードルの高い雰囲気はあるが…

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扉を開けると、テーブルにダラッとした感じで店員さんが座って中国語で会話をしてて、店内にはクミンの香りと獣の香りが充満している。その瞬間に当たりを確信した。東北烤羊腿

tabelog.com

店内を見回し、昼過ぎで表は大いににぎわっているのに大変暇そうな雰囲気で、そしてガチなメニューが並んでいる超然とした店内、どう考えても美味そうではないですか

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テーブルの上には、クミンやトウガラシなど、香辛料がずらっと並んでいる

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お昼のサービスメニューである羊肉湯飯、羊のスープごはんつき600円

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まず、スープからしっかりと羊の獣臭がにおい立つ。たまらん。味も素晴らしい。臭みが無くて食べやすいー。とかじゃなくて、しっかり羊だ。そして辛い香辛料、これ、肉につけてよし、スープに途中から入れて味を変えるのもまたよし。ガツガツ食べてしまった。

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メニューからも本気度しか感じないし、特に日本語の説明のまったくないメニューに惹かれる…

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これはもう、夜も絶対大当たり間違いなし、次は夜に来て羊にまみれるのだ…と獣臭い息を吐き出しながら店を後にしたのだった。

大久保からまた電車にのり、目白。閑静な住宅街を歩いて、ブックギャラリーポポタムへ

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高野文子の原画展を見る。広くないお店の奥のギャラリー、たくさんの人でにぎわっていた。漫画の原画は線が優しいし、絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』のカラー原画がとにかくかわいい…。なんと、本を買うと送料別途でサイン本を送ってくれるらしい。

ギャラリーもはじめてでしたが、雰囲気良いところですね。17日までです。ここからほんのちょっと歩いて、自由学園明日館へ

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ちょうど、エプロンを探していたところで、カラフルでしっかりしたエプロンを発見…というか、自由学園ならあるよね、という素敵なエプロンを見つけて、購入。ついでにクッキーも売っていたのでお持たせ用に購入。自由学園のクッキーはめっちゃうまいのよ…この本の表紙にもなってるんだけどね

 つい最近、この本の最新刊が出ていまして

 エルマガのこの手の本は絶対に間違いが無いので、手みやげをお探しの方はぜひ買えと言いたい。わたしはエルマガ信者です。なぜ京阪神の会社なのに、東京の会社よりも、東京についての素晴らしい本がボンボン出せるのか

 ほくほくした気分になって、歩いて池袋。山手線に乗って日暮里へ。いかにも谷根千な雰囲気の通りを抜けて、こちらへ

HAGISOで、今和泉隆行「中村市をめぐる 万物収集報告展」を見る。というか、地理人さんですね。

地理人研究所

架空の都市、中村市の架空地図を巡り、チェーン店のロゴデザインとか駅名標の時代変遷とかグルメガイドとか時刻表とかを作り上げてくんだけど、いちいち都市計画やデザインの知見の積み上げで全力で遊んでるから、ニヤニヤしっぱなしで楽しい。

例えば時刻表だと、ラッシュの時間帯は平行ダイヤなんだな…とか、駅名標は鉄道会社によってカラーが出ていて、コーポレートアイデンティティー前面に押し出す会社とそうじゃない会社と…みたいな違いとか、いろいろ想像しちゃうのです。展示見て面白かったら、この本買いましょう

みんなの空想地図

みんなの空想地図

 

 谷中の街中を抜けて、全生庵の前を通り、SCAIの脇を通って、藝大の間を抜けて国立科学博物館へ。ワイン展を見る

葡萄の種類や栽培方法からはじまり…そうそう、ワインって基本的に接ぎ木なんだよな…

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醸造、瓶詰め、熟成…などなど

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世界と日本のワインの歴史、ワインの味わいや香り、香りのサンプルが興味深かったな

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そしてボトルデザインまで、科学的な知見がたっぷり詰まって楽しくワインが学べる展覧会だった。葡萄を踏むのを体験できるコーナーがあって、まあ本物じゃなくて複製なんだけど、靴のままで背徳的な気分に…

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あと、170年前のシャンパンの実物とか

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古いヴィンテージのボトルとか、歴代ムートンのボトルとか…2002年はカバコフなのね

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いろいろありました。 もちろん、物販はワインだらけだったのでありました…こちらの方の記事が詳しいのでどうぞ

すっかり暗くなって、常設展を見る時間が無いのでまた来ましょう。秋葉原までぶらぶら歩き、久しぶりにジャンク屋を目的なく逍遥し、本屋の寄ってうさくん先生の新刊をフラゲして

花のズボラ飯(3)(書籍扱いコミックス)

花のズボラ飯(3)(書籍扱いコミックス)

 

 ヨドバシカメラでお買い物して、京浜東北線に乗り。関内で降りてドンキで日用品を買い物し、重い荷物を抱えて歩いて帰宅。

部屋掃除や風呂掃除にしばらく精を出してから、おそい晩飯にしたのでした

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在華坊(@zaikabou)/2015年11月14日 - Twilog

横浜美術館『中島清之』展、横浜発おもしろい画家(とは、いったい)

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中島清之という画家をご存じでしょうか。実はわたしも良く知らなかった。活躍中の日本画家の中島千波のお父さんで、片岡球子の師匠、と言われれば、少なくとも私はほー、と思うけれど、これも自分が多少、人よりは絵を見たりするから知っているので、知らない方が多いですよね…。

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で、横浜美術館で開催されている、その展覧会のキャプションが『横浜発 おもしろい画家』である。おもしろい画家って。脱力系というかいい加減というか、ほかになんとかならなかったのか、という惹句であるけれど。展覧会を見て行くと、なるほど、おもしろいかどうかは見てのお楽しみとして、横浜との関わりの深さについては力説しておかねばならない画家だ、ということになるわけです。関東大震災の横浜スケッチ、原三渓との親交、大佛次郎の小説の挿絵、三渓園の襖絵…ほら、横浜って感じでしょう!

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中島清之(本名、清)は明治32年に京都で生まれて、大正4年、16歳の時に横浜に移り住んだ。子供のころから絵を描くのは好きだったけれど、本町通りのインターナショナル銀行に就職。これはニューヨークが本店の外銀ですね、横浜には明治期に、外国銀行が日本支店を続々出していたのです。翌年には横浜火災海上保険会社に移っている。後の同和火災保険海上保険、今のニッセイ同和ですね。

これ以降、会場内、作品の写真は、許可をいただいて撮影しています

 

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お勤めの傍ら、ときにはお勤めをさぼって写生に励んだり、画塾に通い、古画の模写に精を出していた清さん、そのころに描いた横浜の風景、あるいはその当時の絵日記も展示されており、これ、横浜住まいの人間としては、馬車道の話とかいろいろ出てきて楽しい

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そして関東大震災を迎えるわけですが、被災して何もなくなってしまった横浜のスケッチが残されていて、これもなかなか貴重なもので見逃せないのです

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一時期神戸に避難してまた横浜に戻った清さん、『胡瓜』で院展試作展初入選を果たすんですが、これはそのすぐ後に描かれた『蓮池』なんですが、非常に細密で的確な描写で、そうとう画力のある人なんだな、とわかる。この後はいろいろ変遷していくので、あとまでみてから初期の絵を見ると、ああ、ちゃんとうまいんだ…みたいになるわけですよ

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会社も辞めて画業に専念し、横浜発で頭角を現してきた画家ということで、原三渓を通じて下村観山、速水御舟安田靫彦前田青邨らとの知遇を得た清之さん、戦時中は一時、小布施に避難してまた戻りつつ、院展の重鎮への順調にステップアップしていく絵は、とにかくタッチが多彩で、なんでも上手い

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やはり横浜生まれの作家、大佛次郎とも、当時仕事場としていたホテルニューグランドではじめて出会い、その後親交ができ、家にも通い詰めて、大の猫好きで知られた次郎の猫をスケッチしたり、絵に描いたり。

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その縁で、大佛次郎の新聞連載小説の挿絵も描いています。知遇を得た画家の影響が感じられるような作品もいろいろあって、腕が確かな中でいろんな作風が楽しめます。これは昭和25年に描かれ、4度目の日本美術院賞を得た『方広会の夜』

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『明けの街』『暮るる里』という作品、とても好きでした

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中島清之さん、上手さの中に、なんかユーモラスなところとか、すごく洒脱なところとか、ちょっとヘンなところもあって、例えば戦前の銀座を描いた作品なんかとてもおしゃれで楽しいし

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小布施での体験を描いた風景、背景の山に描かれた森の様子が、のっぺりして海苔かな?みたいな表現がされていたりして、ちょっとこの人、ただ単に上手い人じゃないのかな…と思った頃に…

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53歳で日本美術院の同人になり、東京藝術大学でも教えるようになり、押しも押されもせぬ日本美術界の重鎮になったあたりから、作風がですね、なんかどうかしちゃってくるのですよ。突然、真っ赤になったり

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笹乃雪の豆腐描いたり

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不思議な抽象画にいってしまったり

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デザインっぽい葉っぱだったり

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いちいち顔が面白かったり

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ある日、テレビで歌っていたちあきなおみを見て興味を強く惹かれ、スケッチをはじめて、自分で歌謡番組の収録にまで足を運んで描いた、冒頭の画像『喝采』を院展に出品したり

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御年70の日本画壇の重鎮がちあきなおみを描く、ということで、当時はわりとスキャンダルっぽく週刊誌に書かれたりしたみたい。チラシにもこの絵が使われているんですが、日本画家の展覧会でちあきなおみとは思わないので、わたし遠目に見て天平美人か何か描いているのだろうか…と思ってしまったですよ。

こういう感じなので当時の評論家筋でも「つかみにい」という評判で、それがために画壇での地位がある一定以上あがらなかった、その辺のところが、藝大で教えていたころに縁があったという平山郁夫と対照的…いや、げふんげふん

以前、横浜美術館で開催されたホイッスラーの展覧会について紹介した時、ややこしい自意識の人と書きましたが

 

zaikabou.hatenablog.com

 中島清之は無意識の人…ってこたあないけど、絵や、画壇における自分とかに過剰な自意識を持たずにいろいろ書いてみよう、みたいな感じのひとだったんじゃないかなー、と思います。三男の中島千波も日本画家の重鎮ですが、この方もわりと『ザ・画壇』みたいなところからフリーな感じなのは、お父さんの影響なのかもね。千波さんを描いた絵も何点か展示されているし

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小布施疎開していたころに生まれた子供であることから、小布施に中島千波の美術館があり、今回の展覧会も『おぶせミュージアム・中島千波館』からの出展がかなりあります。

とはいえ、中島清之、横浜の日本画の重鎮にはかわりないので、横浜市から依頼されて海外との文化交流があったり、などしています。そして、若き日の原三渓との縁もあって…なのでしょうか、臨春閣の替え襖の障壁画を依頼されて描く。描き始めたのが78歳。琳派の研究なども生かした大作で、本展覧会のクライマックスになっています

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琳派に関してはやはり思い入れはあったようで、風神も描いたりしてますね

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臨春閣の障壁画は残念ならが途中で体調を崩し断念し、以降は静養生活に入るのですが、確固たる地位を得てなお日記に『絵がつまらなくなってしまった』『万策尽きた』などと書いているなど、一定した作風に安住せず、いろいろなものをどん欲に描こうとした作家であるのだなあ、というのが、最後まで見て取れる展覧会なのでした。

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特に横浜の地元の人には、いろんな興味で見られる展覧会ということで、お勧めしておきたいと思います。

横浜美術館は、コレクションもお楽しみ。特に今回、木村絵理子さんが久しぶりにキュレーションし、普段以上に気合が入ってる感じ

 

まず冒頭から、 アメリカの映画監督、ベンジャミン・ブロツキーが1917年から翌年にかけて撮影した日本紹介映画『ビューティフル・ジャパン』から、元町の神社、浅野造船、市内の小学校の運動会などの映像を抜粋して紹介していて、普段とは違う雰囲気。

『都市のイメージと美術』のコーナーもいい作品が並んでいますが

コレクション展については、誰でも撮影可能です

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やはり『神話とヌード』のコーナーが、構成も秀逸でした。腐る女の裸コーナーはインパクト満点で、ぜひ自分の目で見ていただきたい

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写真のコーナーでは、先日亡くなったばかりの中平卓馬(この人も横浜の人ですよね)らの、人の姿の見えない都市風景に、とても心揺らされる

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横浜美術館コレクション展 2015年度第3期 | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

そんなこんなで、企画展、コレクション展、合わせてお楽しみください。中島清之展は来年の1月11日までです

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