大阪のカプセルホテルで目覚めて4時30分。さて連休初日、もともと、みんぱくに行こうか、山崎のサントリーの行こうか、と考えていたのですね。しかし、あいちトリエンナーレは本日からということに昨日気が付き、急遽予定を変更。
そして、出張からの自己都合宿泊なので、どうせ帰りの交通費も請求しないし…と考えて、たまには鈍行でのんびり東に向かうのもいいだろう、と思い立ちまして。御堂筋線で梅田に出て、自動券売機で青春18きっぷを購入し
大阪駅5時55分の米原・長浜行きから旅はスタート。快適な転換式クロスシートでもう少し睡眠をとります、まだちょっとお酒も残っているしね
米原で乗り換えするときに朝飯を確保しようとしたけれど、8時前でまだ井筒屋も空いておらず、駅前にコンビニも無く。ホームのセブンイレブンが早めに店を開けていたので、サンドイッチなど購入。しかして、大垣行きの電車は青春18きっぷの時期で混雑していて座れませんので、ホームで食べてから乗車。
大垣からの新快速もなかなか混雑していたけれど、こちらはなんとか座れて、9時15分、名古屋駅到着。ここまでで3時間以上、かなり旅も一仕事終えた感じですが、ここからが本番であります。地下鉄で伏見に出て、白川公園へ
ポケモンGOを頑張るぞ!……ではなく、あいちトリエンナーレ2016、いちばん朝早く、9時30分から開く名古屋市美術館からスタートであります
さて今回、前売り券を買っていなかったので、当日券を買う必要がある。名古屋駅で購入した、市営地下鉄と市バスが1日乗り放題になる『ドニチエコきっぷ』600円で窓口で提示すると、なんとパスポートも200円引きになるという
これはお得。ほかにも提示すれば割引になる美術館博物館が多いそうなので、ドニチエコきっぷは美術館博物館めぐりに必携ですね
さてさて、では、あいちトリエンナーレです
今年で3回目になるあいちトリエンナーレ2016。名古屋においては、名古屋市美術館、愛知県美術館を含む愛知芸術文化センター、栄地区、長者町地区と大きく会場が4か所。そして前回と同様に岡崎、そしてさらに今回は、豊橋も会場になっている。美術展以外にも、パフォーマンスが随時おこなれている。
何度もは来られないと思うので、今回、自分は1日でほぼ網羅する工程としています。けれど、あとでも書くけれど、相当駆け足になるので、通常はもっとのんびり、泊りで巡ることをお勧めしておきます。
名古屋市美術館は、1階と2階、および地下1階の一部のスペースを広く取って、ゆったりと展示されている。アブドラ・アル・サーディのスイカ的風景には、かわいいに止まらない転倒があるし、小林武久の音空間も面白い。マリアナ・カスティーリョ・デパルの陶器の塔も異形感がある
そして地下の賴志盛の展示空間は、鑑賞という行為に新鮮な体験がある。なんだけれどねー。そのあとで常設のコレクション展を見ると、どうも印象が薄まるんですよね。というか、名古屋市美術館のコレクション展が充実しすぎなんですね。コレクション展も見ておいたほうがいいと思います。名古屋は現代美術家の宝庫だな、と改めて
伏見から栄に地下鉄にのり、続いては愛知芸術文化センターへ。8階と10階が愛知県美術館で、ある意味、ここがあいちトリエンナーレのメイン会場なんだけれど、それ以外の空間にも多数の作品が展開されている。
ウダム・チャン・グエンの、ベトナムのバイクの映像が楽しく、これは岡崎や豊橋でもまったく同じ映像が流されていた。展望回廊の田島秀彦のカラフルな空間や
屋上庭園のヴァルサン・クールマ・コッレリなど
こういうのは、とくにチケット買わなくても見ることができます。そして、愛知芸術文化センターの吹き抜け空間にも作品が展開されているけれど、この空間好きだな。パノラマ写真で
さて、では、メインの愛知県美術館へ
10階と8階の空間で非常に広く使い、ボリュームとクオリティのある作品が展示されている。愛知県立美術館、広いよねー
それぞれ気になる作品は出てくると思うので、詳述しませんが(というか、愛知県美術館についてはあいちトリエンナーレに来る人は必ず訪れるでしょうし)、気に行った作品だけ
大巻伸嗣のインスタレーション。最近、大巻さんはどこで何やっても水準高いよね。数年前まではシャボン玉のイメージくらいしか無かったのに(失礼!)、ここ数年で何があったのか。
竹川宣彰の、あやしい宇宙猿かに合戦みたいなの、なんか、ツボ
田附勝の写真がとても良い。漁師や猟師の厳しさ、生命と向き合う姿が伝わってくる
マーク・マンダースの彫刻群空間が怪しげで、なんか良かった
まあ、ほかにも気になる作品はいろいろありつつ、とにかく質量ともにこの会場が一番なのは間違いない。ないんだけれど、初回の圧倒的な華やかさや、前回の強いテーマ性に比べて、かなり印象は薄いかな、という気はした。
今回はテーマが虹のキャラバンサライ、芸術監督が港千尋ということで、まあ早い話、わりとなんでもあり感が漂ってまして、それはそれでいいのですけれど。ただ、現代美術が盛んとは言えない国からも、作家を積極的に選定している印象はあって、多様性を確保しようとしている姿勢は、よく見て取れました。
さて、一通りメイン会場は巡ったので、昼飯。味仙の台湾ラーメンを食べたことがなので行ってみよう、と思い、乗り放題のきっぷを活かして今池本店に行ったら、なんと今池本店は夜からの営業なのですね…。仕方ないので、今池の寿がきやでラーメン食べました
そしてあとから知ったのだけれど、台湾ラーメンは本店に行くよりも、藤が丘や、矢場町のほうが美味いらしい。学ぶことはたくさんあります……
昼飯を食べていたら名古屋周辺の美術女子の皆様からちょっとお声がかかり、愛知芸術文化センターに戻って、ウルフギャング・パック カフェでご挨拶と休憩。ちょっと早めに失礼して、名古屋のほかの会場を。
栄会場のメインになるのは、旧明治屋栄ビル。名古屋の人には思い入れの強いビルのようで。スクラップな感じで建物自体にも迫力あるし、
端聡の作品は納谷橋会場を思いだす空間で、むき出し感と力強さ。
3階のソン・サンヒと山城知佳子の映像インスタレーションは、いずれも力があり、韓国と沖縄から訴えかけてくるものがある。今回のトリエンナーレ、映像作品が比較的少なく、自分が駆け足で巡れたのも映像作品が少なめだから…というのもあるんだけれど、特にこの2作品はじっくり見たい内容だった。
とにかく、この会場はとても良い。栄会場としては、大巻伸嗣の最近の路線…暗闇にシャボン玉系の作品もあり、これも良かったのだけれど、鑑賞環境の入れ替え方や非常口表示などやや残念感があり、改善が望まれる。以前に見た作品に比べると、場所の力は活かさずに、コンセプトを抜き出してよりミニマムにした感じでした
さらに長者町会場へ。かつて栄えた繊維問屋街で、1回目、2回目に続いて、3回続けて会場になっている。
使われなくなったビルの中で作品が展開されているのだけれど
伝馬町ビルの古郷卓司らのプロジェクトは厄介なアジア情勢をうまく掬っていて興味深いし、学書ビルなど幾つか面白い展示あるが、全体、以前の濃密さや充実ぶりに程遠い感があり、どうしちゃったかなー、という感じ。
ただ、コメントいただいたのだけれど、こういう側面もあり
過去2回のトリエンナーレ開催によって街が活性化して、使える空きビルや空き店舗が少なくなってしまった結果でもありますね。 https://t.co/l7beSep2VE
— MoMCA館長(岐阜県現代陶芸美術館) (@WanderHytew) 2016年8月11日
そういう意味ではポジティブに捉えてもよいことなのかも。次回はもう、長者町は会場じゃなくなるかもしれませんね。逆に、10年以上活性化活動をやっているところは、要するに活性化できていないのではないか、と。あまつさえ、真に活性化してきた店を追い出して、『活性化』の無限連鎖を敢えてやり続けようとするところもありますしね…どことは言わないけどね。
さて、なんだかんだでもう16時。そろそろ次に会場に向かいましょう。次の岡崎会場、JRで向かうものだとばかり思っていたけれど、最寄駅は名鉄の東岡崎。JR岡崎駅からは電車での連絡があまり良くなく、バスで15分かかる場所らしい。なので、青春18きっぷはあるものの、名駅から素直に名鉄で向かいます。
特急に乗って30分ほどで東岡崎へ。特急は指定席は有料だけど、指定席じゃなければ特別料金はいりません。岡崎、オカザえもんの街
岡崎会場は徒歩15分圏内くらいに主に4会場があり、きちんと廻ろうとすると結構時間がかかる。そして前回は私、岡崎まで来なかったのだけれど、今回は来て正解だった。というか、名古屋の印象がちょっと薄い分、岡崎と豊橋が濃密な印象を受けた。
まず、いきなり、駅ビルから展示はスタートするわけですが、この名鉄東岡崎駅ビルがすごい
岡ビル百貨店の雰囲気がたまらん!模範的なレトロ感、王道横綱的な。よくこのまま残してるな
二藤建人の展開するインスタレーションもなかなか良くて存在感があったんだけれど、すまぬ、建物のほうに注意がいってしまった
ここを見られただけでも、岡崎に来た甲斐があったと思った。しかし、岡崎の楽しさは、ここはまだ、はじまりに過ぎなかったのです。
駅からしばらく歩くと、国道1号線沿いに立っている、相当時代のついた不思議な建物が。これが岡崎表屋
戦後まもなく建てられたモダニズム建築…なのだけれど
ここもまた、建物の印象が強烈。2階は住居だったのだろうか、ところどころ朽ち掛けたような建物の中で展開されるのは、シュレヤス・カルレのインスタレーション
もとからそこのあったものなのか、作品なのか、曖昧に漂っている時間が不安なような、心地よくなっていくような、建物をよく生かし切った作品になっていた
ここから国道を渡り、次の会場…に行く前に、ちょっと寄り道。オカザえもんがTwitterでオススメしていた、シビコ岡崎近く、和泉屋のくず餅バーも食べました。
ひんやりもっちりで、こりゃうまい。店内はすごく雰囲気の良い甘味屋という感じで、アットホームで、時間があったら中も寄りたかったな。オカザえもんどら焼きも買いましたです。
さて、次はシビコ岡崎。前回、岡崎のメイン会場となった、1977年に建てられたショッピングセンター。オカザえもんの本拠地らしいぞ
前回のここを知る人は、どうも、前回のほうが印象が良かったみたいだけれど、それでも、ちょっとあざとい確信犯的なレトロビルっぷりで面白いぞ
エレベータで6階にあがると、どーん、と広大なスペースがむき出しになっており、また印象が一段踏み込む感じ。
しっかり空間が作りこまれて、クオリティの高い魅力的な作品が並んでいた。そして、ここの会場にあった窓口で、あいちトリエンナーレのガイドブックも購入。立派なマップと鑑賞の手引きは無料で貰えるので買うつもりがなかったんだけれど、オカザえもんのカバーを先着であげます、と書かれていて、つい
そしてもう少し歩いて石原邸
160年前の庄屋の屋敷の中で繰り広げられるインスタレーション、いかにもそれっぽいちゃそれっぽいけど
空間を活かしていて、しっかり魅力的でした。モザイク越しで見る庭の景色が楽しい
そんなわけで、すっかり堪能。岡崎会場、オカザえもんをはじめとして観光方面含めてしっかりやっているなという雰囲気あり、どこの会場も楽しいし、これは岡崎は外せんな、と思ったのです。
かなり時間も余裕が無くなってきたので、これは豊橋は諦めようかな…と駅に向かったら、18時5分の特急がちょうどきて
少しだけなら時間が取れるぞと、豊橋会場も駆け足で巡ることに。まずは、駅から5分ほどの、開発ビルへ
10階建ての建物には各階ごとに作品が展示されており、上までエレベーターで上ってから、各階の作品を見ながら降りてくる仕掛けになっている。
どのフロアも展示場所が広く取られており、見ごたえがある。展示を見ながらの導線の設計がよく作りこまれていて楽しい
特に良いのが、まず10階の石田尚志、劇場や楽屋など全体活かして作品が全面展開しており、ファンには堪らない。昨年と今年の作品ばかり、10ほど展示している。
そして5階の久門剛史、これがとても良い。日産アートアワードの展示をさらに発展させて、あの越後妻有の「最後の学校」を少し思い出させるような、雰囲気のある見事なインスタレーションになっていた
これ、見に行くなら夕方がオススメです。この2人はいずれも、日産アートアワードに出てましたね
さらに駆け足で。はざまビルというところは時間が無くてパス。水上ビルは、農業用水路だった場所の上に建てられたビルが連なる場所。
高度経済成長期に闇市の移転先として建てられた、と聞くと、野毛の都橋商店街を思いだしますね。ラウラ・リマの、鳥を100羽放し飼いにしてあるインスタレーションが興味を惹いたけど、時間切れで見られず…
しかし、昔からあるお店を眺めながら、ビルの脇を散歩するのも楽しい場所でありました
そして最後にもう一つ、穂の国とよはし芸術劇場PLAT。
大巻伸嗣の作品がきれい。これ、中心の光が上下に動いているので、周囲に光がキラキラと降り注いでいた。というところで、時間切れ。展示は19時まで。もう日も暮れる。
豊橋駅から19時9分の浜松行きに乗り、これが今日中に横浜に辿りつくための最終の乗り継ぎになる。豊橋19:09-19:45浜松19:54-21:07静岡21:13-22:29熱海22:35-23:49横浜、というわけで、浜松では静岡行きに乗り換え
長い長い静岡県を通り抜け、熱海で乗り換えるとようやく電車が空いてきたので、ロングシートではあったけれど、豊橋で買って持て余したままだった弁当を食べる。味噌カツ弁当390円
横浜で乗り換え、帰宅したのは日が変わったころ。充実した一日だったけれど、さすがに疲れた…。
今回のあいちトリエンナーレ、名古屋だけだと過去2回に比べて物足りなさを感じるかもしれませんが、岡崎、豊橋がかなり充実した内容で、時間の許す限り、どちらも廻るべきだと思ったのでした。
参考までに、過去2回の訪問記も載せておきます
毎回、駆け足だな!