自転車帯広の旅 帯広美術館と、愛国から幸福へ
ユースホステルで6時に目が覚める。今日も天気が良さそう。朝飯までの間、少し周囲を散歩してみる
ここ音更町は帯広の北にある町で、帯広にも近い。ですが、大きな町が近くにあるのかな、というような風情の場所なのでした
小一時間周囲をぶらぶらして、宿に戻ると、今日のマラソンに参加するご夫婦がもう出かける支度の最中だった
さて、あさごはん。これは、あさごはんも立派だ!
さらに食後には、同宿の人からのおすそ分けで美味しいバナナケーキが廻ってきた。今回、北海道に来ているのに、バナナのアイスクリーム、バナナのチーズケーキ、さらにバナナのパウンドケーキと、バナナづいている
これも美味しくいただきました。お宿自体も、人も、とても雰囲気の良いところだった。今回は2泊ともあたりだったなー
8時半過ぎに出発。広大な十勝川を渡り
帯広駅方面に向かう。そして、帯広と言えば…の、六花亭へ
以前、帯広に来た際には、駅の近くの本店に行ったのですが
今回は、本店ではなく、西三条店というところ。六花亭は北海道中に店舗があるけれど、特に本店と西三条店は大きな店舗で、この2箇所と帯広空港店でしか販売していない『サクサクパイ』というのがありますよ。さくさくしていて美味しい!店内でサービスのコーヒーやお茶もいただけます
函館の駅に向かうと、通行止めにして何かしている、お祭りかな、と思ったら、フードバレーとかちマラソンのゴール地点だった。同宿のご夫婦が出ると言っていたのはこれですね
これを横目に帯広駅へ。まだトマム〜新得の間は、代行バスなのですね。
札幌との動線は年内の復旧を目指すとのことですが、富良野方面については、いまだ復旧の目処たたず。大変だね…。
紅葉の帯広駅から反対側に出て
公園に向かう広い通りを南下。アート好き的には美術館も行かなきゃね!ということで行った北海道立帯広美術館ですが
ここで開催中の『国立美術館巡回展 煌めく名作たち』がとても充実した内容だった。京都国立近代美術館(一部は東京国立近代美術館)のコレクションによる巡回展で、日本画中心に洋画陶芸も名作ズラリ、京都でも一度にこんなに見られないというような、相当レベルの高い展覧会。
美術館のミュージアムショップの人が、どうでしたか!すごいでしょ!と相当嬉しそうに語っていたので、待望の、なのであろうな。
竹内栖鳳や上村松園、都路華香、橋本関雪、小野竹喬、福田平八郎など名作がどんどん並び、稲垣仲静、甲斐庄楠音、木村斯光を並べた脇に村上華岳の夜桜之図があるところは見世物小屋かと思い、日本画がこれだけありながら、あの人やあの人の作品は皆無で、東京からの出展は無し。京都の矜持が感じられる。
全84点の作品中、東京から出てるのは洋画として、黒田清輝「落葉」岸田劉生「道路と土手と堀」安井曽太郎「金蓉」長谷川利行「カフェ・バウリスタ」北脇昇「空の訣別」小磯良平「練習場の踊り子」松本竣介「建物」の7点、それから工芸が1点のみ。どうしても必要なピースだけ東京から借りた、東京も全力で良いのを貸したという感じがする。
土田麦僊「朝顔」とか徳岡神泉「枯葉」とかも良かったなあ。普段、東京国立近代美術館のコレクションのすばらしさばかり愛でてしまいますが、京都国立近代美術館も日本画は素晴らしいコレクション、洋画も須田国太郎とか、工芸品も含め、良い物がたくさんあるなぁ、と改めて思ったのでした。
帯広美術館のコレクション展も。小規模ながら、森や山をテーマにしたミニ企画展でなかなか面白い。一原有徳の硬質な版画が良かった。
美術館のある公園も、紅葉が盛りでした。
さて、ここからもさらに南下。少し寄り道しながら空港に向かいましょう。帯広空港、帯広駅から26kmって結構遠いよね、土地が無い場所でもないだろうけれど
しばらく自転車で走ると、帯広畜産大学。日本畜産業界の頂点がここか!それにしても周囲もただっぴろいし、ラーゲリみたいな寮?があったり、おとなりに広い畑が広がっていたり
なんだか大学とは思えないところ。もう少し南下して国道に合流し、川を渡ってもうちょっと進むと、ここが、あの有名な『愛国駅』です。
帯広から広尾に向かう広尾線は赤字路線であったけれど、その途中にある『愛国』『幸福』は駅名から有名になって観光名所化し、『愛の国から幸福へ』の切符はものすごい枚数が売れたそうな
広尾線は昭和62年に廃止になったけれど、この両駅はその後も駅舎が残され、観光名所になっている。
もともとのこの駅名の由来は、ここに入植した開拓団の名前に『愛国』とあったことから付いたもので、文字通りの『愛国』だから、愛の国、ではないのですけれどもね。駅舎は資料館になっていて、広尾線の営業当時の写真、資料などが展示されておりまして、あと、願掛け的な切符が沢山貼られております
愛国駅を出て、さらに広尾国道を南下。そろそろ旅も終わりに近づいてくる。このたびの間中、お天気が良くてよかったなあ
それにしても北海道、道の路肩も広いですね。
この路肩の、白線からちょっと歩道よりを走っていたら、ダンプのおっちゃんから『チャリはもっと端っこ走らねえと危ねえよ!』と注意されまして。本来自転車が路肩を走るべきものかどうかは…まあ、言うのは止しましょう。
愛国駅から10kmちょっと走って、幸福駅に到着。
こちらのほうが売店もあったり、観光地としてはより整備されている感じだけれど、駅そのものとしては愛国駅が広尾線全通当時からあるのに対し、幸福駅は昭和33年の開業なんですね。以下に、駅名の由来や、『愛国から幸福』ブームなどについて詳しい
駅の裏にはじゃがいも畑が拡がっている
駅舎の中にはこれまた大量の切符が…
ホームにはキハ22が停車していて、片方は昔のままの座席ですが
もう片方は、昔の写真や、感想ノートなどがおかれるスペースになっていた
愛国駅に比べてこちらは観光客も多く、女子旅3人連れ、このノートを見ながら
「『彼女が欲しいわけではないけど、恋がしたい』だって」
「ははははははは」
「………」「………」
「幸福か、いいねー…」
「誰かいい人いないかなー…なんて」
などとお話しておりました。
お土産売り場には、人生で買うのが恥ずかしい上位に食い込んでくるようなものがたくさんならんでおりました
ここから空港までは5kmあまり。それまで、本日は25km/hくらいでゆるゆる走っていたけれど、最後だ、と思うと40km/hくらいすいすい出まして、今日はまだ元気が有り余っているな!と思うまもなく、とかち帯広空港に到着。12時15分。本日の走行距離は40kmあまりと、少なめ
さっそく、おととい、自転車を組み立てたのと同じ場所で自転車をバラす
これ、広い場所がある地方の空港だからいいけど、都会のターミナル駅とかだと、場所を探すのも大変そうだね。自転車をバラすのは簡単だけれど袋に詰める時に、やはり若干試行錯誤微調整があり、収めるまで20分弱かかった。
もっとさっさと出来る様になれないとなあ。あとは、自転車とバックパックを預けて。羽田では書かされなかった、破損時の免責についての署名が、こちらでは必要でした。ハロウィンイベントでカナオシがお菓子を配りながらウロウロする中、お土産をいろいろ買い込み、ひるごはん。百合根のかき揚げ丼は、百合根がほくほくで、とても美味しかったです
お土産の購入や食事の待ち時間に結構かかり、食べ終わったらもう13時25分。出発時間が13時45分なので検査場に急ぎ、中に入るともう優先登場がはじまっていて、慌しく搭乗
さらば帯広。楽しかった、また来ます
しばらく眠って眼を覚ますと、猪苗代湖が見えていた
さて、羽田に近づいて、アプリで自分の乗っている便を確認していると、なんか、すぐ隣にシンガポールエアラインの別の便があるけど…
と、窓の外、左側を見ると、すぐそこにいる!
どっちかが前に出るのかな、と思っていたら、どこまでも並行して飛んで行き、とうとう、同時に着陸
これよく知らなかったんですが、羽田空港のA滑走路とC滑走路は、同時に離着陸が出来る滑走路なのですね。2010年からこの運用がはじまってるそうな
とにかく、無事に着陸しました
帯広空港では自転車を手渡ししてもらったけれど、羽田空港では普通にレーンを廻ってきて、受け取り。荷物が少なければここから自走でも良いけれど、今回はお土産とかありますからね。そのまま担いで京急のエアポート急行に乗って、日ノ出町駅まで
なんと楽ちんなことだろう…。羽田から電車一本で自宅の最寄駅まで帰ってこれる。これまで、輪行はかなりハードルが高いイメージがあったけれど、なんと簡単ではないですか。
もちろん、今回、比較的ゆるい梱包で安心して預けられたのは、信頼できる国内線キャリアがあればこそだし、あくまでも荷物に余裕があるので預かってもらえるのだ、ということは忘れないでおきたいですが。しかしとにかく、これ癖になりそう。またすぐにどこかに行きたくなりました。
着陸が少し遅れたこともあり、帰宅したのは17時前。自転車を自宅で組み立てて、どこもダメージが無いことを確認し、洗濯と荷物の片付けに精を出して、夜は流浪ぴーでちょっと飲んで、日曜日は終わっていくのでした。