日毎に敵と懶惰に戦う

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ポンピドゥー・センター展、被災地から、演劇博物館『あゝ新宿』、川内倫子、みのかん

土曜日。先週の週末は都内に出れていないので、今週はいろいろ巡りましょう。まずは上野へ。上野東京ラインが出来て、上野が近くなりました。玄関出てから上野駅まで50分、そして東京都美術館

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ならんでない!

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こんでない!

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はい、若冲展ももう終わりましたので…。本日は、ポンピドゥー・センター傑作展を見ます。

ポンピドゥーセンターと言えば、パリにある、リサのおうち…

リサのおうち

リサのおうち

 

というのはまあともかく、フランスのポンピドゥー大統領の名前を冠した総合ン文化施設レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャース。ド・ゴールは空港に、ポンピドゥーは芸術センターに。その豊富な近現代美術コレクションの傑作展であります。

今回の展覧会、フォービズム華やかな1906年から、ポンピドゥーセンターが完成した1977年まで、1年1作品、1作家1作品で並べるという、ちょっと見方次第ではキュレーション放棄したみたいな展覧会である。最初のほうの文章でも「様々なものを敢えて均一に並べて」「20世紀美術の新たなパノラマが開けるかもしれません」みたいな、非常にアバウトな事を言っていて、不安になる。しかし、これが存外良かったのです。

今回は絵画以外もなんでもありなので、マン・レイの写真、コルビュジエの絵画、フレシネの建築現場映像が並んでいて、さらに椅子が2つ続いたり、全体として不思議な並べ方になっている。

並べ方のフォーマットは統一されていて、作家の写真、作家の言葉、解説、そして作品、という構成がずっと続く。しかし、1906-1934のLBF、1935-1959の1F、1960-1977の2F、それぞれ展示会場の雰囲気をガラッと変えて、時代の空気がよく出るよ うに展示されており、アール・ブリュットへの目配せもよく効いていて、フランス、パリの価値観がよく表出されているような配置だな、と思った。

展示されている作品も良品揃いだし、1人1作に限定したことで馴染みの無い作家に触れる機会にもなりそうだし、次第に階を上がるにつれての開放感もあるの が良い。1945年の演出も面白い。

所謂、「なんとか美術館展」みたいな展覧会って沢山ありますが、文脈を無理矢理つけても、結局は借りられた作品に、強引に意味を付与して組み替えただけだろ…みたいなこと、多いのです。それだっらいっそのこと、今回みたいにひたすら時代順に並べてみるのもありかなー、潔い、と思ったのでした。

1975年から1977年は、ポンピドゥー・センターそのものについての言及、そして模型や建築映像もあっておしまい。この展覧会、1周だけするのではなく、1周目を踏まえて、もう1周、すると面白いと思う。個々の作品への注目も良いのだけれど、ぐるぐる回って流れを体感すると、より良いと思うのでした。とにかく今のうちなら大変空いておりますので、会期の早いうちに行った方がよいかと思います。

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おみやげコーナーは、リサガスグッズがもっとあるかなー、と思ったら無かった。ざんねん。

都美術館を出て、東京藝術大学美術館へ

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『いま、被災地から』を見る。

http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/tohoku/tohoku_ja.htm

震災と津波で大きな被害を受けた美術館博物館、あるいは原発警戒区域からの作品レスキュー(搬出と保全、修復)の様子を知ることが できる展覧会。実際にその作品を見ていると、関係者の皆さんの努力に頭がさがり、未だ道半ばなことを実感。スタッフが亡くなった館もある。

岩手、宮城、福島の美術館から、各県出身作家の作品も多数出展されており、舟越保武、萬鉄五郎、松本竣介関根正二をはじめ、なんだか、地の底からこちらをじっと見据えているような、力強さのある作品ばかりでした。立派なパンフレットもいただけます。

またまた歩いて、東京国立博物館

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ここでは、伊東マンショの肖像と

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酒井抱一の花鳥図だけ見ましたb。四季花鳥図巻かわいいよ…

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上野公園をあとに、坂道を下り。上野駅周辺は人の多さのわりに、アメ横まで出ないと飲食店が少ないので、どこも大変混雑している。銀座線にのり、日本橋乗り換えで早稲田まで。お店はきれいになったけれど、相変わらずな味のキッチンオトボケで昼食

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そして、早稲田大学演劇博物館へ。大学来るの久しぶり

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enpaku 早稲田大学演劇博物館 | 「あゝ新宿―スペクタクルとしての都市」 展

『あゝ新宿』展は、展示室の造りが凝っててアングラな雰囲気ぷんぷんだし、大学紛争、風月堂、アートシアター、状況劇場天井桟敷第三舞台にフジテレビ、細江英公、高野中村屋紀伊国屋…果ては磯崎新の都庁プランまで、1960年代の混沌から、西新宿の再開発まで、お腹いっぱいの内容。こんなに充実しているのは思わなかった。木島則夫ハプニングショーの話題とか、このころのテレビの雰囲気をよくあらわしているよなー、と

木島則夫ハプニングショー - Wikipedia

大島渚の『新宿泥棒日記』は紀伊国屋書店で万引きするシーンからはじまり、田辺茂一田辺茂一として出演していて、この映画はずっと流れておりました。花園神社の境内の劇場的な雰囲気の中で。これは面白いから見るべし。

ついでに、中村吉右衛門展もやってた。展示室1つだけですが、卒業式でご挨拶してる映像とか、衣装とか、ファンにはたまらんものもいろいろありましたよ。

土曜日だけど人が多いね。皆さん講義があるのか、サークルか、別のイベントか…

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また早稲田駅に戻り、さてどうしよう…としばし逡巡の末、大手町で乗り換えて東京駅から京浜東北線、浜松町へ。竹芝桟橋近くのこのビルに行く

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この倉庫の6階にある『gallery916』にはじめてやってきた

川内倫子 「The Rain of Blessing」を見る。

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川内倫子の写真は、なぜ、あんなに静かなのに心がザワザワするのだろう。写美「照度 あめつち 影を見る」以来のざわめき。

ひとつひとつが湛える雰囲気も素晴らしいのだけれど、一見、関係の無いような写真が組み合わされて、見ている人の心を抉ってくるような表現が素晴らしい。

今回の展示では熊本で撮影したシリーズもあり、地元の人から募った撮影スポット推薦作文、その文章を断片にして再構成したものと、写真の組み合わせも、とても良かったのです。 「照度 あめつち 影を見る」はちょうど4年前でしたね

あの展覧会が良かった人は、特に、見に行くべきと思います。そしてこのギャラリーだ

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こんなに広くてよい空間があるとは、知らなかった。ギャラリーなんだけど有料の展覧会形式でやっていて、そりゃ、これならそうすべき、という空間。無料サービスのコーヒーを飲みながら見る、外の景色もなかなか良いのでした

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ギャラリーを出て、浜松町駅まで歩き、京浜東北線で横浜へ。人波を掻き分けて歩き、西スポーツセンターのプールで1km泳ぐ。あがって、さてどこに行こう…とまた横浜駅まで歩き…。そうだ、昨日ははじめての市民酒蔵諸星だったので、今日はあそこに行こう。

京急で横浜から一駅、神奈川駅へ。駅から5分ほど歩き、大通りから少し入った場所にひっそりとある『みのかん』へ

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お店に入ると、もうつまみがあんまりないけど…と言われて、いえいえ、軽く飲んで帰りますので、とカウンター。角打ち的なじつに渋い雰囲気。大瓶が480円

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ゆどうふ180円とかまぼこ250円を頼んだら、いちいち量が多い。かまぼこ、これですよw

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人は良いけど、話がループするタイプの、地元のおじさんが店主とおかみさんとよしなしごとを話しているのを聞きつつ、ぼんやり。2人で4時間いて11,400円飲んだ人の話をしている。この店でどうやって…。

中央卸売市場が近いので、いつも魚を直接仕入れに行って出しているらしい。今日はお刺身がもう無いのが残念だった。土曜日はもう休みにしようか、みたいな話もしていた。ハイボール280円

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じつに得難い、こういう店はもう絶対新しくは作れない、そういう雰囲気の、よいお店でした。お会計は1250円なり。

神奈川駅方面に別の道から歩いていくと、地元の神社のお祭りだったらしく、たいへんな人の出、屋台の列

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青木橋に出て

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東神奈川のほうに下り、また少し飲んで、帰宅したのでした

在華坊(@zaikabou)/2016年06月11日 - Twilog