日曜日、朝はのんびり日記書きなどして、少し遅めにお出かけ。昼飯を早めに東京駅近くで済ませ、竹橋に向かう
トーマス・ルフはベッヒャー派であるけれど、しかしその路線はかなり独自なもので、連綿と連ねるドイツの個性的な写真家たちの中でもひとつ異彩というか、なんなんだろうこれ、という疑問を常に抱かせる。そして今回は写真撮影自由なんですけどね、この展覧会
この撮影可能というのが曲者で、写真って何だ、とありとあらゆる手法で迫ってくるこの写真たちをですね、
撮影をしていても
私はいったい、何をしているんだろう、これを写真に撮ることになんの意味があるの?と考えることで、この写真は一体何なんだ、写真と呼べるものなのか?という疑問がさらに膨らんでくる。
トーマス・ルフ先生、もう、写真自分で撮るのか、そういうことにまったくこだわっていない。出来上がってくるものは確かに写真なんだけど写真じゃないし…これなんか目の粗いjpegだし…それをこんな大きさに引き伸ばした時のインパクトよ
写真、まだまだこれからだぜ!という、トーマス・ルフ先生に、励まされたような、狐に摘ままれたような
不思議なもやもやを抱えて、美術館を出るのだった。さて、竹橋から茅場町にでて、日比谷線に乗る。こんどは恵比寿、ガーデンプレイスのマルシェを眺めてから、リニューアルした東京都写真美術館…というか、TOP MUSEUMというんですか
東京都写真美術館ですね。はい。記念すべきリニューアル展は、杉本博司『ロスト・ヒューマン』であります。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html
人類の終焉をいつも夢想するという杉本博司先生、今回は、ありとあらゆる方法で滅亡した人類を夢想し、そこから33のストーリーを作りだして、何時もの通り、自身の写真と蒐集した骨董品で世界を作り出します、という展覧会なんだけど、これがすごくてですね。
以前の千葉市美術館での展覧会は、確かに面白かったんだけれど、なんか、スノッブに気取りやがって…みたいなとこがあったんですが
今回はもう、唖然として、どうやってこんな作りこんだんだよ、という世界で、もう脱帽するしかない。展示空間がトタン板で構成されて、異世界を作り出している。この美術館はリニューアルして、こんな自由にいじれるんですよ!という、素敵なプレゼンにもなっている。
その世界の終わりについて、各界の著名人によってストーリーが代筆されていて、その文章をじっくり読みながらの地獄めぐりになるわけだけれど。この肉筆の字がまた面白くて、束芋の字が特徴的過ぎたり、宮島達男の字が活字みたいに綺麗過ぎたり、、豊竹咲甫大夫の字がウネって いて読みにくかったり。あ、あと、高層ビルと都市インフラが人口減少で維持出来なくなるの、南條史生じゃなくて森佳子に書かせたらもっと良かったな。
杉本博司は、写真は終わったという。どういうふうに終わったのか。やってること見ていると、ぜんぜん、写真始まったな!と思うわけだけれど。世界の終焉の別フロアで展開されている、劇場シリーズの新展開、廃墟の劇場の写真もインパクト強かった。そして実相寺昭雄の『無常』が見たくなった。
とにかく、東近美『トーマス・ルフ展』と写美『杉本博司ロスト・ヒューマン』を続けて見て、写真とは…みたいなことが頭の中をぐるぐるするし写真という表現の最先端として是非見るべきは間違い無いんだけど、杉本展の文楽人形首カタカタとか卒塔婆背景に人形こっち見んなとか飛び道具が卑怯過ぎていろいろ吹っ飛ぶのです。
トーマス・ルフ先生、杉本博司先生とも、ええ大人が全力でけむに巻きに来ている感じで、これはぜひ、セットで見ていただきたいのでした。
美術館を出て、渋谷経由、駒場東大前。どういう流れか、東大の敷地内にあるイタリアンに行きまして、お肉をいろいろ食べて大宴会…ほかの客はぜんぜんいないけど大宴会だったのです
今日も、いい日でした。