日毎に敵と懶惰に戦う

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首都圏外郭放水路に行ってきた

巨大建築愛好家の皆さんの間ではつとにおなじみの、首都圏外郭放水路。実は私、まだ見たことがなかったのである。んで、今日は一般公開日で、予約無しでも入れるよ、という情報をmixiの「社会科見学に行こう!」コミュで、昨日の夜になって知ったのでした。これは行かねば。
ということで、朝6時起きで家を出て、渋谷から大宮、東武野田線に乗り換えて春日部市南桜井駅まで。今日に限って駅から無料の送迎バスが出るということなので、満員で乗れなくては大変、と一番バス(8:45)に間に合うくらいの時間にきたのだが…バスにはお年寄りばかり、5人くらいしか乗らず。拍子抜け。

これが放水路の終点、江戸川端にある管理施設である。簡単に「首都圏外郭放水路」の仕組みを説明しておくと。中川と綾瀬川、およびその支流は、流域のわりに川が小さく、しかも勾配が緩い。地形も皿のよう。だから、この流域では、たびたび洪水に見舞われてきた。これを解消するために、各河川が満杯になったときに水が流れ込むための立坑、それをつなぐ地下水路、流れ込む調圧水槽、そして江戸川に放出するためのポンプが作られた。これが首都圏外郭放水路。しかし、驚くべきはその規模で、立坑は深さ70m、水路は地下50mに直径10mで長さ6.3km、調圧水槽は78m×177m×25mの巨大空間。ポンプは全4基で、25mプールを1秒で空にできる、という。百聞は一見に如かず。今日はそのうち、調圧水槽とポンプの羽根が見られると言う。
ではさっそく、見学。地下の前に龍Q館という、見学施設を見る。施設の模型

は気合の入った作りだし、その後ろのモニタで流れる「完成までの工事の様子」も、妙に気合の入った、音楽で盛り上げたりする作品。プロジェクトX以降、この手の映像の文法が一つに定まった気がする。昔はこういうの、もっと坦々と作ってあったよ。
ウルトラマンコスモスの撮影にも使われた司令室。

この施設では、「庄和の龍伝説」とかいう、5分くらいの映像作品も見られるんだけど、施設が出来るまでを描いた後は、いよいよ大雨が降ってきた!みたいな展開になって、司令室の様子なんかが出てきて、ノリが完全に特撮、ないしアニメなんですね。プロジェクトXか特撮かどっちか。このふたつの文法は日本を強力に支配している。
見学終わって、いよいよ地下へ。こないだの日比谷のような混雑を予想していたが、全然こんでいなくて拍子抜け。そりゃ、立地ってもんもあるしな、当然と言えば当然だが。妙にスカートの短いおねーちゃんに誘導されて(イベントコンパニオン?)、調圧水槽への階段を下っていく。

一番下まで降りついて、広い空間に出るか…と思ったらなんだか中途半端な空間。おや?ときょろきょろ、横を向くと…おおおお!

興奮して曲がってしまった…気を取り直して


うーむうううう、凄いなあ。とにかく凄い。言葉もない。
それと、今日のもう一つの目玉は、完成目前のポンプなわけである。現在、江戸川に水を送り出すためのポンプは2つだけ稼動中で、残り2つは施工中。完成間近のそのポンプ、羽根を下から見上げることが出来た。
巨大水槽の一番奥、江戸川側に、そのポンプへと至る水路が作られている。水の流れを考えて厳密に設計された水路

そのまた一番奥に、水を汲み挙げるための羽根がある。

直径3.7mのその羽根

もういっちょ

いや、これは、施工中の2つのうち1つが、ピンクにライトアップされていたんですよ。なぜだか理由はしらないけれど。稼動中の2つのプロペラは、導水路部分に水が入っていて、そこまでたどり着くことも出来ない。だから、この施工中の2つも、今しか見られないんだろう。いいものを見た。どうぞ落書きしてください、とペンがおいてあったのだが、すでに書かれたことを見ていくと…

わははは、不謹慎だなあ。しかし、2箇月もすると、そのネタの意味がなんなのか、ほとんどの人が理解できなくなるような気がする。
存分に堪能して、出口方向へ。こちらのほうには第一立坑があるが、あまり近くまで行くことはできなかった。それでも写真は

出口への階段の途中からも、水槽の様子が良く見えて、少しずつ視点が高くなりながら眺める水槽もまた格別。



出口を出ると、広い広いサッカー場が拡がっていた。この地下がすべて水槽になっているのだな。

とにかくこのイベント、空いていてじっくり見学できるし、なにより、誰に急かされるわけでもなく、地下に留まり放題なので、オススメですよ。ワタクシも1時間ほど堪能した。来年も機会があるようなら、まだいってない方は是非この機会に。客層としては、家族連れ、お年寄り、好事家で均等に分け合っている、という感触か。

外には、シールドマシンの形の巨大な時計まであった。