日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

川村記念美術館 ゲルハルト・リヒター展

6時半起床。今日は千葉遠征なので早起き。朝から積雪とは予想外。横浜へ出て、朝飯を買い込み、ホリデー・パスを買って、グリーン券も買って、7時39分のエアポート成田に乗り込む。病み上がりの体を気遣ってグリーン車である。ま、だったら出かけるなという話なのですが。
どこまで行っても線路の外は一面の雪。千葉も雪。佐倉も雪。少々の遅れで佐倉駅着。駅前から川村記念美術館の送迎バスがあるのだが、オープン直後に到着するバスにはさすがにそれほど乗客もおらず。ただ、どうにも美術館に行くにしては明るくないムードの中年女性が数人いる。バスは雪景色の中を20分ほど走って美術館に到着。さっきの女性は美術館で降りなかったので、おそらく大日本インキにお勤めの人なんだろうかなあ。そう、ここは大日本インキ化学工業が運営している美術館なのである。隣接して研究所があるらしい。


美術館は広い敷地の中に、池を従えて建つなかなか素敵な建物なのであるが、なにしろ雪が尋常でない。そして寒い。廻りを眺めるのもそこそこにとにかく中に入る。
順路に従ってまず常設展を。だれでも名前を聞いたことのあるような作家の作品がぞろぞろ。奥の部屋にあった長谷川等伯の鵜鴈図がやはりまことに結構。照明の加減かガラスの加減か、正対すると映り込みが少々気になったけれど。
そして、進むとゲルハルト・リヒター。私、良く知らなくて、もっとふざけた現代美術な人だと思ってたわけです。でも、非常にマジで絵を描いている。まず写真があるのに何故絵画?って疑問がどこからか呈されたときに、絵画ならではの表現、誇張…というのが出てくる。ところがゲルハルト・リヒターは、ピンボケした写真をそのまま絵画にしてしまっていて、写真に対する絵画のアドバンテージ…時間軸を表現できるということ…をまず放棄してしまう。そして、ポンボケ写真そのままを絵画にする。もちろん確かな技術で精密に。じゃあなんでそんな絵を書く意味が…なんて、見るほうは考えないといけない。でも本人のインタビュー聞くと、「出来上がった絵を見て考えるのは批評家が上手だからねえ、僕自身は出来上がった絵の意味はよくわかんないよ」とか言って微妙に梯子を外す。
そんでもって、他にも抽象的な絵を描いたり、カラーパターンを並べたり、ガラス板を重ね合わせたり、ただの鏡だったり。変幻自在に色々な傾向の作品を作る。なるほど、さすが、「絵画は終わった」なんて、いま巷で流行の「終わったメソッド」が百年前から適用されているようなジャンルに活路を見出して、巨匠と言われるような人は身のこなしが軽いな、と思った。ただ、ゲルハルト・リヒター初心者のワタクシとしては、写真系の作品も少しあってくれると楽しめたか知らん。

庭も散策できるようだが、この雪ではなんともかんとも。丁度良い頃合で帰りのバスが出るので、ミュージアムショップを少し覗いて、バスの人となる。2人しか乗っていなかった。こんどは京成佐倉駅へ。