日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

洒落と酔狂のハワイ

6時起床、7時前にでかけて東京駅で待ち合わせ。8時30分のいわき行き高速バスは、ほぼ満員であった。ことの起こりは先月。「一度スパリゾートハワイアンズに行ってみたい」「ああ…常磐ハワイアンセンター…むう…どんなもんだろう…」「話のネタに」「ああ、話のネタに…そう…」。そういう感じで、衆議一決、話はまとまったのである。
友部SAで休憩を取り、バスは渋滞にもかからず順調に走り、いわき湯本ICでバスを降りる。webページには「ここで下りればすぐ分かる」的に書いてあったが、徒歩の人のための親切な看板はない。まあ、車以外で来る人間などほとんどおらぬだろうし、と車用の看板に従って遠回りして到着。
正直なところ、「えー、常磐ハワイアンセンター?」とは思いつつ、アド街で紹介されているのを見て「なかなかいいじゃないか」とは思っていたのである。しかし、一歩足を踏み入れて、印象は確定した。これは、規模が馬鹿でかい健康ランドだ。改装をしてはいるんだろうけれど、どうしても目に付く古さ(というか、構造の古さ)。更衣室は公共のプール並み(ドライヤーだけはあるが)。動線が不明確で、靴を履いて着込んだ人と、水着で裸足の人が、同じ場所をうろうろしている。
お金の持ち運びなどのシステム廻りが一番困惑。これが例えば、西武が作る施設だとしたら、現金の代わりのカードのようなもので会計はあとで清算、となるのだろうが、ここの施設はそんなに洗練されていない。すべて現金である。
だから、財布を持ち歩かないといけないのだが、水着を着て財布を持ち歩くわけにも行かない。必要なときにロッカーに取りにいこうとしても、ロッカーは100円が戻ってこないタイプなので、何回も取りに行くとそのたびにお金が掛かる。水が入らないような、首から下げられる入れ物が売っているので、それを活用するのが正しいようだが…
だので、会場内には、水着を着てなんにも持たずにうろうろしている人と、はじめから水着を着るつもりの無い人が一緒にうろうろしている。だから、靴を履いた人と裸足の人が一緒にうろうろしているわけですね。水着でいても不自然じゃない場所と、水着でいるとなんとなく不自然な場所が不連続に続いているので、所在無くなるのだ。
いや、なに、文句を言っているわけではない。家族連れにはよいのだろう。「おしゃれなところ」と勘違いしてきたカップルは、子供がボール遊びに興じるプールで所在無げにしていたが、子供には楽しいと思う。だから、子供は水着でばちゃばちゃ遊んで、親は普通の格好で荷物とお金の管理をする、という遊び方なら、楽しめると思う。

こんなひろーいドームの中で、流れるプールやウォータースライダーで目一杯遊べるのだから。これだけの規模で、値段は大江戸温泉物語と同じくらい。安いと思う。このドーム以外にも、大変広くて温水のプールやら温泉やらがあり、植物園のようなものもあった。子供は楽しいと思う。全体的に、プールは芋を洗うようではあったが…。

わたしらは、まあ、とりあえず全部見ておきましょうとしらみつぶしにして、それから財布を取りにいって飯を食い、最後に温泉…これは素晴らしかった、とても広い露天風呂…に入ったのであった。露天風呂は「江戸情緒」がテーマらしく、飲食店街が「アロハ横丁」と書いてあった。アロハ横丁…。
本当なら夜のショーは面白いのだろうが、これ以上長居する元気を失ったので3時ごろには出る。湯本駅行きの無料送迎バスを待つために、敷地内にあるホテル

…当初はここに宿泊することも考えていたのだが、満員でよかった…ともかく、このホテルのロビーにいると、社員旅行の団体さんが到着したバスから下りてくる。おお、社員旅行で常磐のハワイなのか、と思っていると、おっさんがホテルの従業員に「アロハ!」と挨拶していた。アロハ。それを聴いた瞬間、己のひねくれた心情を心底恥じ、心から楽しめるこのような姿勢を称揚したのであった。嘘だけど。
帰りのバスはお年寄りばかりで、みな駅まで行くのだろうか、と思っていたら、途中のバス停でもないところで順番に下りていく。近所にお住まいのお年寄りが、温泉に入りに来ているのだろう。それを見て、ああ、良いところだな、スパリゾートハワイアンズ、多分二度とこないけど、と思ったのであった。