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UR都市機構『都市住宅技術研究所』特別公開

土曜の朝から7時起き。8時過ぎにでかけて、菊名八王子経由で北八王子まで。工場街の一角に、UR都市機構の『都市住宅技術研究所』はある。今日の一般公開、団地マニアの小林さんのmixi日記で昨日教えてもらって、内容はなんだかわからんけれどとにかく行かなくてはいけないのだこれは、と突き動かされて来てみたのであった。そして来て正解であった。

シンボルは、108mの超高層住宅実験タワー。超高速の住宅の居住性能やらなにやらを研究するために建てられた。この組織、つまり昔の住宅・都市整備公団であり、さらに昔の日本住宅公団であるところのこの組織は、住宅を建てるための関連技術はなんでもかんでも自分のところで研究開発してしまって、水周りやら家具やら、いろんなものまで自分で作ってしまう組織なわけである。
10時のオープンを休憩室で待って、まずは、『居住性能館』で、あかりの機能実演。リビングが再現された部屋で、明かりの色温度が自在に変化したり、壁から明かりが出てきたり、天井の高さまで変わったりで、明かりの効能機能を説明してくれた。
そして、なんと言っても本日のお目当てである『集合住宅歴史館』へ。ここは、これまで公団が作ってきた団地を、間取りそのままに移築してある素敵施設である。「ちょうど10時半からのツアーがはじまったところですので、どうぞ」と促されて追いかけてみると、おねーさんの説明に熱心に聞き入っているのは団地マニア小林さんであった。

代官山アパートの単身者向け住居

世帯向け住居

蓮根団地の2DKの住居

多摩平団地のテラスハウス

前川國男の晴海高層アパート
一つ一つ、実に丁寧に説明してくれ、そこに詳しい補足説明を加えてくれる小林さん、そしてさらにマニアックになっていくおねーさんの説明。小林さんの目がきらきら輝いていた。って、小林さんを実況してもしょうがないんだけれど…。
とにかく、水周りからなにから、すべてが忠実に再現されている。そして、公団はなんでもかんでも自分で開発する。洋式便座とか、リビングテーブルとか、畳とか。戦後の「住むこと」の意味を含めて、いかに公団が、日本に深い影響を与えてきたかを物語るのである。
一番面白かったのは前川國男の晴海高層アパートで、正方形で構成された空間、ふすまの取っ手まで正方形、一部屋4毎にそろえるための細長い畳…

前川國男の美意識全開。かっこいいなあ。エレベータも移築されている。

このエレベータ、1、3、6、9階にだけとまり、その上下の階には階段で行くようなしくみになっている。だもんで、それぞれの住居にどうやっていけばいいのか、という案内板もあったり。

当時はアコガレの住宅であったのだろうな。これ以外にも、配管やら分電盤やらの変遷、公団の歴史、水周りの歴史、いろいろあって、素晴らしく充実した施設なのであった。
思いのほか長居してしまい、11時からはじまる中心市街地活性化についての講演は聴き逃してしまったが(学生時代の専門分野なのだが…)、まあいいや、どんどん見ていこう。
風洞実験棟は、ビル風の影響などを研究する施設。大きな風洞実験設備があって、30m/sの風まで再現することができるとか。

研究員の人が熱心に説明してくれたので、汐留のビルとヒートアイランド現象の関係についても聴いてみたが、大変詳しく正直に説明してくれた。大変、好感が持てる。熱心すぎて、模型の説明をしているときに建物を一つ「バキッ」と折ってしまい、「あっ……まあ、古い模型なので…」となったのはナイショだ。
この他、コンクリートの強度検査とか、耐震技術だとか、水が染み込むアスファルトだとか、屋上緑化だとか、太陽電池だとか、新しい方式の配水管だとかいろいろあって、研究員の人がそれはそれは熱心に、しかも聴けば聴くほどマニアックに答えてくれて、実に充実した一般公開なのである。間取りを自在に変化させる建物の研究と、そのための技術、たとえばコンクリートに直接貼れるシールの電気配線なんて面白かった。
最後に、振動実験棟へ。地震体験をやってくれるので。

この「三次元振動台実験装置」は、水平2方向、垂直1方向、そして各軸回転の揺れが可能な振動台なのである。だから、地震計のデータを元に、実際に起きた地震を時間軸を元に再現することが出来る。
だもんだから、今回の地震体験も「震度6の揺れ」みたいな漠然としたものでなくて、「平成15年十勝沖地震」「兵庫県南部地震」「中越地震」をそのまま再現してくれる。なにからなにまで、マニアックさを惜しげもなく提供してくれる施設である。
しっかり座って棒にしがみついて、地震体験。「平成15年十勝沖地震」は、細かい振動がしばらく続いた後、ぐらり、と大きく揺れる、そしていつまでも揺れ続ける震源の深そうな地震で、正直、それほど恐くは無い。立ってはいられないだろうけれど。「兵庫県南部地震」即ち阪神大震災は、横揺れがいきなりガツン、と来る地震、これは恐い。そして「中越地震」。最初、経験したことの無いような縦揺れがわずかな時間続いた後、ドーン、と縦に突き上げるような揺れ、そして横にもドーンと。正直、新潟の地震が一番恐かった…。
そんなこんなで、思いのほか長時間、3時間半くらい長居して、施設を去ったのであった。いやー、面白かった!お客さんは、建築学関係の学生さんが一番多かっただろうかな、やっぱり。
http://www.ur-net.go.jp/rd/