日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

名取洋之助展を見に行く

7時起床、というか床の上で目が覚めて夕べは布団で寝なかったのだなあ、と気がつく。体が痛い。朝飯にパンを食い、いろいろと調べ物と書き物。ううう。
昼過ぎ、ちょっと出かけて、武蔵小杉からバスで川崎市市民ミュージアムへ。『名取洋之助と日本工房』展。福島県立美術館からの巡回展であり、何かのついでに福島まで見に行こうかしらん、と思っていた私には大変嬉しい巡回である。
名取洋之助は戦前にドイツに渡って写真を学び、帰国後、日本工房を設立、日本を世界に宣伝する雑誌「NIPPON」を作った人。その美麗な写真、素敵なデザインの雑誌作り、あるいは「日本工房」のコーポレートアイデンティティーの確立など、時代からかなり超越した人物である。一緒に雑誌を作っていた人も、土門拳だとか亀倉雄策だとか、まさにキラ星の如し。
で、その美麗な印刷の雑誌を作るのは当時の日本の印刷技術ではかなり困難を極めたようで、「一冊作るごとに家一軒売る」ような…要するに、名取洋之助の家自体がトンダ大金持ちだったのですな。「NIPPON」を作るにあたっては鐘淵紡績(カネボウ)からかなり支援を受けている…裏表紙はずっとカネボウの宣伝である…し、「NIPPON」はカネボウやら三菱やら日本郵船やらの広告が満載で、まさに世界に向けての日本宣伝誌なのである。
内容も、日本の鉱工業、文化、軍隊、子供、女性…戦局の進展に伴って、満州やら朝鮮やらの宣伝も。藤田嗣治戦争を描く、なんて特集記事もあった。末期になってくると「戦意高揚」的な目的が強くなっていって、この「NIPPON」以外にもタイ語で作った雑誌…日本はこんなに豊かです、同盟国のタイの皆さん、安心して一緒に戦争しましょう、的な、ある意味噴飯物で嘘だろー!な内容ではあるのだが、写真は美麗だ…だとか、蒋介石反日キャンペーンに対抗するプロパガンダ雑誌だとか、そういうものを作るようになっていく。そして終戦。
それらの雑誌の実物と、写真が膨大なボリュームで展示されていて、極めて面白かった。実に見ごたえあり。
売店では「NIPPON」の復刻版が売られていたが、全巻そろえると30万超。ちょっと買えない。変わりにポストカードを数枚買った。
バスで戻り、帰宅する。