日毎に敵と懶惰に戦う

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東京都現代美術館

7時起床。10時過ぎに出かけて、清澄白河まで。東京都現代美術館は閑散としていた。
中村宏・図画事件』この人は名前は聞いたことがあるし、絵もなんとなく印象には残っているのだが、いまいちはっきり図像を結ばなかった。会場で夢野久作全集の表紙を見たときに、ああそうか!と合点が行く。あの強烈な印象の絵が中村宏であったか。
http://www.zugajiken.jp/
で、絵のほうなのであるが。最初の頃に画いていたルポタージュ絵画、お題が砂川闘争とか国鉄とか戦争とか、そういう社会的な絵。それが、機関車やら女子校生やら便器やら眼鏡やら、モチーフを組み合わせながらのおどろどろしい絵画になる。その強烈な印象が当時の若者を捕らえていた事は、当時の大学祭のポスターにたくさん使われていたことからも確かなのだろう。ただ、1960年代くらいまでの変遷は刺激的で面白いのだが、それ以降になると自家中毒みたいな様相を呈してきて、一時代を築いたギャグ漫画家のその後の苦悩のようなものが感じられないことも無かった。
『MOTアニュアル2007 等身大の約束』「表現方法はさまざまですが、高度情報化社会の中でのコミュニケーション、知覚や認識の危うさを露にし、地域や社会など身の回り関係を自らの立ち位置から見つめ直す作業をしている作家たち」ということなのだけれど、単なる郷愁とかノスタルジーの部類のものもあったような気がする。自分の生きた記憶とか記録とか、そんなに残しておきたいものなのだろうか?
『MOTコレクション 闇の中で in the darkness』今回の常設展はテーマを決めた展示で、これが馬鹿に良かった。土屋公雄の、木片や陶磁器を月の満ち欠けに見立てた作品にはじまり、奥に進むにつれて闇が濃くなり、闇の中に置かれた草間彌生のボート、そしてボルタンスキーの『死んだスイス人の資料』の存在感。最後の部屋の宮島達男の作品(常設のものに加えて、作家から借りた作品まで展示されている)も普段とは違って見えて、デジタルのカウンターに近づいていくと、闇の中の赤い光の洪水の中へと吸い込まれて堕ちていくような感覚を覚える。全体で一つのインスタレーションとしても成立しているような、とても面白い展示。

それにしても、人がいない。やっぱり立地が悪いよね…。なにかのついでに行くようなところじゃないし。