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東京国立近代美術館『生誕100年 靉光展』など


東京国立近代美術館へ。楽しみにしていた靉光展。靉光というとやはり『眼のある風景』であり、国立近代美術館に行くたび、あの絵を見て、いいなあ、と思っていた。初期の作品から、その軟らかくて力強くて、そして緻密な作風は一貫したものであり、背筋の一本通った画家なのだな、と思う。濃密で、息苦しくなるぐらいの鋭さ。『編み物をする女』や、『乞食の音楽家』など、彼岸の彼方な色使い。後期の作品への繋がりを自分のなかでいまいち整理することが出来なかったのだけれど、最晩年の自画像まで、一貫した力強さに心打たれた。
そして、常設展示。これが、凄い。ここにはちょくちょく訪れているのだが、この3月で、だろうか、相当大幅な展示替えをしている。その作品たちが、なんだろう、自分、変な薬でもやって一本太い神経がどこかで繋がりっぱなしになってしまったのではないか、と思うほど、一つ一つに感じるものが多すぎて、草臥れる。クオリティが高い。
4Fでは菊池芳文の『小雨ふる吉野』と川合玉堂の『行く春』の屏風の並びなども素晴らしいし、他も皆良い。特集陳列の『群集の孤独』も良い。3Fに下ると、土田ヒロミの写真がこれまた素晴らしい。鬱屈した都市風景が胸に迫る。そして、戦争画藤田嗣治の『武漢進撃』は、藤田の戦争画独特の濃密な暴力性とは無縁で、まさに藤田らしい乳白色の海に軍艦が浮かぶ、というもの。これを見ると、ああ、藤田嗣治の絵画に思想は無いのだな、と一人膝を打つのであった。そして伊原宇三郎『特攻隊内地基地を進発す(一)』。すぽーんと広い空の下、飛び立っていく特攻機を見送る人々の後姿。誰もこちらも見ていない中で、一人だけ、振り返り、画面のこちらをじっと見つめる、抱きかかえられた幼児。その眼が!いつまでも忘れられぬ。この2つの戦争画は、4月15日に展示換えをしてしまうらしいので、その前に見るべし。2Fは高松次郎の小特集のようになっていた。今回の常設展、キュレーションした人グッジョブ、というか、そもそもここのコレクションはクオリティが高いのだよね。
http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20070310.html
2Fで『リアルのためのフィクション』も。ソフィ・カルは、以前に国立国際美術館で見たものと同じだったし、やなぎみわも前に見たことのあるものだったが、塩田千春の浴槽の中で大量の泥を浴びるパフォーマンスの映像作品は強烈過ぎて、お客さん一同、固まって見入っていた。