日毎に敵と懶惰に戦う

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神奈川県立近代美術館葉山 イリヤ・カバコフ『世界図鑑』絵本と原画

7時起床。昨日のお酒が少し残っているけれど…。朝飯食って、10時半過ぎに出掛ける。
横浜から横須賀線で逗子へ。駅前からバスに乗って、葉山の海岸沿いの細い道を抜けると、海沿いに建つ神奈川県立近代美術館の葉山。今日からはじまる企画展、イリヤ・カバコフ『世界図鑑』にやってきたのでした。

http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2007/kabakov/index.html
先日、横浜トリエンナーレ2008の市民応援隊ミーティングに行ったときに
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20070901/1188658547
横浜トリエンナーレのディレクターであり、神奈川県立近代美術館の企画課長でもある水沢勉さんがこの展覧会の話をしていたので、興味を持った、というのもあるのだけれど。
カバコフと言うと、妻有の『棚田』の作品のような

大規模なインスタレーションで知られた人だけれど、旧ソヴィエトのウクライナ出身の人であり、そのような作品は云わば『非公認』の活動。ソビエト時代の彼は、絵本作家として生活していた。今回の展覧会は、その時代の絵本の挿絵の数々を紹介するよ、というものなのだ。
絵本の内容は、決定された方針の下、画と文が完全分業によって製作される、いわば政府による検閲済みのものばかり。展示室に入る前のイリヤ・カバコフ自身による解説文には、『それを描いていたのは確かに私だけれども、“彼”が描いていたのであって、ほんとうに私が描いていたのではないのだ』というようなことが書かれており、決して本意の仕事ではなかった、学んだことを生かして生活していくための手段であった、と言っている。
だけれども、その挿絵自体は、どれも創意に溢れていて、色使いがやさしくてとても綺麗で。ソビエトの子供達の(ある意味模範的ではあるけれど、けっして虚構ではない)日常生活が描かれたもの、ソビエトの科学技術を子供達に紹介するための、機械や道具、そして宇宙開発の挿絵。描き込みが細かくて楽しい。タッチがバラエティに富んでいる。
内容としても確かに一定のイデオロギーに従った絵本の数々ではあるけれども、決して一目見て白けるようなプロパガンダ臭漂う安易なものではなく、しっかり作りこまれた良い内容。絵本の挿絵原画を紹介するとともに、絵本の内容を液晶画面でスライドショーしてくれる。
中であった『テルラフェルロ国の物語』というお話。『木の王』『金の王』『鉄の王』に支配された国で、鉄の力が徐々に強くなって鉄の王に支配されるようになる。この事態を憂慮した木の王が鉄を食べる魔女と手を組み、その魔女が国中の鉄を食べ尽くし、国土が荒廃する。ある青年の機知によって魔女が倒され、人々は民衆のための国を作っていこうと決意するのであった…という、いろいろ教訓込みの物語ではあるのだけれど。なんかこれ、北朝鮮の特撮映画『プルサガリ』に影響を与えているのか?とか思った。
今回の展覧会は、100種類の絵本の1000もの挿絵を紹介する、というもので、世界でもはじめての試みらしい。なかなか見ごたえがありました。
この日は、イリヤ・カバコフとボリス・グロイスの対談があったんだけれども、残念ながら事前申し込みが無ければ入れず。んー、残念。でも、水沢勉さんに先導される生カバコフを見れたので、まあ、良しとしましょう…
この葉山の美術館は建物が素敵で、レストランも海に突き出した良いところ。



お天気の良い日にどうぞ。まあ、建物は、横須賀美術館のほうがインパクトありますけれども
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20070520/1179654129