日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

『≒草間彌生〜わたし大好き〜』

朝飯に夕べの残りのパンとゴーヤチャンプルの余り(いつまであるんだ)、洗濯をして干して…うわあ、大雪だ、ともかく渋谷にお出かけ。
d:id:pizzicatoさんのお誘いで、シネマライズに『≒草間彌生〜わたし大好き〜』を見に行った。何時見に行こうかなあ、と迷っているところのお誘いだったので、有難かったです。
2006年の初めから2007年にかけての、“前衛芸術家”草間彌生の活動を追ったドキュメンタリー。アトリエで、モノクロ作品シリーズ『愛はとこしえ』50作を、あの一種偏執的な筆遣い…使っているのはマジックですが…で仕上げていく様子、2006年に旭日小綬章を授与される様子、横浜美術館の企画展『アイドル!』の映像撮影、ニューヨークのギャラリーでの新作展の会場へ。欧州の大規模展覧会のキュレータとの打合せ、直島の赤かぼちゃの製作風景、2007年の高松宮殿下記念世界文化賞の受賞、たけしの誰でもピカソへの出演…などなど。
合間合間に、ニューヨークにいたころの創作活動の様子や、悲壮な子供の頃の話などを挟みつつ、淡々としたドキュメンタリーになっているんだけれど、本人のインパクトが強烈なので、十分に楽しめるエンターテイメントに仕上がっておるわけです。
絵を描いているシーンが結構多い。頭ではわかっているのだけれど、あの細かい部分を、全部書き上げていっているのだなあ、と実際の映像で見ると、そのインパクトはなかなか強烈なものがあるわけで。
生来、大変パフォーマティブな人なのですね。それはおそらく、ニューヨークで絵を描いて生き残っていったところから発しているいるのだろうけれど、自分をどう売り込んで、どう見せるか、常に前衛的であるにはどうしたらいいか、日々、よくよく考えている。大勢の人前に出ると足が竦んじゃって歩けなくなるんだけど、車椅子に乗るのは老いたな、って見られるからイヤ…とか。
所々、『病院にも花が沢山届いて…』とか『看護婦さんが草間先生の絵が仕上がったからみんな見にきて、なんて…』とか、あるいは夜、病院に戻っている様子とかがあるんだけれど、病院の中での映像はまったくないわけです。見せたくないんだろうね。
そして一番強烈なのは、この方、とにかく自分の仕上げた絵を見て、あるいは自分の書いた詩を読んで、常に感動しまくっているわけで。『凄いわねー』『素敵だわー』『ちょっとこんなもの書けないわよ』。芸術家は自分の書いたものを一番だと思わなければやっていけない、なんて言いますが、そんな概念のレベルにとどまる話じゃない。本当に本気で、自分は天才だと信じ、信念を持って、自分の作品はすばらしいと信じて創作している。そして実際、あんなすばらしいものが生み出される分けだから、うん、やっぱり、凄い人ですよ。記者会見で『人の作品や文学からインスピレーションを得ることはあるのですか』と聞かれて『質問の意味がわからない』なんて言うし。
草間彌生の大ファン、というのではなくても、エンターテイメントとして十分に楽しめるものでしたよ。
ちょっと気になった点。カメラマン(=監督?)がイマイチねえ…。草間先生に時々質問するんだけれど、その内容が凡庸、かつ聞き方も下手。草間彌生を理解するための手助けになっていない、そのときのちょっとした印象を聞いてみるだけ。ぼそぼそとした声で歯切れも悪いし。それに、空気読まない酷い質問もいくつか。最後のほうで、50枚のドローイングを仕上げた草間彌生に対して『晩年にこのような作品を仕上げられるというのはどうですか』『……は?』『晩年にこのような作品を…』『…あたし晩年なの?』『まだ晩年じゃないですか』これはちょっと、あんまり酷くて笑った。
いっそ何にも聞かないか、空気読まないんだったら原一男レベルのえぐるようなキッツイのをお願いしたいところです。 まあ、草間さん本人の個性が強烈だし、全体の構成としてはちゃんとしているから、作品としてはしっかり仕上がっているわけですが。
あ、あんまりどうでもいいところだけれど。世界文化賞でメダルを授与する常陸宮のおじいちゃんと、授与されて席に戻った時、隣に座っているボルタンスキーにぽんぽん、と笑顔で触られるところが、ちょっと萌えでした。
映画館でドキュメンタリーを見たのは、京都に片岡仁左衛門のドキュメンタリーを見に行って以来でしたねえ。あれは二日に渡ってエライことだった。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060128
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060129