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川村記念美術館『マーク・ロスコ 瞑想する絵画』

蘇我から千葉乗換え、佐倉へ。無料送迎バスに揺られること20分弱、やってきたのは2度目の川村記念美術館。お目当ては、今日からはじまる企画展『マーク・ロスコ 瞑想する絵画』。そう、高炉を見る日を今日にしたのは、こっちと一緒に来たかったからなのだ!…ってのは嘘で、出掛けに調べたら、おっ、今日からじゃん!って知っただけなんですが
ここで強烈にオススメされていた、ってのも、行こうと思った動機なのです
川村記念美術館のロスコ展を見逃すな!!|弐代目・青い日記帳

まずは常設の展示から見ていきましょう。
今見られるコレクション | DIC川村記念美術館
最初の部屋、モネやルノワールからはじまり、ピカソシャガールと言ったわかりやすいところでご機嫌伺い…なんだけれど、やっぱり品揃えの質が高いなあ。ほいで、レンブラントの肖像画がどーんとあって、カンディンスキーとかで繋いで、屏風で一息ついて(悪くないし超一流ぞろいなんだけどいまいちパッと…)、このあたりから、この美術館の本領発揮。
やっぱり私はマックス・エルンストが好きなんだなあ、と思う。『石化せる森』の静けさがすごく良い。ヴォルスの抽象画っぽいのが凄くよく見えてくると、この美術館の策略に嵌ってきている感じがする。ほいで、ジョゼフ・コーネルで頭の中かき回されて、さて、いよいよクライマックス。

本来ならば1階にマーク・ロスコの部屋があるんだけれど、今回は企画展開催に従い、閉鎖中。そのまま2階へ。階段を上り、正面にバーネット・ニューマン『アンナの光』。うん、白い部屋に、ほとんど均一な赤に塗られた大絵画が一枚、それだけなんだけれど、部屋の左右に大きな窓があり、それぞれ薄いカーテンを通して、右の窓からは森が、左の窓からは白い建物と青い空が。静かな空間で静かな光と共に絵画の光の具合に引き込まれるようになると、もう後戻りができない。
次の部屋、美術館のエントランス入っていきなりこの部屋があったら、よくもまあ、へたくそな塗り絵ばっかり集めて…と思ってしまうかもしれないけどまてしばし。ジャクソン・ポロックの抽象画なんて、なんでこんなによく見えるんだろ。モーリス・ルイス、凄くいい。でもですね、ここで感動しているより、実はこのへんはほどほどにして、先に進んでほしいのですよ。ステラは…まあ、お好きな方はってことで、その先がいよいよ、マーク・ロスコです。
マーク・ロスコ、まさに塗り絵。しかし、一昨年、コンテンポラリーアートのオークションで、その塗り絵が87億円で落札されたマーク・ロスコ。キャンバスの上に、いくつかの色が塗られただけの絵なんですよ。だから、なんだか最初はよくわからない。そもそも、私もよく知らなかったし、川村記念美術館にロスコがある凄さ、なんてのも全然知らなかったわけです。
コレクション - マーク・ロスコの 《シーグラム壁画》 | DIC川村記念美術館
そもそも、川村記念美術館の常設スペース『ロスコ・ルーム』にある所謂『シーグラム絵画』と呼ばれるものの来歴、それを今回、私、はじめて知りました。この企画展示中の解説と、作家の書簡で。自分の作品だけが飾られた空間を求めた作家が、ニューヨークのシーグラム・ビルにあるレストランの求めに応じて画いた絵画。しかし、完成したそのレストランを見て気に入らず、どこにも飾られることなく放置された30枚あまりの『シーグラム絵画』を、テート・ギャラリーの館長が5年かけて口説き落として、テート・ギャラリーにロスコの部屋が作られたのだと。作家本人は、まさにその、飾られる絵画がイギリスに上陸した日、自殺してしまうのです…。
その後、なぜ川村記念美術館に、世界で2つめの『ロスコ・ルーム』が作られたのか、ってあたりは、まあ自分でしらべていただくとして。とにかく、今回の企画展は、アメリカとイギリスと日本に分散していたロスコの『シーグラム絵画』のうち15点が一同に会する稀有な機会ってわけなのですよ…。というわけで、奥の部屋、クライマックスの大空間に向かいます…。
おお…。大空間の四方の壁に、所狭しとならべられた、絵たち。全部で15点。赤い色の微妙なバリエーションで、ごく単純な形が、単純ならざるグラデーションを描きながら画かれた絵画が15点。この色はなんと言ったらいいのだろう?赤銅色?そうだ、これは、錆の色ですよ。さびた鉄の色だ。そして燃え盛る炎の色だ。溶鉱炉の中を覗いた色だ。いや、さっき蘇我で解体中の高炉を見てきたばっかりだからそういう印象から離れなくなってしまったんだけれど、炎を見ていると見飽きませんよね、って感じで、微妙なグラデーションをぐるぐると見続けていて、いつまでもいつまでも、その場から離れられない色なんだよ、これ。人によっては別なものに見えたり、あるいは何にも見えないとは思うだけれど、とにかく、その深い色合いの前から離れ難いのです。真ん中にあるソファーに座って、30分近く、周囲の壁を眺めていました。感動した。
そして、この部屋を出て、また常設のコレクションを見ていくと、まるで自分の中で感受性がめちゃくちゃ高まったような気分になって、絵から受け取る情報量がめちゃくちゃ増えていることを感じるんです。いや、感じるだけかもしれんけどね、とにかく良いのだ。モーリス・ルイスの『ギメル』、めちゃくちゃすばらしい…。 バーネット・ニューマンの作品からも新たな感動が…
時間に余裕があれば、行ったり戻ったりしながら、とにかくじっくり堪能していただきたい、そんな展覧会なのでした。行ってよかった…


絵葉書のうっていたんだけれど、あの色を頭の中にとどめておきたくて、一枚も買わず。美術館を出て、周囲を散策。菜の花が咲いていました