日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

中華料理屋というのは常々不思議なもので

6時起床、会社へ出て、お仕事、昼飯にうどんを食って、目がまわる感じでいろいろ仕事があり、あっとゆーまに一日は過ぎ、会社を9時前に出る。さて晩飯だ。
昨日、家の近所の100円ローソンの隣に中華料理屋の看板を発見した。29日に開店だと書いてある。はて、そこは昔何の店舗だったか。ビルが建て変わったり、店が変わったりすると、前に何の店だったか思い出せないことは往々にしてある。そこはパブとかクラブとか、その筋の、しかしてお安い感じの店ではなかったか。
とにかく、行ってみた。中華料理屋の看板をかかげておいて、ぼったくりという事もあるまい。店に入ると、新規開店という割には明らかに居抜きで、あまりお金をかけていませんといった風情の内装、それなりの席数の店内。この街にありがちな中華料理屋だ。真ん中のテーブルでは、おっさんが4人ほど、店のおねーちゃんと談笑しながら酒を飲み、何やら食べている。その雰囲気はどう見ても『以前からの常連』で、その、開店したばかりの店に以前からの常連などいるはずはなく、つまり『前の店からの常連』なのではないかと思う。
厨房には若いコックが一人、接客しているのはその奥さんと思われる、接客慣れした年の割に綺麗、といった感じの女性。そしてアルバイトらしい、中国東北部から出てきました、という風情の若い子が一人。若い店員さん、おっさんに住所を聞かれて、日本での住所?引っ越したばかりでオボエテイナイ…などと答えている。ここは中華料理屋だと思って入ったのだけれど、なんというか、そういうお店の空気を引きずっているのだろうか。どうも、中華料理屋というのは以前から不思議で、中国人の夫妻で切り盛りする中華料理屋というのがたくさんあり、その夫婦関係のありさまが店店によって千差万別ながら、いずれも何か匂いたつようなものがある。背景にいろんなドラマを感じさせる。出会い馴れ初めから今日に至るまでを想像したくなるような何かがある。
壁に掛けられたテレビが誰も見ていないドラマを流している中、早速メニューを見てみる。安い。このあたりの中華料理屋のご多分にもれず、ラーメンや餃子などの日式中華の基本を安価に抑えながら、中華料理らしい一品料理もかなり安めの値段で用意されている。そして、酒のつまみになりそうな安い前菜の類に、酒。野毛辺りの中華料理屋の定石をしっかり踏まえている。それにしても不思議なのは、客が入っているのか入っていないのかわからない中華料理屋でも、多数のメニューをそろえており、頼めばちゃんと出てくる点だ。材料はどうなっているのだろう。以前は、近所の中華料理同士で何事か融通し合ってあるのでは?と考えたこともあった。だけどたぶん違うのだな。基本的な菜っ葉類や肉さえ揃えておけば、あとは乾物と調味料と調理方法でどうとでも出来るのが中華料理の強みなのだろう。そうやって改めて驚嘆したりする。
開店記念で飲み物サービス、というので、生ビールを頼む。頼んだ後で、この手の中華料理屋の生ビールってババを引くことが多かったな…と後悔したが、意外や意外、生ビールがちゃんとしている。美味い。店のメニューや看板にはアサヒスーパードライと書いてあり、写真まで載っているのに、ジョッキはモルツ、店に積んである生の樽もモルツ、ビールケースもモルツ、そして中味も、私の舌が確かなら確かにモルツで、よくわからないけれど、とにかくちゃんと生ビールだ。食べ物は餃子と、ちょっとおススメしてある、エビかた焼きそばにしてみよう。開店したばかりの店なのに、メニューの入れ物に随分年季が入っているのが不思議だけれど…。
ややあって運ばれてきたエビかた焼きそばは、これと言った特徴のある味ではないし化学調味料が多そうだけれど、野菜の量も多くて、エビもちゃんと入っていて、それなりにしっかりした味付けで、ビールのつまみにもなり、680円ならまあ良いか、と思う。野毛基準の及第点というか、なんというか。
野毛には中華料理屋が馬鹿みたいに多い。そしてどこも安い。それなりの味がかなり安いお値段で出てくる。遠方から通いたくなるような凄くうまい店はないのだけれど、安くて美味い庶民派の中華は溢れており、わざわざ中華街に行かなくてもいいや、という気になる街だ。またこの街に、同じ系譜の店がオープンした、ということらしい。
相変わらずテレビは誰も見ておらず、後ろでは男性客グループと、接客しているおねーちゃんの中国語日本語ちゃんぽんの談笑がやかましい。そして焼きそばを食べ終わっても、餃子は出てこない。忘れられているのだろうか。隣のグループのところに行ってしまったのだろうか。というか、客はそのグループと私しかいないのだけれど。いい加減、作ってないならいらないよ、と若いほうの女性に言おうとしたところで、餃子が出てきた。でかい。380円で6個、大変に大きな餃子だ。この餃子というのも不思議だ。注文されてから中身を詰めて作るのだろうか。中華料理屋の厨房はいまだに謎だらけだ。そして味の方も、うん、これと言って特徴があるとかすごくうまいわけではないけれど、ビールのツマミにちょうど良くてそれなりに悪くなくまあ美味い、という、そういう味で、うん、野毛基準の及第点というか、なんというか。
しっかり食べて満腹になって、お会計1060円のところ、1500円出したら、にっこり笑って500円玉を返してくれた。
立地は野毛のWINSの目の前、野毛に中華料理屋数あれど、さすがに自宅から一番近い中華料理屋になった。安い値段、そこそこの味、豊富なメニュー、長い営業時間、なんかネタになりそうな退廃的な雰囲気、面白そうな客筋。このような店が近所に少なければ大喜びで通うところだけれど、残念ながらというか喜ばしいことにというか、この街はこういう店で溢れているのだ。だから、たぶん、時々来ることになるのだろう。