日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

『CREAM ヨコハマ国際映像2009』クオリティ高い

現代アート系の展覧会に行っても、映像作品は尺ばかり長くて退屈…とにかく時間がかかる…という印象がある。今回のヨコハマ国際映像祭というイベントも、尺が長くて見てらんないんじゃないか、という危惧があったのだけれど。先日参加した『BOAT PEOPLE Association』のクルーズも連動企画でからんでいるらしい
YOKOHAMA Canal Cruise | BOAT PEOPLE Association
YCC#5 「中秋の名月 京浜運河工場クルーズ×GRL」 | BOAT PEOPLE Association
とか、『東京スキャナー』と一緒に六本木ヒルズのオープニング企画で上映された、東京の運河を巡る映像作品『東京静脈』の監督が作品を展示しているらしい、とか、いろいろ聞きましてですね、行ったんですよ。そしたら予想に反して、大変面白かったことを書いておきたい。
CREAM ヨコハマ国際映像祭2009
有料会場は、新港ピア…横浜トリエンナーレと開国博の会場になった掘立小屋と、BankART Studio NYK、及び、東京芸大馬車道校舎の3箇所。芸大の校舎は、土日祝日だけ、完全入れ替え制の映像上映だけあり、とりあえず今日はパス。残りの2箇所を見た。あと、サテライト会場の黄金町も。もう一か所サテライト会場として野毛山動物園があるのだけれど、これは昨日見ましたね…。
野毛戸部ぶらぶら - 日毎に敵と懶惰に戦う
まずは新港ピアの会場へ。『映像が生まれるところ』と題して、テーマごとに映像作品が密集して置かれており、14テーマ57モニタ、ちょっと、ちゃんと見ようとすると目まいがする。その中で、『視点を動かす』というテーマの中に、高橋ジュンコと『BOAT PEOPLE Association』の、水上から眺めたコンビナートなどをリミックスした作品、それから横浜の空撮映像、そして野田真外による、生活者の視点の外部に置かれてしまった運河たちを水の上から静かに眺めた映像作品『横浜静脈』と『静脈列島β(2009ダイジェスト)』。これだけでご飯何杯でも行ける!そのほかにも、特殊撮影映像、実験的な映像、いろんなのがあって、適当につまみ食い。NHKクリエイティブ・ライブラリーからの作品もあり。
八谷和彦は、Twitterを使った作品。この人、新しいものに飛びつくの好きだよな…。八谷さんのタイムラインと、『megadiary』ってタグのついたつぶやきを延々と流すだけ、って展示はちょっと、どう面白がったらいいのか、迷うのだけれど…
http://twitter.com/hachiya
http://twitter.com/megadiary
http://twitter.com/search?q=%23megadiary
これは、1995年に八谷さんがやった『メガ日記』再び、という感じなのだね
[N] 「メガ日記」ツイッターを始める
Twitterとメガ日記と見ることは信じること | naohlog!
ページが見つかりません - smashmedia.jp
安野太郎の作品。あまり意味のない映像の羅列を、それを見た人が見たままに脊椎反射的に発声する声と共に見る…説明するとよくわかんないな、つまり、画面上に出てきた文字とか物体とかを、多人数が読み上げるのを一緒に聞くわけですよ。映像という情報量の多いメディアを人間がどうやって見ているのか、何を見ているのか、あるいは何を見させられているのか、考えさせられる作品。ニコニコ動画から映像を抜いてコメントだけ表示する、という、投げっぱなしみたいな作品もあり。特定の個人の作品じゃなくて、ニコニコ動画クレジットになっていたぞ。
あと、こういうの
VOICE-PORTRAIT self-introduction
YoutubeTumblrを活用した作品。なんと表現したものか。いろいろわかったようなキャプションは付けられるのだけれど、とにかく気持ち悪い。アイデンティティにかかわる気持ち悪さ。ここまででTwitterYoutube、Tumble、ニコニコ動画NHKクリエイティブ・ライブラリーと、なんか今話題の物がとにかく詰め込まれているなあ…。
この奥のシアタースペースでは各種フォーラムやライブパフォーマンスを開催。さらに奥はラボスペースとあったけれど、なんか脱力し過ぎるゆるーい空気の実験スペースだそうです。ほいでねえ、横浜トリエンナーレに続いて…というか、またしても会場でもらえるパンフレットの情報量が少ないのよねえ。家に帰ってきて参照しようとしても、作者名だけ羅列してあるだけなので、あんまり役に立たないよ…。そもそも、どういうイベントだかよく理解できなくて、行くの躊躇したイベントなんだよね、今回の。公式ページには情報があるんだけれど、妙に重くて見にくいし…。すごくクオリティ高くて面白いイベントなんだから、もうちょっとなんとかしてほしい…。

さてさて、次にBankART studio NYKへ。まず最初に、1階にあるクリスチャン・マークレイの作品『ヴィデオ・カルテット』。これすごい。これだけで1000円くらい払ってもいいと思った。横に4つ並んだ大スクリーン。そこに、古今東西の映画の演奏シーン、叫び声、タップ、いろんな音の洪水が見事にリミックスされて、一つの音楽作品になっている。
http://www.ifamy.jp/programs/single/226/
見事な出来に、結構長い作品なのに、ずーっとワクワクしながら見てしまった。ほとんど麻薬的。映画好きな人には絶対お勧めしたい。いろんな映画から、電話しているシーンだけ抜き出して繋ぎ合せた作品、ありましたよね昔。あれみたいな感じなんだけど、4つの画面の構成の妙が凄くて、そして音楽の力は凄いね。1回見て、すぐに繰り返しもう1回見たくなってしまった…。
山川冬樹の作品
http://www.ifamy.jp/programs/single/235/
このアーティスの父親、山川千秋は、フジテレビのニースキャスターだった人なのですね。ニースの音声と個人的な記録音声をつなぎ合せた作品。長いので途中で辛抱できなくなるかもしれないけれど、ちょっと、余裕があったら是非付き合ってください。途中でね、ニュースキャスターを逸見政孝に引き継ぐシーンがあるんですよ。その時は、あ、逸見さんだ、くらいしか思わないわけね。山川千秋が仕事中に『声がかすれるようになり』そして食道癌を患って死ぬってことを、私知らなかったから。いや、そこの部分は本題ではないのだけれどね。椹木野衣の批評があったのでリンクしておく
http://precog-jp.net/2006/09/alive_art_matsuri_vol2_the_voi.html
アルフレッド・ジャーの作品は、まあ不親切。途中入場はできません、という8分あまりの映像…なんだけど、出てくるのは英語の字幕と、そして一瞬だけ、1枚の写真のみ。ちとコンセプチュアルすぎるけれど、その写真というのが、あれ、『ハゲワシと少女』、なのです。
ケビン・カーター - Wikipedia
この作品について…ではないけれど、アーティストのインタビューがあったのでリンクしておく
ART iT: アルフレッド・ジャー インタビュー
そのほかいちいち説明しないけれど、立ち並ぶ墓標のようなシャンタル・アケルマンの作品など、極めてクオリティの高い映像作品がたくさん。事によっては横浜トリエンナーレより面白いんじゃないの?ってのは、さすがに言いすぎのような気もするけれど、まあ。時間に余裕を持って行った方がいいですね。さっと見るだけのつもりが何時間も経っていたから…

それから最後に、黄金町へ。1の1スタジオで上映している作品は、そう、黄金町が阿片窟として登場する黒澤明の『天国と地獄』へのオマージュ的な作品。
http://www.ifamy.jp/programs/single/470/
正直、ちょっとしたお遊びの域を出ない…という気もしたけれど、ある意味、黄金町バザールという舞台で、ちゃんと踏み込んでおくべきところに踏み込んだなあ、という感慨はある作品。映像の最後、撮影が終わって、スタッフが『何か羽織ってね』とジェスチャーするシーンがあるんだけれど、これも実際の撮影に基づいているのだね

行き交う車と雑踏、エキストラはみな夏姿。半袖あり、浴衣ありで一月末の夜のロケは零度近くになる。犯人の山崎努は、その寒さの中で汗ばんだ顔を作るため冷たい水をスプレーでかけられ、口には氷を含まされた。吐く息が白くならないためである。(山崎談・著者インタビュー)
黒沢明監督作品 天国と地獄を歩く (下)

今回の映像は、別に半袖着ててもそれほど寒くない時期に撮影されているはずなんだよね…(笑)だから、本来の映画での『冬だけど夏のシーンを撮影する』というロケがもう一回転して『夏に“冬に夏のシーンを撮影する”シーンを撮影する』ということになっている、という。本末転倒なお遊びとも取れる。
ただ、過去と決別したようでいて、過去の遺産を活用して…と言えば良い言い方だけれど、ある意味求めるアイデンティティの一部として過去を利用している、そこで特徴を出す必要がある、そういう危ういバランスの上で生まれ変わろうとしてる黄金町の文脈を非常に上手に捉えた作品なのかもしれない、とも思った。
管理している人もいないような元ちょんの間の暗い2階で見るんで、若い女性と二人だけになっちゃって、若干気まずい空気ではありました…。出てくればすでに日は暮れていて、裏路地の赤提灯が灯っている。いま見ていた映像はなんだったんだろう?と不思議な感覚に包まれる。
正直、全体的に分かりやすいイベントじゃないけれど、クオリティは高いので、映像分野に興味のある人はぜひ行っていただきたい、と思いました。私はパスポートを買ったので、芸大の馬車道校舎で上映される作品とか、ちょくちょく見に行こうと思います。海岸通団地のドキュメンタリーとか、ツール・ド・フランスをテーマにしたエルメス提供の映像作品とか、ちょっと興味深い。
…あ、なんか、藤幡正樹さんがひと悶着しているみたい
ヨコハマ国際映像祭2009 行ってきました。 : *885* Fever
http://www.art-it.asia/u/ab_fujihatam/CxKj0h8fsPO2Utkl4XmY/
個人的な感想を言うと、『ただの技術のデモ』的なものに見えてしまったなあ…