日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

『横浜都心部コミュニティサイクル社会実験』に参加して、なぜか鎌倉まで

現在、横浜市国土交通省が、社会実験として、横浜都心部でレンタサイクルをやっている。期間は11月30日までの限定
http://www.city.yokohama.jp/me/toshi/toshiko/ccs/
システムはこうだ。横浜の都心部に、サイクルポートが10か所ある。利用者はそのいずれかに行き、まず利用者登録をして、登録料300円とデポジット500円を支払う。そして自転車をレンタル。自転車は10か所のどこで借りてどこで返しても良く、1回の利用が1時間以内なら無料、1時間を超えると、1時間ごとに100円かかる。
返却するたびに清算を行い、一日のうちに何回でも借りることができる。利用時間は1回ごとにリセットされるので、1時間以内の利用を何回繰り返しても、登録料以外はかからない。1日の最後に返却して申し出ると、デポジットの500円が返却される。
1日の登録だと300円だけれど、期間中通しの登録だと1000円で出来る…。というような仕組み。自転車好きの横浜都心部在住民として、とりあえず利用してみよう…と思い立ち、朝飯を食って出掛けて、サイクルポートのひとつ、桜木町の駅に行ってみた

駐輪場の一画に、テーブルが一つ、ぽつねんとおじさんが一人。レンタル用の真新しい自転車が何台か。高架下の薄暗さも相まって、なんだか雰囲気からして大丈夫だろうか、という感じだけれど、おじさんと話してみて、ますます、大丈夫だろうか感が増幅される。自転車を借りたいのですけれど…と申し出て、必要事項を記入していると、おじさん、システムを説明するよりも前にアンケート用紙を渡し
―今回の、社会実験なんですけどね、とにかくいろいろ問題が多くて…あとで感想などを書いていただけますか、お願いします
開口一番それか(笑)。以降も、システムの説明もそこそこに『10箇所じゃ少ないと思うんですよ』『事前の説明だと、社会実験ってことで1時間をちょっと過ぎてもお金取らなくても…なんて言ってましたけど、ICカードで自動登録するんじゃ無理ですよねえ…』『横浜に買い物に行くのに利用しようにも、一番近いのが新高島のサイクルポートですからねえ…遠いでしょう』『1時間以内は無料…って言われても、食事してたら1時間くらいすぐに経ってしまうでしょう、時間ばっかり気にしちゃいますよね』『社会実験って言って、本番のサービスがいつ始まるのか聞いても、市の人ははっきりしないし…』『サイクルポートの場所、みんなわかりにくいんですよね…』『とにかく、10箇所は少ないでしょう、そう思うでしょう』などなどなどなど。終いには『係りが一人しかいないから、トイレ行く時も大変なんですよ』『ここ、あんまり治安良くないんですよね…』など、そんな愚痴を聞かされても、という様相になってくる。

はははあ、などと適当に相槌を打ちつつ、普通なら早く貸してくれないかしらん、と思うところだけれど、こっちはそもそも、社会実験に参加しているつもりなので、まあ、これも面白いかな、と。
で、借りる自転車を選ぶ。今回、用意されているのは2種類


ひとつは、26インチの、頑丈なのが取り柄です、という感じのピンクの自転車。外装6段変速。過剰なほどスポークが多い。これかな
http://www.jitensyakan.com/DSGS667.html
またまた、係りのおじさん、『長く使うからって、頑丈第一みたいな自転車で…重いんですよねえ…』ははあ。もうひとつは20インチの小径車で、こっちはメーカーなど失念。3段変速はついてる。
とりあえず、26インチのほうを借りる。おじさん、『どれにします?』と言った後で、しゃべるのに夢中で『どれだったっけ、番号忘れた…』とか、お金受け取り忘れそうになったり、ドジっ子ぶりを遺憾無く発揮していただいたが無事に借り出し。で、走りだしてみれば、なかなか走りやすい。快適。結構遠くまで走れるんじゃないか?と思い、まあ、鎌倉街道をですね、走り始めたわけですよ。で。

あらまあ、北鎌倉。速度計などはついていないけれど、18kmくらいの距離を1時間弱で来たので、なかなか走れる自転車じゃありませんか。鈍足なローディー追い抜いたりしてきたし。これなら、鎌倉はともかく、三渓園あたりまでのサイクリングはまったく問題がないでしょうね。というわけで鎌倉まで来たので、とりあえず建長寺

の駐輪場へ

奥に見えるは鎌倉のレンタサイクル。鎌倉と横浜のレンタサイクルがご対面。ほんとこれ、目立つしゴッツイ自転車だなあ…。タイヤも太いし。
さて、秋の鎌倉。紅葉はまだだけれど、人出が多いことには変わりない。メジャーどころに行っても疲れるだけなので、ちょっとマイナーな場所に行きましょう。駅前のマクドナルドで腹ごなしをして(最近、週一でマクドナルド…)、鶴岡八幡宮の東の方へ。鎌倉宮からさらに奥に入り、車のすれ違えないような谷戸の奥にひっそりとある覚園寺(かくおんじ)


この寺、自由に境内を歩きまわれないし、写真も撮れないのです。1時間に一回、決まった時間にスタートするツアーに参加し、お寺の方に案内して貰って回らないといけない。自分が参加した回は15人ほど。
覚園寺 - Wikipedia
重要文化財の薬師堂の建築様式、重要文化財ながら作者不詳の薬師如来日光菩薩月光菩薩十二神将、いずれもなかなか見事。本当に、あまり手が入らず大事にされてきたんだなー、というのが感じられる。その後、別の個所から移築された古民家や、洞窟内に安置された十三仏、黒地蔵などを見て回る。お寺の方の説明も、建築様式、仏像の由来、鎌倉時代から江戸時代、そして明治時代に至る民間の信仰の形態変化や行楽との関わり…などなど、なかなか分かりやすくて面白く、50分あまりのツアーはなかなか有意義だった。かなり渋いスポットですが、静かでよい感じなので、一度は訪れても良いかと。まだ紅葉はまったく色づいていなかったけれど、紅葉の季節もとても綺麗そうだった。
また自転車に乗って、鎌倉宮にも行ってみたが…。わたし、この神社よく知らなかったんだよね。でも神社の来歴を見るに、ああ要するに、明治新政府が御一新後に、権威付けのために無理矢理作った神社なのだなあ、というのがよくわかり、ありがたみの薄い神社であるなあ、と思った次第。朝敵足利尊氏に殺された護良親王後醍醐天皇の皇子を祀った神社なのですね。はい、適当に次へ。
さらに奥のほうにはいり、今度は瑞泉寺



建物は見るべきものがないけれど、奥まった場所で趣があり、庭園も史跡になっていて、さらに

裏の山に続くあたりが不思議な雰囲気があり、なかなか良かった。
さて、そろそろ帰りましょう。また北鎌倉の駅前を通り、鎌倉街道を北上する。途中、妙に重くなったような感じがして変だな?と思ったら、空気がかなりぺこぺこ。しかしパンクではなく、ちゃんと締まっていない。はじめからこうだったのか、誰かに悪戯されたのか。はじめっからぽいなー。まあ、極太の頑丈なタイヤなので、ちょっと空気が減っていてもそれなりに走れたけれど。発砲事件のあった吉野町を過ぎて、伊勢佐木町では火事で大出動している消防車の群れを眺めて、返却は関内のサイクルポートにしてみた。
ここの人もなんだか曖昧模糊とした人で、まあこれは桜木町の人が悪いのだけれど、自分が実際に借りた自転車と借りたことになっている自転車の管理番号が違うらしい。『困ったな』と言われても私も困る。貸出時間が5時間弱だったので400円を支払うために500円出したら、『おつり、は…100円でいいですよね…』うーん、私は200円でも300円でも別にいいのですが。デポジットのお金は一日の最後に返ってくるんだけれど、それが返すような返さないような話になって、壷算がはじまりそうな予感になってきたので、とりあえず引き上げ。ほんとはここで別の自転車を借りようと思ったのだけれど、これ以上は混乱の極みになりそうだったので…
それにしてもこのシステム、ちょっとどうなのだろうか。利用の仕方としては、1時間に迫るごとに、サイクルポートに寄り道してタッチしてクリア!もう1時間大丈夫!……って使い方を想定しているわけじゃないよね。おそらく、本来の狙いはこうだ。自転車をレンタルしても、都心部の足だったら、実際に乗っている時間よりもどこかに置いている時間のほうが長い。そして、放置自転車になって邪魔になってしまう。だったら、サイクルポートをたくさん作り、利用者はサイクルポート間の足として自転車を利用する。言わば、サイクルポートをバス停に見立ててシャトルバスが縦横無尽に走っているイメージ。こうすれば、多くの利用者が自転車を共有でき、自転車の放置も起きない…。
それはわかる。そういう利用をしてもらうために、1時間以内なら無料!なのだな。だから、それを実現するためには、確かに10箇所じゃ少ないんだな。著名な観光スポットまでは歩いて苦じゃない距離にサイクルポートが完備されているようにしないと、目的はきっちり達っせないんだな…。そう思うのでした。
さて、関内で自転車を返却した後、てくてく歩いて大桟橋へ。ここにもサイクルポートが

ここのサイクルポートは、まさに、さっき言った使い方にがっちりマッチした場所だと思う。大桟橋や象の鼻に来る人たちがここに自転車を返却し、ここから出発する人たちがまた借りていく。自転車が少ない台数で有効活用できる。ここのおじさんはシャッキリポンとした人で、スムーズに借りることができた。こんどは小径車を借りてみました

うん、あんまり早く走るのは向かないけれど、小回りが聞いて、街中をちょっと走りまわるにはとてもいい感じ。


夕暮れ迫るみなとみらいを走り、新高島へ


自転車と、カードも返却し、500円を受け取る。ここの担当のおじさんも、曖昧模糊とはしていなかった。最初の人が強烈だっただけなのでしょう…。
さて、感想。サイクルポートの数をもっと増やして、主要なポート以外を無人化して、営業時間をもっと長くすれば、結構使えるシステムになるんじゃないかな…と思います。
で、なんで最後、新高島に返却したかと言うと、先日、桜木町の駅前に愛車を放置して回収されてしまったから、受け取りに来たのですね…。ご迷惑をかけてすみませんでした、横浜市の方…。食料を買い物して帰宅