日毎に敵と懶惰に戦う

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横浜市民ギャラリーあざみ野『イメージの手ざわり』展

実家で起きて、朝飯食って地下鉄を乗り継いであざみ野へ。各方面でなかなか評判の良い『イメージの手ざわり』展に行く。実は横浜市民なんだけれど『横浜市民ギャラリーあざみ野』に行くのははじめて。古い公民館か何かを有効活用した、小さなギャラリーでもあるのかなー、と思っていたんですよ

ふおお、なんだこれ!こんな立派な建物だったの?

知らなかったわ―、不覚だったわ―。今後はなんかあったらちょくちょく通うことにしよう。さて、今回の展覧会は、今年からはじまる『あざみ野コンテンポラリー』の第1回として、“映像”をテーマとした展覧会であるとのこと。
http://artazamino.jp/organized-events/special-exhibitions-2/contemporary01/
映像がテーマの展覧会というと、ダラダラといつ始まっていつ終わるのかワカラナイ映像から映像を渡り歩く…という、端から敬遠したい方も多いような内容を想像するのだけれど、今回の展覧会はそうでは無かった。6組のアーティストはそれぞれにオリジナルで、インタラクティブな要素も多く、とても楽しめる内容になっていたのです。
一番印象的なのは田村友一郎の作品。展示室内に置かれた本物のタクシーに乗り、その前面の映像を見る作品。この作家は、先日のメディア芸術祭にもgoogle street view を使った映像作品を出展しており、賞を取っていたのですね。ほいで、このタクシーから見える映像も、あざみ野からはじまってあざみ野に終わるのだけれど、その間が世界各地のgoogle street view の映像になっている。タクシーに乗って見るその映像も、まるで世界を旅しているようで面白いのだけれど、この展示の本質はあまり、そこの部分にはない。
タクシーなので、ちゃんと運転手がいる。この運転手をボランティアのサポーターの人が勤めていて、この展覧会の企画段階からいろいろ関わっているそうなのですね。タクシーに乗り、他の鑑賞者と一緒に相乗りし、そのサポーターの人と会話を交わす。タクシーと言う密室空間、なんとなく気まずいような雰囲気、窓の外に流れる不可思議な続き方をする風景、いろんな違和感を抱えたタクシーの旅を体感する作品。その身体感覚の面白さ。堪能しました。
1階にはほかに、plaplaxの、さまざまなオブジェに触れると影が動き出す作品も面白い。目覚まし時計に触った時は思わずビクッとなってしまった。インタラクティブで楽しい作品。志村信裕の映像作品は、まさに映像が映し出されるスクリーンの『手ざわり』を感じさせるような映像。どこに映像が投影されるのか、それに対する感覚のとても鋭い作家さんで、黄金町の路上、長者町などでも見ましたね。
2Fに上がってある松本力のアニメーション、大きな6つの画面に投影されるのそアニメーションは極めて豊饒なイメージの拡がり、ほんとうに豊かなんですね。発想が留まらずに次から次へと飛んでいく。横溝静の、老ピアニストが弾くショパン、眠る人の写真、そのイメージと音の世界の、時の流れの中に取り込まれていくような、静かなさやめきが心を満たす。川戸由紀が作り出すイメージの王国も不思議な魅力に惹きこまれる。
とにかく、非常にバラエティの富んでいる、期待以上の展覧会でした。これ、今日で終わりなんだね、会期が短くて勿体ない!次回以降の企画も是非、素敵な展覧会にしてほしいと思いました。