日毎に敵と懶惰に戦う

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『写楽』『香り』『レンブラント』

本日は朝から晩まで上野の日。9時過ぎに電車で出て、上野駅へ。上野はパンダもあって最近は前にも増しての混雑で、上野公園は工事中で余計動線が混乱しているけれども、ともかくにも東京国立博物館、パスポートを使って写楽展へ
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海外からの貸し出し品も多く、震災以降、開催が危ぶまれたとも思いますが、若干の点数を除いてしっかり展示されていた。まさに役者は揃った、で、よくぞここまで揃えたなあ、という展覧会。見せ方のために、同じ作品を3つも4つも出展する勢いが凄い。摺りの違いなどをじっくり間近で見たい展覧会だから、ぜひ、多少なりとも空いているうちに行ったほうが良いでしょう。テレビでもどんどん紹介される予定なので、すごく混むと思います。
存在が確認されている写楽の作品146点のうち、門外不出、紛失など、展示不可能な142点がすべてある。展覧会の後半は、この142点が時代順にすべて並べられている。後期に行くに従って、迫力がみるみる無くなり、摺りも安っぽくなるのがよくわかるのですね。写楽以前…写楽の大首絵が決して特異点なのではなく、150年まえからの歌舞伎を描いた浮世絵の変遷を辿ることで時代の流れがわかる展示や。蔦重、蔦屋重三郎のプロデュース能力に焦点を絞った展示もあり。また、おなじ役者を描いた、他の絵師との比較など、企画構成も秀逸で。寛政6年の吉原細見が見られたのも嬉しかったな。とにかく、見どころたっぷりの展覧会でした。あと、沢村宗十郎ってのは、よっぽどのっぺりした顔だったんだなあ、と、何度も思いました(笑)いずれにしろ、会期も短いし、行くならお早めに!
常設展もゆっくり見てから、さて昼飯。東上野方面にぶらっと降りたけれど、やはり日曜日、あんまり空いている店が無い。前からちょっと気になっている店に入ったら、入った瞬間、これは失敗かも…という予感がして、そしてそれは見事に的中して。チャーハンを頼んだのに、厨房からは鍋を振る音もろくにしてこず。刀削麺は、麺はまあこんなんか(関内のあの店と比べると雲泥の差ではあれ)、と思いつつ、スープが酷い。ウェイパー溶かしただけでももう少しまともじゃない?浅草の300円のラーメン屋のほうがまだマトモだよ?…うーん。ちょこんと入っていた焼き豚に可能性の片鱗は感じられたので、夜来るとそれなりの店なのかもしれませんね…。
また上野のお山へ。東京藝術大学へ。Takさんのコーディネートで、熊澤弘先生と一緒に、東京藝術大学美術館の『香り かぐわしき名宝展』と、国立西洋美術館で『レンブラント 光の探求/闇の誘惑』を見る機会に恵まれる。まずは、藝大の講義室でレンブラントについてのお話…藝大の校舎に入るのははじめてだよ!レンブラントの光の使い方について、興味深いお話を沢山伺うことができた。ここで、一旦、東京藝術大学美術館の『香り かぐわしき名宝展』を
http://kaori.exhn.jp/top.html
実はどのような展覧会か、明確なイメージなしに行ったんですが、凄いですね。香りをキーワードに、仏教の伝播に重要な役割を果たした香りという観点、そして香道の道具から、香りにかかわる絵画の名作、貴重なお宝がずいぶんと揃っている。とくに聞香というと源氏香くらいしか知らなかったんだけれど、それ以外にもいろいろあり、実に豪奢な道具の数々や、それらを記録した書籍資料の数々にたいそう昂奮してしまいました。香炉、香合の展示の充実ぶりにも目をみはる。
『香り立つような』名画の数々もあり、やはり、上村松園鏑木清方は格別であるなあ。ふんわりと舞い降りて周囲にかぐわしい香りを放っているような上村松園の美女、すっと振り向いたなりの、匂い立つような鏑木清方の美女、たまらんですね。『香り』をよりどころになんでも集めて節操が…という印象も多少受けますが、大変充実していて、面白い展示でありました。常設のほうも、高橋由一の『鮭』をはじめ名品ぞろい。
さて、思いのほか時間を過ごしたぞ、急いで西洋美術館へ。次はレンブラント
レンブラント 光の探求/闇の誘惑 —版画と絵画 天才が極めた明暗表現—
大変な人出で、混雑しているレンブラント展。120点以上の出展一覧を見ながら、熊澤先生に見どころをいろいろ教えていただいて、いざ中へ。版画が中心の展覧会であるけれど、油彩も数多くあり、特に『アトリエの画家』の光の表現が素晴らしく。確かに人が多いのだけれど常にどの画の前も満員で…というわけでもないので、近寄ってしげしげと、その表現の仕方を見てしまった。事前にお話しを聞いていると、やはり見え方も段違いになりますね。版画の数々も、その陰影の表現の仕方、直線の組み合わせだけでなく、波線や破線の使い方の妙味を間近でじっくり観察。
今回の展覧会、同じ作品を西洋紙と和紙に刷ったものの比較、あるいは没後に刷られたものなど、同じ作品が違うヴァージョンで数多く展示されており、比較しながら見ていくと非常に面白い。和紙に刷られた場合の明暗の表現のふかまり(紙のやわらかさや滲み、もとの黄色っぽい色のためですね)が凄い。
そして圧巻は、『3本の十字架』『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)』のステート違いの展示。レンブラントは版画を制作する際に、一旦刷りを行った後、さらに版に手を加え、また刷っては手を加え…ということを度々行ってきた。これをステートと言いまして、『3本の十字架』では5つ、『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)』では、なんと8つのステートが確認されている。
今回、ステートの違いや刷った紙の違いなどで『3本の十字架』では4点、『エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)』は5点が展示されている。それぞれ、別々の所蔵先のものであり、これだけのステート違いが一堂に会するのは、空前絶後のことであると言う。いやほんと、並べてみると、まったく違う。あとになるほど基本的に『濃く』『暗く』なっていくのだけれど、銅版画の特性で、一旦消して別の部分を描いて…みたいなことも行われている。
レンブラントは生前から版画のコレクターが存在しており、レンブラント自身も、そのコレクターの存在をかなり意識して作品を作っていたのでは、ということ。こうして『ステート』『紙』の違いを見ていくと、むくむくと、最近のAKB商法などが思い浮かぶのでありまして(笑)『また別のステート作ったよー、しかも、和紙の限定版と通常版と両方出すんだって!』『でも全部買うんだろ?』『あたりまえだよ!』みたいなコレクター同士の会話が、まああったかどうかはわかりませんけれども、聞こえてくるようで大変に面白かった。いやとにかく、作品数も多く、比較しながら見ていくと大変面白い展覧会で、少しでも空いている時間を選んでじっくり見たい、という内容でした。2時間くらいいたけれど、時間足りなかったなあ。
終了後、上野のお店に行って打ち上げ、ビールばかりがぶがぶ飲んでおりましたが、非常に充実した美術三昧の日でありました。いつも企画してくださるTakさん、そして熊澤先生、ありがとうございます。
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「香り かぐわしき名宝」展 | 弐代目・青い日記帳
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