日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

川村記念美術館『中西夏之』展、千葉市美術館『須田悦弘』展へ

夜の仕事あけの朝。まだまだ暗い5時前に勝鬨橋を渡れば、築地の明かりが見える

ターレー行きかう築地場内へずんずん進み、かの有名な寿司大に行ってみれば、なんと、5時からこの行列。さてどうしよう朝ご飯

となりの八千代のカキフライ定食…は、月曜日に牡蠣をさんざん食べなければ一も二もなく、というところだけれど。そこはパスして、やはり場内の『かとう』で朝飯。刺身五点盛りの、分厚いまぐろとぶりも、ねっとりしたイカも、甘酢のしめ加減が絶妙なアジも良かったけど、イカ大根の味のしみたのが素晴らしかったわあ…。
ちょっと仮眠して新橋駅に向かい、地下ホームからラッシュとは反対方向の電車に乗ってぐっすり寝るうちに千葉、乗り換えて佐倉にたどり着くのでありますけれど、まだちょっと最初の送迎バスには時間がある。お天気は良いけれど寒いのでコンビニで時間をつぶして、川村記念美術館行きのバスへ。美術館で降りたら『美術館ですがよろしいですか?』と聞かれた…確かにこのバス、大日本インキの研究所に向かう人も乗っていて、美術館の次にそちらに止まるので、平日にスーツ着た人はそっちに用事があると思われて当然ですわなあ。それにしても、よい天気!

本日はこちらで、中西夏之先生の展覧会。いや、別にこれはほんとうに揶揄的な意味は何もなく、どうも、中西夏之さんは先生とつけたくなってしまうという…。
開催中の展覧会 | DIC川村記念美術館
今回の『韻 洗濯バサミは攪拌行動を主張する 擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑』は、3つの大きなシリーズを一堂に展示したもの。特に、新しい『擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑』については、横浜トリエンナーレなどでもおなじみのシリーズだった。正直私、中西先生の絵画理論はよくわからないですが、今回の展覧会は素直に良かった。企画展示室は2つの部屋からなり、前室は歴史の刻まれた地層のような『韻』のシリーズ、そして奥に進むと、光降り注ぐ部屋に点在するキャンバス、その白と紫が作り出す空間を、絵画の間を縫って彷徨う感じとなる。平面の絵画なんだけれど、キャンバスをたてて部屋の中に配置することで、空間としてのインスタレーションになる。
『擦れ違い/遠のく紫 近づく白斑』シリーズの最後の作品だけ、少し色合いが違う。ほかは白と紫がまさに強調されているのに、それだけ、少し黄銅色がかっている。それが、前室から続く縄文的な土の色をした過去の作品と連環していく。そのつながりにハッとした。
9:30のオープンと同時に入り、ロスコ・ルームもニューマン・ルームも独り占めの贅沢だったのだけれど。ロスコからニューマンへ、絵の具がまだ匂うような濃密な空間から飛翔して光の空間への繋がりが、中西夏之展の手前と奥の部屋、2つの部屋の関連とも同期しているようで、その点もとても良かった。
改装後のこの美術館に来るのはあのロスコ展以来
川村記念美術館『マーク・ロスコ』展の画像を貰ったよ - 日毎に敵と懶惰に戦う
その時はシーグラム絵画は、まさに今回、中西夏之展をやっている企画展示室だったので、ロスコ・ルームで作品を見るのは実ははじめてだったのだ!なんと。本当に、まだ絵の具が匂っているような、周囲の壁をすべて赤銅色に囲まれた濃密すぎる空間にはくらくらしたなあ。ずっと眺めていても飽きない、不思議だよね。
ほかには、橋本関雪秋桜老猿』の、こちらをじっと見つめる視線から目が離せなくなり、これも大変、良かった。レンブラントもエルンストもポロックも穴が空くほど覗き込んで、とにかくまったく、川村記念美術館は素晴らしい。快晴で澄んだ空気が実に心地よく、気持ちが改まるのだった。帰りのバスは広々とした風景を眺めながら

佐倉駅に戻り、JRで千葉へ。駅前のケンタッキーで昼飯を済ませ、歩いて千葉市美術館へ

こちらは須田悦弘展を開催中
千葉市美術館
土日だと、川村記念美術館との間に送迎バスがあるので、それを利用すると移動が便利でありましょう。チケットの半券提示で、相互割引もあるよ(詳しくは上記のリンク先を見てね)
さて、須田さんと言えば、その超絶技巧の木彫りの植物たち

本当に繊細で、本物にしか見えない植物たちに、ただただ、息をのむばかり…。遠くからでなくて、息が吹きかかるような近くまで寄ってみることができる。そして、この作品を観賞するための空間も作りこまれていて、たとえば、細い、白い通路の先にあるこの作品

この白い通路もいわば『ハコニワ』であって、作人の一部なのである。別の作品も

このように、どんな場所でも、まるで茶室のようなミニマルな作品鑑賞空間が作り出されてしまう。木彫りの花ひとつが、体感型インスタレーションになる、驚きの体験。実物で味あわないとわからない。ほんとに息を殺すような近さで愛でられて贅沢さ

大きな作品をしっかり作られた展示空間で見る以外にも、展示室の中に隠されたように点在している作品もたくさんあり、そっと野に咲く花を探すような宝探しの楽しさもある。

そして今回『須田悦弘による江戸の美』展も同時に開催されていて
千葉市美術館
千葉市美術館のコレクションの浮世絵などを楽しむことができるのだけれど、こちらにも、須田さんの作品がそっと添えられたりしていて、その遊び心も満点なのですよ。餌をついばむ鳥の絵の先に、木彫りの米粒が
置かれていたり…ほとんど写真撮影自由だからもっとアップしたいんだけど、自分で床から壁から天井から探すのが楽しいのだし、場所がはっきりわかっているのもこれ以上は実物見て欲しいのですよ!というわけで、大満足の展覧会でありました
美術館を出て、徹夜明けだしさすがに帰ろう…というところでうれしいお誘い、国立近代美術館に向かってフランシス・ベーコン展のプレス発表に参加させていただき(これはまた後程)帰宅したのでした
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