日毎に敵と懶惰に戦う

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無人島プロダクション 風間サチコ展『没落THIRD FIRE』に行くのこと

日曜日。有馬記念でいつも以上に混雑の野毛の街を通り抜け、駅前の競馬の話題しか耳に入らない床屋で散髪。おっさんしかいないと思ったら若い理髪師さんがいて、早くて良い仕事で1995円。駅そば、桜木町の川村屋で出汁の美味しい天ぷらそば360円にて昼飯を済ませて京浜東北線に乗車、東京駅で半蔵門線に乗り換えて清澄白河に向かう。
Mujin-to Production
無人島プロダクションで開催中は、風間サチコの『没落THIRD FIRE』。社会への鋭い批判眼を持った大きな木版画を制作する風間サチコさんですが、今回の『没落THIRD FIRE』、THIRD FIREとは、第二の火、電気に続く第三の火、まさに原子力のこと。大きな3つの木版画が会場の三方から迫ってくる展覧会。
『第三の火』というのは、別に風間さんが独自に名づけた名前ではない。原子力開発の黎明期に、期待と希望を込めて名付けられた名前。今回の展覧会、単に今回の事故の現象面を表現しているだけではなく、原子力が戦後、“平和利用”として日本にもたらされた経緯から、現在のこの事態へと至る、壮大な歴史画の様相をも呈している。
「獄門核分裂235」では、キン肉マンのサンシャインマンのような…国会議事堂、旧内務省ビル、警視庁ビルを従えた経産省ビルの周囲を正力松太郎ら6人がぐるぐるとまわる原子核を為し、「噫!怒涛の閉塞艦」はフクイチと東電本店を載せた戦艦がまさに大津波に襲われ、「黎明のマーク?」では、福島第一原発一号機の格納容器が、掘り出されているのか、埋められているのか。それらを中心に添えて、周囲には多くの歴史的事象のモチーフが描かれ、起きたこと、起きてしまったこと、これから起きることが歴史の文脈と強い関連性を持って迫ってくる。
原発を正鵠に告発する力強さ、確かな木版画の力量と大画面の迫力・インパクト、そんな中にあるユーモアとセンスの良さ、そして、それぞれの作品は、満鉄やら、日本という戦艦を描いてきた作家の、震災以前からのブレの無さと強さ…しかしてその作家ご本人、この日は会場にいたんだけれども、小柄でカラッと明るい女性で、しかしバイタリティにあふれている方で、とにかく会場全体のエネルギーに度肝を抜かれたのです。3つの大作は、さながら雄大な歴史画のようであり、過去の亡霊に突き動かされる原発という制御不能の怪物を描いた宗教画のようでもあり、また戦争画のようでもあり、わたしたちに記憶と記録を迫るトラウマ級のモニュメントでもある。
一番の大作、「噫!怒涛の閉塞艦」は、以前に文化庁お買上げになった作品とほぼ同じサイズであり、作品的にも続編の位置づけになる。これは東電に買ってもらったら?なんて言われたけれど、東電には可能な限り賠償にお金を使ってほしいから、これは買わなくていいな−、東京国立近代美術館に買ってもらおうか!なんて話を作家さんとギャラリーの方がしていた。原子力規制庁にお買上げいただして、庁舎に飾って貰うのもいいかもしれない。
3つの大作以外にもドローイングが結構あって、これがまあ、所謂風刺画なんですが、テイストがバラエティに富んでて、なにより非常にセンス感覚が良くて面白い。風刺画って、訴えたいことがともかく、センスの悪さにげんなりしてしまうことが多いんだけど、風間さんのはまったくそういうことが無い。酷いでしょー、この“落書き”、なんて言いながら、ギャラリーに展示された作品以外にもたくさん書いたドローイングを見せてもらったけどこれまた大変に面白いのだった。
木版画と言っても風間さんの場合、たくさん刷るわけではないから、関連付けて語るものでもないのだけれど。その作品の力強さ、訴える力に、民衆版画運動とか、風刺とかプロパガンダ的なものの新しい光明、可能性までも再認識させらるような展覧会だったのだ。年末年始はお休みで、新年は1月8日からの再開、強烈なインパクトの作品、多く人に見てもらいたいな、と思ったのです。
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」 無人島プロダクション - はろるど
子連れアート鑑賞日記 無人島プロダクション「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」を観てきました。
会場を出て、年明けの展示替え前にちょっと見ておこう、と東京国立博物館へ。

『中国 王朝の至宝』展が存外混んでた。いかんせん、あまり派手さはないのだけれど、見たこともないような意外な文物が数多く見られる興味深い展覧会だったな、と。子供向けに、カードバトル風の王朝対決!解説パンフ作ったりしてた。感想は以前に
東京国立博物館『中国 王朝の至宝』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
常設のほうは狩野探信の百猿図がかわいかったな。今日も海外のお客さんが多数。やはり西洋のお客さんが多い。
上野駅から地下鉄に乗り、六本木へ。会田誠展になんどめか。クリスマス前なのでカップル山盛りで、普通に並ぶと展望台にあがるまで30分待ち、さらに屋上に上がるのに何分待ちか、みたいになっていてすごいわねー。会田誠展はそれほど混んでおらず。『新宿御苑大改造計画』がじっくり読むと面白い。『新宿御苑日展。中途半端でイケてない。フェイクばかりで、地元の人の一時の慰みにはなっても、世界に誇れるものが何も無い』なんて書かれている。また、山城知佳子の『肉屋の女』は、会田誠展でずしりと疲れたあとに素通りしがちになるかもしれないけれど、これもじっくり見てほしいな。沖縄が複雑に絡み合って混沌のままズシンと重く迫ってくる。ますますもって、クリスマスにカップルで見るシロモノじゃないけどなあ。
とにかくカップルであふれる六本木の街…クリスマス前と言っても、例年、こんなに人が多かったっけ?すごいな…。東京駅のひかりビジョンも、混雑が危険なレベルで急遽中止になったりしているみたい。三連休ってのはすごいもんだな。さらに暴挙をおかし、一人で表参道へ。ここもカップルだらけである…。で、そんななか、ルイヴィトンのエルネスト・ネト展。しかしまあ、これは遊具だね…




副都心線西早稲田に出て、大学時代のサークルの忘年会に例年通り中華料理店、顔を出し、ひさしぶりな皆様と談笑。河岸を変えてまた高田馬場駅近くで飲み、時間は1時半ごろ、池袋の某ドミトリイにちょっと泊めてもらったのでした
在華坊(@zaikabou)/2012年12月23日 - Twilog