日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

第45回『日展』感想文

これまで、あまり公募展には関心がなかったのだけれど、茂木健一郎の一連のつぶやきに端を発するあれこれ
「公募展」をめぐって - Ohnoblog 2
それを機に思い出す、村田真先生の日展の感想
第43回日展:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape
第42回「日展」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape
第41回日展:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape
会田誠展でみたもの

そして、ここ数日、大騒ぎになった、日展の一部門篆刻をめぐる騒動
日展の不正について - memorandum † 樋口ヒロユキ
またそれに関連して読んだ国立新美術館の建設経緯
藤田一人連載
そんなあれやこれやが、わたしを日展へといざなうのだった。これは行かねば、日展国立新美術館
http://www.nitten.or.jp/2013special/index.html

いざ、行かねば、日展へ。チケットは通常1200円のところ、16時を過ぎれば300円のトワイライトチケットということで16時過ぎに行ったのだが…。さてお金を払おうという段になって、財布が無い!Suicaとパスポートを使って都内の美術館を廻っていたので、持たずに出たことに気付かなかった…絵が見たいのにお金が無い、私はルーベンスの絵をどうしても見たい、だけど大聖堂に入るお金の無いフランダースの犬のネロ少年のようである…。
結局、カバンじゅう漁ったら100円玉が3個出てきて、無事に日展を見ることが出来ました。美術館でコインロッカーに荷物を預けて、返却時に戻ってくる100円玉をカバンに入れておく習性が役に立ちました。日展が見れる!本物の日展だよ、パトラッシュ…。そんなに見たいか日展

日展国立新美術館の、現在開催中の企画展である、点描展以外のすべてのスペースを使って行われます。点描展の6倍のスペース。凄い。そして総作品は3,000点超!入場料が300円だから、1点10銭で見られてお得!なお、今回の賞味鑑賞時間は50分くらいだったので、1点1秒ということになります。とにかく、よく歩かねばならないので、よい運動になります。
日展は5つの部門からなります。日本画、洋画、工芸美術、彫刻、書。それぞれに分かれて、入選作品、無鑑査出品が展示されています。ちなみに、入選率は書が一番低くて9%程度、彫刻が一番高くて70%程度。細かく言うと、『書』は、応募10,229点で入選が974点。まあ、審査する人も大変だと思います。『日本画』は204/527、『洋画』は564/2,136、『彫刻』は120/171、『工芸美術』は496/856
公益社団法人 日展(日本美術展覧会)- 入選点数および審査所感
彫刻なら、頑張れば入選できるのかもしれませんな…。そして、各部門10点程度、特選になります。そこからさらに…というのがあるんだけど、今回はゴタゴタで中止になったみたいね。では、日本画から順番に見ていきましょう…
日本画。みんな、ほぼ揃いのサイズのとても大きい絵で、お金がとてもかかるだろうなぁ、大変だなぁ、と思いました。具象しかありませんが、さすがにみんな、一定レベルで上手です。見られます。20点に1点くらい、まあ面白いのがあったりします。特選の特選たる理由はまったくわかりません。この作品は、誰々の若い頃っぽいな、とか、誰々と誰々を足して3で割ったみたいだな、とか、誰々のわりとやる気のない作品っぽいな、とか言いながら見ると、なかなか楽しめると思いました。いや、みんな上手いんですよ。うん。
洋画。正直、日本画との違いがわかりません。やはり具象しかありません。絵の具が変わって、サイズがちょっと小さくなって、若干モチーフに多様性が出たかな…という気がするくらいか。あ、あと、薄着の女性の絵が多くなります。そんぐらい。そして、やはり、特選がなぜ特選かわからない。やっぱりみんなちゃんと上手いです。洋画の歴史を振り返りながら、具象の絵画技法の見本市を見ているような面白さはあります。何をモチベーションにこれを描いてるんだろう…みたいのもありますが、時々は、面白い作品もあります。あ、キャプションに黒リボンは、制作後に亡くなった方かしら…
工芸美術。分類的にはいちばんよくわかりませんが、染、織、彫金、陶、磁、ガラス…などなど、彫刻以外の立体物、なのでしょうか。これ入選でいいの?みたいな作品が一番多いのはここで、特に染と織に多いような…。特選に、特選たる理由の説明があるのは工芸美術だけで、親切です。納得できるかは別です。作品がバラエティには富んでいるので、わりと、フラフラ見ていちばん楽しめるコーナーかもしれません。面白い作品も結構あります。ただし、導線がいちばん、ぐっちゃりしてるので、ここもう見たかしら…みたいに、迷路に入り込んだような気分になります…
そうそう、結構、ポストカードも売ってるけど、売れるのかな?誰が買うんだろう…
彫刻。いちばん笑えます。凄い。点描展とほぼ同じスペースブチ抜きで、見渡す限り、裸婦、裸婦、裸婦、裸婦!いろんな色の裸婦!なんで裸婦しか無いんでしょうか。9割がた裸婦。個別の作品ではなく、会場全体を使ったインスタレーションと考えると、ある意味すごいです。ほんとにすごい。裸婦以外の作品がたまにあると、ものすごいイノベーションが感じられます。裸婦がみんな、ほぼ同じサイズでずらりと並ぶ奥のほうとか、ほんとに、なんなんでしょうか…。ここだけでも、300円の価値はあると思います。あ、特選…は、どうだったかな、衝撃的過ぎて憶えていない。
書。いちばん話題の書。そもそも、なんで日展の一部門が書なのでしょうか。ならいっそ、琴棋書画を日展に入れちゃえば良いのでは。応募総数1万点超、入選は1割以下、何段にも重ねて展示空間にみっちり並ぶ書、書、書…やはり、展示を見ても異質な感じがします。ここだけで1,200点程度あり、ざっと流して10分くらい…。すいません、私にはやはり、書はまったく不明なので、コメントのしようがありません。ただ、特選が、いちばん特選っぽかったのは書かな、と思いました。素直にいいじゃん、と。勿論、1,200点の中に改めて混ぜられたら…わかんないけどね…
こういう感想もむべなるかな

いまさらすぎて、記事になることに驚いた。ぶっちゃけ会派ごとに価値観が違いすぎて、公平な審査なんて無理。割り振りは、会派ごとの棲み分けという意味合いが強い
はてなブックマーク - 日展書道「篆刻」、入選を事前配分 有力会派で独占:朝日新聞デジタル

で、まとめ。とにかく、一度も見たこと無い方は、16時以降の300円でも、無料の11日にでも、見ることをお勧めします。一度見ると、きっと、いろんな発見、得られる知見があると思います。何度も見ても発見や知見は無いかもしれませんが…みんな上手だし!たぶん、ひとつひとつ見ると、感想も変わるんです。3,000点もまとめて見るとなんか感覚おかしくなってきますがね…。そういう見方はあまりされないのかな

あ、日展、在華坊賞をひとつ進呈。日本画、評議員 坂本幸重さんの『鮭』です。新聞紙の上に鮭が載ってる…んですが、よくよく見ると新聞は聖教新聞で、細かい字が全部みっちり偏執狂的に描き込まれていて、悪魔だサタンだとか書いてある!色使いとかもわりと面白かったし、いちばん心がざわめいた作品でした。ちなみに坂本幸重さんは、創価学会芸術部員の方ですね…。『人間文化の華ひらく 創価学会芸術部体験集』という本に、『自分に勝ちゆく画家を目指して』という文章を書いてらっしゃいます。同じ本には、宮島達男さんが『人として蘇生してから始まった芸術への道』という文章を…
追記:坂本幸重画伯は『新聞紙の上に生き物』というモチーフ、今回と同様の鮭含めて、イカとかよく描いているようだ。基本的に下敷きになっているのは聖教新聞なのだが、海外研修成果の発表では海外紙である模様。去年も鮭がモチーフで、タイトルは『星星』であったようだ…
日展を観賞して ~好みで選んだ優秀作品~|Totoronの花鳥風月


……というわけで、第45回日展国立新美術館で12月8日終戦開戦記念日まで。その後、全国を巡回いたします。