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東京都現代美術館『東京アートミーティング(第5回)新たな系譜学をもとめて‐ 跳躍/痕跡/身体』

展覧会|東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
野村萬斎が総合アドバイザーを務め、身体表現をテーマにして、能狂言からバレエからダンスから現代演劇からスポーツから、さらにはエルネスト・ネトに白髪一雄まで、ハイクオリティな作品が揃っている非常に面白い展覧会だった。
まず1F、野村萬斎の映像を抜けると、ソニーの4K VIEWING超大画面で展開されるダムタイプの作品は音量も大迫力、エルネスト・ネトの繊細な繊維に包まれて蛇のようにうねる通路を歩くと、まるでダンスを踊っているような身体感覚になる。ダムタイプの作品については、11月中旬までの期間限定公開のようだ。
地下に降りると、ダンスの動きを伝達するシステムを作るチョイ・カファイの取り組みが…大真面目に見えるけど壮大な偽ドキュメンタリーなんじゃないか?みたいな可笑しさがあって、これが女性ダンサー4人のパフォーマンス映像に理屈抜きで昇華されていく。白髪一雄や吉原治良ポロックトゥオンブリーらの身体表現的作品が並ぶ空間の向こうに、金氏徹平による舞台装置を背負って、チェルフィッチュの新作映像。これはもう、唸りますのでしっかりご覧いただきたい。あのうねうねした動きとセリフの分離が、舞台ではなくインスタレーションという場だからこそ実現されている。続いてスポーツのコーナーもあり、国立競技場のファイナルイベントで行われたARやプロジェクションマッピングを駆使したイベントの紹介などに続き、『ジダン 21世紀の肖像』を大画面でまるまる90分やってます。息遣いまで聞こえてきて、神々しさすら漂う。あとは演劇関係の映像資料などもたっぷりあり、パフォーマンスもできる大きいスペースでは常時、野村萬斎狂言を大画面で上映していたり、とにかく、作品のクオリティとか見せ方とか、いろいろ唸った展覧会だった。
さらに、いろいろイベント盛りだくさん。この日は中村茜企画で、ピチェ・クランチェン・ダンスカンパニー「Tam Kai」を見た。タイ古典仮面舞踊『Kohn』をベースにしたパフォーマンスだがバレエやコンテンポラリーダンスなど様々な技法が見られる。
6人によるパフォーマンスで、最初はタイの古典舞踊の定型を分解して反復するような動作からはじまるのだが、次第に様々な技法を取り入れながら複雑かつ重層的な動きが舞台上入り乱れて展開される1時間弱で、ニヤッとしてしまう場面もあり、魅入ってしまう。ピチェ・クランチェンはじめメンバーの個性がそれぞれ光っていて、高い技術とパフォーマンスを見せてくれながらリラックスした雰囲気もあり、ダンスバトルのような緊張感や掛け合いもあり、とにかく面白かった。
スタッフブログ: ピチェ・クランチェンダンスカンパニー 「Tam Kai」
来週末は国東半島芸術祭でも公演があるのだが、都現美だと展覧会のチケットだけで見せてくれる太っ腹。12日も14時から公演があり、10時から整理券配るそう。今日も満員になっていなかったので、わりと余裕あるのでは。ほかにも、暮れには岡田利規「ポストラップ」、これも展覧会チケットだけで見られたり、塚原悠也企画で別のパフォーマンスがあったり、有料の演劇とか狂言公演とか、イベント盛り沢山みたいなので、Webページでチェックしてから行くとよいだろう。とにかく、少しでも身体表現に興味のある方には、この秋、必見の展覧会だと思う。