日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

2014年 展覧会ベスト10

毎年恒例、今年見た展覧会を振り返って、私的ベスト10を選んでみます。あくまでも私的ですし、見逃しているものもいろいろあるので、よろしく…。去年だと『山楽・山雪』のような圧倒的なものがあったんですが、今年は図抜けたものがなかったなあ…と思いつつ、改めて自分の日記を読んで思い返すと、あれも良かった、これも良かった、と出てくる。そんな中からなんとか選んだベスト10+次点10でございます。
どうも、企画が良かったから…みたいな選び方になってしまって、大型展が漏れがちになっていることを最初に申し添えておきます。あんまりよくないかもしれん、こういう選び方も。

1.大阪市立美術館『山の神仏−吉野・熊野・高野』

信仰は源流において多様であるというか、生きている、生々しい、力強いのでありまして、数々の、そして多種多様の居並ぶ神像仏像曼荼羅を見ながら、さながら吉野・熊野・高野のお山を巡ってきたような、ありがたーい気持ちになる展覧会なのでした。熊野速玉大神坐像は存在感が圧倒的過ぎてドキドキしちゃったし、高野山の伝龍猛菩薩立像も、不動明王立像も、吉野の役行者倚坐像も素晴らしかった。あと、高野山の四社明神の図、熊野観心十界図、天川弁財天曼荼羅あたり印象に残る。
奈良大阪、神仏を観る - 日毎に敵と懶惰に戦う
山の神仏-吉野・熊野・高野 | 大阪市立美術館

2.東京国立近代美術館『映画をめぐる美術』

最初に京都でも見ていたんですが、会場構成は東京のほうがはるかに良くて、展覧会の意図が明確になっていた。“映画を読む”をテーマに、個人の体験と事件・出来事が、映像という手法を媒介に融合したり、歪められたり、じっくり見て考え込む、まさに映像を読み込む、そんな作品が多く展示されている展覧会でした。アンリ・サラの“インテルヴィスタ”、エリック・ボードレール重信房子、メイ、足立正生のアナバシス、そして映像のない27年間”、ビエール・ユイグ“第三の記憶”など印象に残っています。「MOMAT コレクション」のメッセージ性の強さも極まっててすごかった。
東京国立近代美術館『映画をめぐる美術』『MOMAT コレクション』『地震のあとで―東北を思う3』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
http://www.momat.go.jp/Honkan/readingcinema/

3.東京都現代美術館『東京アートミーティング(第5回)新たな系譜学をもとめて‐ 跳躍/痕跡/身体』

野村萬斎が総合アドバイザーを務め、身体表現をテーマにして、能狂言からバレエからダンスから現代演劇からスポーツから、さらにはエルネスト・ネトに白髪一雄まで、ハイクオリティな作品が揃っている非常に面白い展覧会でした。自身の身体感覚と向き合うような展示も多かった。チェルフィッチュの新作映像良かったです。唸る。ピチェ・クランチェン・ダンスカンパニー「Tam Kai」をついでに見ることができたのも僥倖でした。
東京都現代美術館『東京アートミーティング(第5回)新たな系譜学をもとめて‐ 跳躍/痕跡/身体』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
展覧会|東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO

4.元・立誠小学校『ウィリアム・ケントリッジ 時間の抵抗』

「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」の開催一年前のプレイベントとして開催されたイベント。2012年のドクメンタ13で発表された『時間の抵抗』は、講堂の中央に象徴的な動的オブジェ、あちこちに散在する静的なオブジェ、3方に5面のスクリーンが展開され、そこで多シークエンスからなる複雑で魅惑的で、だけれども、どこか突き放したような映像が流れる。そして重低音で響く音楽。空間全体が、時間の狭間を旅するかのようなめくるめく30分間でした。ご本人をお見かけすることができたのもポイントが高い…大ファンなので!来年の京都国際現代芸術祭はほんと楽しみです。
ウィリアム・ケントリッジ『時間の抵抗』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
プレイベント[作品展示]ウィリアム・ケントリッジ《時間の抵抗》 | PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭

5.オペラシティアートギャラリー『さわひらき

http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20140118/1390134329:itle
そっと覗き込んで囁きを聴くような幻想的な雰囲気の作品から、こんな展開を見せてくれるとは。導入部のミニチュアとドローイングからして世界に惹き込まれるし、通路で展開される小品は素敵だし、主に過去の作品が点在する空間の構成にも惚れるし、どのインスタレーションもじっくり座って対峙して、夢か現か幻か…何時迄もたゆたう、そんな感じ。私にとって、さわひらきや石田尚志の映像作品が流れる薄暗い空間でうつらうつらと眠りに落ちて、水底から水面にゆっくり浮上するようにぼんやり目覚めた視覚と脳みそに、再び作品が溶け込んでくる、それはとてもとても幸せな時間で、つまり今回のさわひらきの展覧会も、とても幸せだったのです。
宮川香山 眞葛ミュージアム、オペラシティアートギャラリー『さわひらき』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
さわ ひらき|Hiraki Sawa|東京オペラシティアートギャラリー

6.千葉市美術館『赤瀬川原平の芸術原論展』

高校生のころにトマソン路上観察を知っていろいろと本も読み漁り、その後美術に限らず、関心領域にその名前がちらつかずにはおかない赤瀬川源平は、私の人生のいくらかを形成した人と行っても過言ではなく。まさに活動総覧といってよい膨大な量の作品群で、この人は戦後の美術と社会の関わりの変容を独自の視点から見つめ続けた人だな、と。だからこれは戦後美術史そのものの展覧会かもしれない、思ったのです。
千葉市美術館『赤瀬川原平の芸術原論展』、川村記念美術館『五木田智央』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

7.東京都現代美術館『クロニクル 1995-』

もともと良かったコレクション展が、最近すんごい尖り具合になっている双璧が東京国立近代美術館東京都現代美術館ですが、都現美で最近のシリーズの総決算的だったこの展覧会。3階の『第1部 about 1995』では曖昧模糊とした、フワッとした印象を受ける作品が連なり、身の置き所に困惑し、1階に降りて『第2部 after 1995』強度の強い作品で、さきほどまでのフワッとした空気が一変する。同時代性にどう向き合ったら良いのか、どう振り返ったら良いのか、己の身の置き場を問われるような、そんな展覧会になっていたと思います。
東京都現代美術館『クロニクル 1995-』やトーハクなど、土曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う
展覧会|東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO

8.東京都写真美術館『スピリチュアル・ワールド』

ちょっとタイトルはアレなんですが、あれもある!これもある!と、とても嬉しかった展覧会。みんぱくにいるようなワクワク感があった!土着に息づく信仰の息吹が感じられた。婆バクハツ!のインパクト凄いし、東松照明の沖縄グッと迫るし、山城知佳子のコロスの唄嬉しかったし。わくわくしました。
日曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う
東京都写真美術館

9.多摩美術大学美術館『東北のオカザリ』

三陸地方などに伝承される細密で豪奢な紙細工の網飾りや御幣や切り透かしの実物と写真が多数、民俗資料やお神楽の映像なども充実しており、力が満ち満ちている展覧会でした。気仙沼とか釜石とか…南三陸町歌津なんて、あっ…何も残ってはいまい…という地域が多くて。唯でさえ喪われつつあったところに震災と津波。見事な紙飾りを見ながら、いろいろなものが失われたことを想うのです。歴史になってしまうところと、現代に生きているものの、ほんとにギリギリのところにあるものだった。
多摩美術大学美術館『東北のオカザリ』、世田谷文学館『日本SF展』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
多摩美術大学美術館

10.川崎市岡本太郎美術館岡本太郎現代芸術賞展』

公募展の中でも、最近はその質の高さとイカレ具合がピカイチの、岡本太郎現代芸術賞展、期待を裏切らない作品群でした。日本人、炊きたてごはんをぶちまけて踏んづけるパフォーマンスやったら一番怒るのでは無いかという与太がありましたが、わたしはこの日、大量のお米を踏みました…
岡本太郎現代芸術賞展など、土曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う
川崎市岡本太郎美術館


続いて次点10+1は順不同です

群馬県立館林美術館『山口晃展 画業ほぼ総覧−お絵描きから現在まで

画業ほぼ総覧の名に恥じない大展覧会で、これまで見たもの、見たこと無かったもの、ありとあらゆる作品が並んでおって、大満足でありました。
群馬県立館林美術館『山口晃展 画業ほぼ総覧−お絵描きから現在まで』、そして佐野へ - 日毎に敵と懶惰に戦う

横浜市民ギャラリーあざみ野『戦争とカメラ』

横浜市が持っているカメラのコレクションの展覧会で、軍用特殊カメラ大博覧会の、お好きな方にはたまらん内容でした。同時開催の『写真の境界』も良かった
横浜市民ギャラリーあざみ野『写真の境界』『戦争とカメラ』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

東京都写真美術館『下岡蓮杖』

横浜で活躍した日本写真界の始祖、くらいの認識しか無かったんですが、ケレン味の強い波乱の生涯で、激動の時代での一人の人間の生業を見る、という意味で良かった。
献血、下岡蓮杖、横浜スタジアム - 日毎に敵と懶惰に戦う

国立国際美術館『コレクション展』

サイ・トゥオンブリー、桑山忠明、李禹煥内藤礼と、各部屋で一作家の作品にずらりと囲まれる部屋の構成が素晴らしく、そして高踏的な突き放し具合にわくわくしてしまったので。
金曜日、大阪へ - 日毎に敵と懶惰に戦う

埼玉県立近代美術館『戦後日本住宅伝説 - 挑発する家・内省する家 - 』

建築展だけれど、とにかく住宅住宅住宅であるから、誰でも、自分に引きつけて問題意識を喚起させることができる展覧会でした。
埼玉県立近代美術館『戦後日本住宅伝説 - 挑発する家・内省する家 - 』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

国立新美術館チューリヒ美術館展』

海外の美術館の展覧会、今年もいろいろありましたが、いちばん素直にいいな!と思った展覧会でした。
サニーヒルズ青山と、チューリヒ美術館展と… - 日毎に敵と懶惰に戦う

三井記念美術館東山御物の美』

雪中帰牧図、夏景山水図、雪景山水図…もう、画の中にずるずるずると引き込まれて帰ってこれなくなりそうで、怖いくらいで、素晴らしかった…。
三井記念『東山御物の美』パナソニック汐留『キリコ』サントリー『高野山の名宝』など - 日毎に敵と懶惰に戦う

神奈川県立歴史博物館『白絵』

生と死、婚礼や祈りにまつわり、美術や調度などに現れる“白”に注目した展覧会で、地方の美術館博物館がじっくりやってくれる醍醐味的な内容でした。
神奈川県立歴史博物館『白絵』展、黄金町バザールなど - 日毎に敵と懶惰に戦う

奈良国立博物館『鎌倉の仏像 迫真とエキゾチズム』

鎌倉でも一堂に並べるのは無理だろうという、よくぞ集めたりな、比較しながら見るのが楽しい博物学的収集の展覧会でした。
奈良大阪、神仏を観る - 日毎に敵と懶惰に戦う

東京国立近代美術館『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより』

世界有数のコレクションを、美術品のコレクションとはなんだろう?といろいろ考えながら見ることができる、興味深い展覧会でした。
東京国立近代美術館『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

(+1)横浜美術館等『森村泰昌展 華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある』

横浜トリエンナーレとしてどうかと言われると、うーん…だけど、森村さんの展覧会としては良かったと思います。


続いて、ギャラリーで印象的だったものを5点

横浜美術館『百瀬文展 サンプルボイス』

声優へのインタビュー映像と、その様子をアニメーションにした映像が並ぶ作品で、鮮やかで緻密な編集は鳥肌が立ちました。
日曜日、仕事、横浜美術館で百瀬文、献血、麻婆豆腐 - 日毎に敵と懶惰に戦う

無人島プロダクション 風間サチコ『プチブル

ニヤニヤしちゃう小ネタ満載で、特に『Picturesque』がアイロニカルで好きで、新作の『ぼんやり階級ハンコ』は欲しい!無駄に押したい!
東京国立博物館『クリーブランド美術館展』、江戸博『大浮世絵展』、風間サチコに川瀬巴水に川端龍子に… - 日毎に敵と懶惰に戦う

ギャラリー間『伊東豊雄展』

台中オペラハウス行きたいです…。10年の歳月はさながらドラマの如しで、波乱万丈のストーリでじっくり読ませました。
徹夜明け、土曜日、伊東豊雄 - 日毎に敵と懶惰に戦う

ギャラリーαM『安村崇』

フレームされた日常の風景の写真がまるで抽象絵画のようで、遠方 への焦点を失って視覚が制御化から離れ、身の回りの物質に信頼が置けなくなった時の不安感。
ギャラリーめぐり土曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う

資生堂ギャラリー『たよりない現実、この世界の在りか』

とにかく、あの空間をあそこまで造り込んだのにまず感服したし、最後の仕掛けもびっくりだし…すごかった。
日本橋高島屋『夢の超特急展』、資生堂ギャラリー『たよりない現実、この世界の在りか』、銀座のゆかたと、うなぎ - 日毎に敵と懶惰に戦う


その他…今年はあまり関西以外に遠征できませんでしたが、道後オンセナートは楽しかったですね
道後オンセナート2014、草間彌生と谷川俊太郎のお部屋へ… - 日毎に敵と懶惰に戦う
韓国で行った美術館博物館はとても印象に残っている。ソウル、美術館とか建築物めぐりも楽しいと思います。
サムスン美術館LeeumとPLATEAU - 日毎に敵と懶惰に戦う
ソウルの国立中央博物館はとにかく広い - 日毎に敵と懶惰に戦う
開館したばかりの国立現代美術館ソウル館、そして徳寿宮分館 - 日毎に敵と懶惰に戦う
ザハ・ハディド設計、ソウルの東大門デザインプラザがとんでもない - 日毎に敵と懶惰に戦う


以上、だらだらと長い記事におつきあいいただきありがとうございました。来年もいろいろ、素敵な展覧会が見られたらいいなあ、と思います。最後に、比較的印象に残っているものを列挙しておきます。今年はこれらを含めて、120くらいは見たかな…。


世田谷美術館『実験工房展』
KAAT 神奈川芸術劇場『日常/オフレコ』
東京国立博物館栄西建仁寺
BAnkART Studio NYK『かたちの発語』
東京国立博物館台北 國立故宮博物院−神品至宝−』
山種美術館Kawaii日本美術』
東京都写真美術館『高谷史郎 | 明るい部屋』
パナソニック汐留ミュージアム『南部鉄器』
江戸東京博物館『大浮世絵展』
大田区立郷土博物館『川瀬巴水展』
泉屋博古館分館『木島櫻谷』
森アーツセンターギャラリー『ラファエル前派展』
松濤美術館ハイレッド・センター:直接行動の軌跡展』
東京都現代美術館『クロニクル- 1966拡張する眼』
銀座松屋ムーミン展』
世田谷美術館桑原甲子雄の写真』
出光美術館『日本絵画の魅惑』
世田谷美術館ボストン美術館−華麗なるジャポニスム展』
東京国立博物館『東アジアの華 陶磁名品展』
出光美術館宗像大社
上野の森美術館北斎展』
京都国立博物館『国宝鳥獣戯画高山寺』『京へのいざない』
サントリー美術館高野山の名宝』
奈良国立博物館正倉院展
東京国立博物館『日本国宝展』
大阪市立東洋陶磁美術館『IMARI/伊万里 ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器』
東京藝術大学美術館『河北秀也退官記念展』
五島美術館『存星』
国立新美術館『DOMANI・明日展
東京国立博物館クリーブランド美術館展』
国立近代美術館『工藤哲巳
世田谷文学館『日本SF展』
江戸東京博物館東京オリンピックと新幹線』
出光美術館『仁清・乾山と京の工芸』
神奈川県民ホールギャラリー『八木良太展』
ギャラリーαM『八幡亜樹』
ギャラリー間『内藤廣展 アタマの現場』
愛媛県美術館『柳瀬正夢展』
森美術館『ゴー・ビトゥイーンズ展』


2011年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う
2012年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う
2013年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う



今年も大変お世話になったTakさんのところに、いろんな方の情報が集積されるはず…
2014年 展覧会ベスト10 | 弐代目・青い日記帳