日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

2015年 展覧会ベスト10

今年ももう終わりですね…毎年恒例の、自分が見た中での展覧会ベスト10を留めておこうと思います。あくまでも自分が見た中、であるので、注目度が高くても見逃したものも多いです。そして選んでいたら関西の展覧会が6、関東の展覧会が4、という配分に。展覧会と出会った時の自分の中のエモーショナルなものを優先させて選んでしまうので、旅先での体験が何割か増しになるのかもしれませんね。

 

1.国立国際美術館ヴォルフガング・ティルマンス

処理しきれないくらいの膨大な情報量と対峙しながら、様々な問題を意識しつつ、しかし自由な心の翼を得たような、世界中の広さと深さを、より実感したくなるような、とても素敵な展覧会だったのです。

 

2,奈良国立博物館『白鳳-花ひらく仏教美術-』

唐や朝鮮半島、さらにインドの影響を様々に受けつつ、国内でも揺籃発展した仏像の数々は実に多様性に富んでいて魅力的。数が多くても一つずつじっくり見ていって、まったく飽きない。奈良でなければ見られない展覧会だったと思います。

 

3.東京都現代美術館『東京アートミーティングⅥ “TOKYO” 見えない都市を見せる』

ホンマタカシキュレーションコーナーが素晴らしい。そこが1本、強烈な軸となって、岡田利規や目【め】や蜷川実花の作品に筋を与えていて、展覧会としての全体を構成せしめている。東京のこんにちに深く思いを致す、刺激的な内容であると思う。東京の今日の自意識に真摯に迫り、「想像力の可能性」というお題目がヒリヒリと痛々しい。

 

4.横浜美術館『石田尚志 渦まく光』

映像を見ているうちにふっと眠りに落ちてしまって、ぼんやりと、沈んだ海面から浮き上がるように目を覚ますと、目の前に繰り広げられている映像世界が無限 の円環を描いていて、夢か現か、不思議な世界にたゆたい続ける…。そんな、ほんとうに、夢のような時間が過ごせる展覧会だった。ひとつの到達点、それっぽい、作品を作ってから、いろんな方向を模索していて、それがひとつ明瞭な形になりつつあるような、そういう変化を楽しむワクワク感もありつつ、なのでありました。

 

5.国立国際美術館『他人の時間』

全体を通じての感想はなかなか難しいのだけれど、“売れ線”の強度と完成度はあまり持っていない感じだが、心に引っ掛かりを残すような作品、楔を打ち込んでいくような作品が多かった。そういう展覧会は大好きなのです。イム・ミヌク『国際呼び出し周波数』ミヤギフトシ『The Ocean View Resort』に特にグッときました。

 

6.国立国際美術館『高松次郎 制作の軌跡』

解説キャプションが溢れていて詰め詰めだった東京での展覧会と対照的に、ゆったりと思考しながらのペースでたくさんの作品と向き合える。国立国際美術館特有の、不親切なくらいの投げ出し感が、大いにハマった事例。学校の授業中、暇潰しに、ノートに何か書く落書き、人物などのイラストを描いてる人もいるだろうけれど、そうじゃなくて重なり合う線や幾何学的な模様を描くような人、高松次郎はそういう人で、それを芸術として突き詰めていって止揚したのだ、という気がしました。

 

7.大阪市立美術館『肉筆浮世絵 美の競艶』

宣長春一笑春章歌麿豊国国貞北斎英泉から暁斎清親まで、豪華絢爛百花繚乱一級品揃い、とにかく着物の柄の千変万化に溜息、生活の活写に感心と、ぐるぐる行ったり来たり、疲れるぐらい素晴らしかった。そして特に歌川豊国。あらゆる職種階層、吉原太夫から夜鷹まで微に入り克明に描いた時世粧百姿図二十四葉(まとめて1点)の素晴らしいこと。見立雪月花図三幅対の美しさも、接近したり離れたりしながら溜息しきりでありましたよ。

 

8.京都国立近代美術館琳派イメージ』

琳派展を目当てに京都に行って、実際琳派展も良かったのだけれど、こちらにグッときた。琳派のデザイン、図案化の強さ、普遍性を改めて感じさせる展覧会で、ボリュームはやや少ない感じがあるけれど、とにかく見どころが多いよい展覧会だった。神坂雪佳と田中一光の作品を見ながら、現代に息づく琳派を体感したのです。

 

9.東京都美術館『新印象派

もともと点描大好きなんですが、新たに目を開かせるような、いい展覧会だったな。新印象派の誕生、理論、発展、拡散、派生、そして昇華、フォービズムヘ、丁寧で骨太な展覧会。ピサロ、スーラ、シニャックも勿論だけど、リュス、レイセルベルへ、そしてクロス、とにかくクロスが素晴らしい。各作家作品数も多く、じっくり学べるとても良い展覧会だった。

 

10.森美術館村上隆五百羅漢図』

まずもって東京でこれが見られたありがたさというのがありまして…。 その構成、色彩、規模、どこをとっても、巧いというか、すごいというか、とにかくよくできているのである。村上隆が嫌い、気に食わない人も多いとは思うが、五百羅漢図以外の作品を含めて、ある意味、歴史の証人になるくらいのつもりで、見に来て欲しい展覧会なのだった。

 

 

 

以上であります。また、今年、はじめて訪れた美術館で印象に残ったのは以下ですね

 

 

国際展としては、今年も大地の芸術祭、大いに堪能しました  

 

 

コレクション展は、相変わらず、国立近代美術館と東京都現代美術館横浜美術館が素晴らしかった

 

 

 

 

また、今年はあまりギャラリーが巡れませんでしたが、良かったものとして、黄金町Site-A 佐々瞬『とある発掘とレポート、その準備』を。

仙台の川内追廻地区を巡る、片倉屋敷、練兵場、戦後の仮設住宅と市の対立、遺跡発掘…。メモ帳や資料や模型やインタビュー音声や、断片的なそれらを丹念に“発掘”するように読み解いていくと、いつしか自分も歴史の狭間に落ち込み、現在もまた歴史の地層となり、埋もれて、そして発掘される。歴史と虚実の重層的作品でした。

 

 

いろんな方のベスト展覧会はTakさんのブログから参照してみましょう

2015年 展覧会ベスト10 | 弐代目・青い日記帳

 

 そんなわけで、来年もまたよろしくお願いいたします。昨年までのベスト展は以下のようになっております。

 

 

 

 

 

 

以下は余禄…印象の残ったもの32選です

永青文庫春画展』

開催してくれてありがとう、の春画展。とにかく豪華絢爛でした。

春画展、神田まつや、鮒ずし、藤田嗣治、明治屋、あおひーさん、野毛麺房亭 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

三菱一号館美術館『画鬼暁斎

コンドルとの組み合わせは賛否あるようですが、それも含めて良かったと思います。

三菱一号館美術館『画鬼暁斎』など - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

神奈川県立歴史博物館『陸にあがった海軍』

資料の豊富さ、よく調べた、という展覧会。新資料が多かったですね。

神奈川県立歴史博物館『陸にあがった海軍』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

サントリー美術館若冲と蕪村』

代表作めじろ押しで、鑑賞環境も良好で、とにかく満足度がとても高い展覧会

土曜日、サントリー美術館『若冲と蕪村』など - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

松涛美術館スサノオの到来』

巡回の中ではかなり縮小されていたようで、川村で見ればよかったなあ…と。しかし民俗学をニワカで齧ったような人(私のことだ)には堪らん内容だったです。

松涛美術館『スサノオの到来』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

 国立近代美術館フィルムセンター『志村喬

ひたすらおっさんの顔を見せらる、俺大満足の展覧会でありました。

フィルムセンター『志村喬展』など、都内徘徊、市民酒場周遊の日 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

森美術館『シンプルなかたち』

ずるいなー、という思いと、うまいなー、という思いが交錯した展覧会。とにかくGW中なのに静かで良かった

森美術館『シンプルなかたち展』、どら焼きパーティー - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京オペラシティアートギャラリー高橋コレクション展 ミラー・ニューロン

リアルタイムで活躍している日本の現代アーティストの作品をまとめて見れる機会…って考えると、高橋コレクションにその役割を頼るしかないのでは…という思いを新たにした展覧会

東京オペラシティアートギャラリー『高橋コレクション展 ミラー・ニューロン』など - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

茨城県陶芸美術館『ルーシー・リー

フォルムの艶かしいくらいの美しさと、釉薬を知り尽くした見事な発色に惚れ惚れ。

茨城空港、水戸芸術館『山口晃』、茨城県陶芸美術館『ルーシー・リー』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

 東京国立博物館鳥獣戯画 京都高山寺の至宝』

うん、まあ、イベントですよね、もはや。来年の若冲展も怖くて楽しみです。

東京国立博物館『鳥獣戯画 京都高山寺の至宝』、献血ルームfeel - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京と現代美術館『山口小夜子 未来を着る人』

その眼の力に釘づけになりました。

東京都現代美術館『山口小夜子 未来を着る人』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

 東京都庭園美術館『マスク展』

フランスの上から目線植民地主義博物学全開で、それが遅れてきた帝国日本が西洋を模倣した建物に飾られる展覧会という複雑骨折転倒が楽しかった

東京都庭園美術館『マスク展』と素敵な隠れ家ランチ - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京国立近代美術館『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』

展示作品になった記念…というのもありつつ。展示構成に、さらに作品そのものをして二重の意味を持たせるような凝ったキュレーションでしたね。

東京国立近代美術館『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

森美術館『ディン・Q・レ展 明日への記憶』

ベトナム戦争を題材にして、ソフィスティケートされていながらグッと迫ってくる、そんな展覧会

東京都現代美術館『ここはだれの場所?』ほか、森美術館『ディン・Q・レ展 明日への記憶』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

国立新美術館『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』

ほとんど蛮勇と言ってもいいようなテーマに挑んで、きっちりまとめたことに拍手を送りたい。

国立新美術館『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京都現代美術館『ここはだれの場所?』

例の問題になった会田誠の作品…も良いのだけれど、岡崎乾二郎の作品も、良かったなあ

東京都現代美術館『ここはだれの場所?』ほか、森美術館『ディン・Q・レ展 明日への記憶』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京ステーションギャラリー鴨居玲 踊り候え』

開催場所の勝利

東京ステーションギャラリー『鴨居玲 踊り候え』など日曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

文化学園服飾博物館『衣服が語る戦争』

とにかく戦争の衣服への影響、“好きな物も着れない”事態が起きることへの警鐘を鳴らしている展覧会。良かった

文化学園服飾博物館『衣服が語る戦争』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

サントリー美術館藤田美術館の至宝 国宝 曜変天目茶碗と日本の美』

わびもさびをあったもんじゃない!というくらいに、じっくりお宝を見せて貰った展覧会。展示環境の良さ大賞を進呈したい

ガンダム展、工場の祭展、藤田美術館の至宝、五姓田義松、野毛 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

そごう美術館『明治有田 超絶の美』

好みかといわれると首を捻るけど、実に見事、技術の粋を極めた有田ばかりで恐れ入りました。そごう美術館すごい

汐留ミュージアム、旧新橋停車場、そごう美術館『明治有田 超絶の美』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

泉屋博古館分館『きものモダニズム』

モダンで大胆でしゃれおつで、カンディンスキーみたいなのとかあって、ちょう素敵!

東京国立近代美術館『Re:play』泉屋博古館分館『きものモダニズム』日本民藝館『芹沢けい介』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

横浜市民ギャラリーあざみ野『もう一つの選択』 

大袈裟な演出は無いが、断片の中にも日常生活や風景の亀裂や引っ掛かりが生じている作品群。良質

東京国立博物館考古展示室リニューアル、横浜市民ギャラリーあざみ野『もう一つの選択』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

遊行寺宝物館『国宝一遍聖絵

主題となる人々の姿はもちろん、自然の風景、貧しい市井の人々の暮らし、そこらへんでけんかしている犬を含めて、実に隅々まで表情豊かに、活き活きと描かれていて。特に踊念仏の場面はすごいファンキーでグルーブ感があった。

遊行寺宝物館『国宝一遍聖絵』、神奈川県立近代美術館鎌倉『鎌倉からはじまった』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

神奈川県立近代美術館鎌倉『鎌倉からはじまった』

もうお別れなのだな。展覧会全体によい雰囲気が漂っていました。改めてこの建物の良さを味わいました。

遊行寺宝物館『国宝一遍聖絵』、神奈川県立近代美術館鎌倉『鎌倉からはじまった』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京都美術館『モネ展』

最晩年、白内障を患い、ついに自身の目をして、すべて風景を光と色彩に昇華せしめた作品達はほとんど感動的ですらあった

夜勤明けの上野美術館巡り、モネ展と兵馬俑と一遍聖絵 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

神奈川県民ホールギャラリー『鴻池朋子根源的暴力』

自然と生理的不快感と心地よさと民話世界が混然一体となってジェットストリームアタック、という感じで、圧倒されました

文フリ、鴻池朋子『根源的暴力』、日産アートアワード - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

BankART Studio NYK『日産アートアワード』

7人が7人とも非常にレベルの高い、完成度の高い展覧会に仕上がっていて、無料でいいのこれ、な展覧会

文フリ、鴻池朋子『根源的暴力』、日産アートアワード - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

横浜市民ギャラリー『田中千智展』

漆黒の中からじっと見つめる瞳が心を鷲掴み。地下の「はてしない物語」とてもドキドキさせられた。

横浜市民ギャラリー『田中千智展』、『バクマン。』を見る - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

江戸東京博物館『浮世絵から写真へ』

幕末明治初期の豊富な写真コレクションからはじまり、写真の影響を受けた錦絵、浮世絵の構図に影響された写真、小林清親の写実的不思議作品、五姓田芳柳、写真油絵など、時代の狭間の興味深い作品が満載でした。

江戸東京博物館『浮世絵から写真へ』、東京国立博物館『ブルガリ展』など - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

埼玉県立近代美術館『旅と芸術』

巖谷國士監修だけあって、非常に文学的で、多岐にわたり、咀嚼に時間がかかる展覧会

うらわ美術館『縫い-その造形の魅力』、埼玉県立近代美術館『旅と芸術』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

NTT ICC『ジョン・ウッド&ポール・ハリソン 説明しにくいこともある』

映像表現における要素の切り出し、記号化、再構成、反復を、力技で押し切る力量に恐れ入る

NTT ICC『ジョン・ウッド&ポール・ハリソン 説明しにくいこともある』など日曜日 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京ステーションギャラリー『君が叫んだこの場所こそがほんとの世界の真ん中なのだ。パリ・リトグラフ工房idemから-現代アーティスト20人の叫びと囁き』

タイトルの長さで。ではなくて、深く沈み込むような作品ばかりのその構成に。工房を紹介する映像をデヴィット・リンチが撮ってるのもエロくて良かった。

都内徘徊、ステーションギャラリー『リトグラフ工房展』、かき小屋 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

……

さいごに…いろいろ複雑な想いが交錯してモノ申したい展覧会としては、図録なんとかしろの神奈川県立歴史博物館『五姓田義松展』、自己満足じゃないのか国立近代美術館『Re:play』、いい加減道楽が過ぎる千葉市美術館『杉本博司』の3つを上げておきたい。以上であります。