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三菱一号館美術館『PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服』

三菱一号館美術館で開催中の『PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服』に行ってきました。(以下、会場内の写真撮影は、一部を除き禁止のため、許可をいただいて撮影しています)

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PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服 |三菱一号館美術館(東京・丸の内)

オートクチュール、高級仕立服、という意味であるのは知っているし。毎年、パリでいろんなブランドがショーをやっている、時に奇抜な洋服のことであるな…というのは知っているんだけれど。あらためて『世界に一つだけの服』と言われると、世界にひとつだけの服でどうやって商売するんや…と思うわけですよ。

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パリにおいては、パリクチュール協会という業界団体があり、そこに現在所属していて要件を満たしているブランド(メゾン)は、わずかに10と幾つか。1月と7月に作品を発表すること、すべて一点ものの手作りであること…など、厳しい条件がある。

そしてあの豪華なショーは見本市であって、あれを見て品定めをして、実際に注文する人は、それからメゾンの担当者がおうちに来て採寸し、色やアレンジを相談し、そして3回以上の仮縫いをして…という工程を経ないと手に入れることが出来ない(その様子を描いたものも展示されていました)

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完成までには半年から一年は必要となり、それだけの時間をかけて作ったのなのに、ハレの場で着るのは一度切り、一度着てしまったらモードとしては古くなってしまうので、2度着ることはない…

もうなんというか、気の遠くなるような話で、それにいったいお幾ら万円かかるのか、そしてそもそも、仮縫いしてもらうためにメゾンの人に来てもらう家がなければいけないし、そして着ていくハレの場所が無ければいけないし…

もはや庶民としては絶対に縁が無い話になるわけでして、ちょっと背伸びすれば手が届くぞ!みたいなプレタポルテや、あるいはジュエリーの類だったら羨ましい…みたいな視点で見てしまうんですが、今回のオートクチュールとか、あるいはハイジュエリーとか、そこまでいくと、羨ましいも何もなくて、きれいねえ…と眺めるのみとなるのです。

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今回の展覧会に並ぶ作品は、ガリエラ宮所蔵によるもの。このガリエラ宮パリ市立モード美術館はオートクチュールプレタポルテをはじめ、ファッションのコレクションにおいて10万点あまりという、世界随一を誇る美術館でありまして。ここが関わらないとオートクチュールの展覧会なんかできない!というところだそうで

Palais Galliera | Musée de la mode de la Ville de Paris |

そこから、日本での展覧会向けに厳選された73点の衣装、それに写真やドローイングなど、130点あまりの作品が出品されています。

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特に手のついているマネキンは、マネキン自体もパリから運ばれたものであると。なにしろ、モデルに合わせて何度も仮縫いを重ね、完璧なフォルムを目指して作られたお洋服でありますから、マネキンにもただ着せればいいというものじゃない。

服が最高に美しく見えるように、マネキンのあちこちに綿を足したり、ボリュームを加えていって、その上で服を着せる。最高のシルエットを見せる。そのために、パリの学芸員、京都から招へいした服飾専門家、6人がかりの展示作業。絵を見せる展覧会よりも、はるかに手間がかかったそうです。

だからこその、美しいフォルムを見せるドレスたち。イブニングドレスというのは、正面から見ると禁欲的ですが、後ろに回るとセクシーなのが良いですよね…(趣味)

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これなんかすごいですね、イブ・サンローラン。後ろが素晴らしいレースで、お尻のあたりまで透けて見えてしまうのでは…

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このようなイブニングドレスも美しいのですけれど、私が惹かれたのがテーラード・スーツのほうでして…

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布の扱い方の見事さ、フォルムの美しさが、どれを見てもほれぼれしてしまう。ほんとうに、シンプルで奥深い美術品を見ているような感動を覚えるのです。いやまあ、仕上がりはまったくシンプル、ではないのだけれど

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もちろん、ドレスもどれも美しいのよ…

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今回、あまり説明する言葉を持たないので、ちゃんと解説することができず、すまぬ。メゾンの名前も聞いたことのあるところばかりなんだけれど、それぞれの特徴とか、説明できない…オートクチュールのメゾン相関図みたいなのが展示されているから、それを見て勉強してくれたまへ

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会場内には、デザイン画や写真も多数展示されています

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モードは時代の変遷に合わせ、ユニークなもの、奇抜なものも登場します。鎖帷子みたいなのもあるよ…

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オートクチュールは1960年代にガクリと衰退し…そりゃそうですよな、そうそう、注文して半年も一年も待てるお金持ちはいない。代わりに既製服であるプレタポルテが主流になっていく。しかしながら、オートクチュールも新しい潮流を常に取り込みながら、脈々と生きながらえているのです。

しかし、手仕事で、一点ものが作り出されているのは変わらず。その仕事に敬意を表し、展示コーナーの最後には、その仕事の手を映し出す写真が展示されているのでした。

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三菱一号館美術館のオートクチュール展は、5月22日までです