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別冊宝島のレトリック四部作が面白かった話

この『レトリック四部作』というのは、あくまでも自分が勝手に名付けた名前です。

今ではネトウヨ御用達みたいな扱いも受ける宝島社、昔関わっていたということで町山智浩が難癖つけられたりする宝島社であるけれど

togetter.com

かつてはサブカルチャーカウンターカルチャーの先頭に立って、楽しい仕事をたくさんしている出版社であった。町山智浩が、80年代の宝島について語っている文章がこちら。(このころの体験が基礎になっている町山智浩にとっては、そりゃ、オタクサブカルの対立なんてあとから作られたものだろ?という認識もムベナルかなでしょうね)

津田大介公式サイト | 町山智浩、『宝島』ゴールデンエイジを大いに語る(津田大介の「メディアの現場」vol.44より)

そして、宝島社は時代時代でその出版傾向がコロコロ変わりすぎることでも有名であり、またいずれ、時代の空気を読んで方向転換するのではないか、とも思っているけれど。

その宝島社の出している『別冊宝島』もまた、1976年4月の『全都市カタログ』からはじまり、時代ごとにその性格をコロコロ変えながら40年2500冊に迫り、今でも発刊が続いている長寿ムックである。そして特にその初期においては、尖った内容のものが多かった。

別冊宝島 - Wikipedia

そしてそのなかで、自分が勝手に「四部作」と呼んでいるだけなのだが、以下の4冊は極めて面白い内容のものだった 

文章・スタイルブック (別冊宝島 19)

文章・スタイルブック (別冊宝島 19)

 
珍国語 (別冊宝島)

珍国語 (別冊宝島)

 

著名な作家や評論家の文体を研究してみたり、真似てみたりが主なのだけれど、特に「珍国語」においては、学校国語に過剰な期待をするのを止して、書き言葉における価値観の拡張だけをただひたすらに追い求める姿勢を提唱していて、いっそ気持ちがいい。

ちょっと見には茶化しているようにしか見えませんけどね。実際茶化しているんですけどね。
谷岡ヤスジの漫画をコマをばらばらにして、ストーリー通りに並び替えさせたり。「現代国語」授業の実践記録と称して、東海林さだおのグダグダエッセイの授業風景を仕立て上げてみたり。内田百聞の百鬼園随筆を穴埋め問題にしてるんだけど、もともと論理結節に飛躍のある百聞の文章の半分近くが穴になっていて、わけわからなくなっていたり。

この時代以降、今日までのサブカルチャー界隈独特の軽薄でポップな文体がどのように成り立っていたのかを知る上でも、重要な資料なのではないか。
井筒三郎という著者が縦横無尽に活躍している。というか、私、井筒三郎という人はたいした才能の持ち主だと思ったのだが、その後、まったく名前を見ない。今でも出版編集に関わるような仕事をしているのだろうか、あるいは、まったく無縁の暮らしをしているのだろうか。惜しい。

ともかくにも、この本、シロートにとっては、気の利いた文章を書くための実践テキストとしても使えます。自分の文章はいろんな人から影響を受けているけれど、この本を読んだことも、ひとつの基礎になっている、と言える。

もちろん、絶版になってますが、古本屋などで均一本コーナーに並んでいることもあるので、目に留まったら買ってみることをオススメします。