日曜日、家事を済ませて中華街に向かう。すでに行列が形成されているお店に入店し、貸切にしている2階に向かう。そう、南粤美食です
孤独のグルメに登場して以来、ますます人気に拍車がかかり、気軽にその日の思い付きで行っても2時間待ちが当たり前になってしまった、南粤美食。だから今、このお店をしっかり楽しむには、人を集めて予約して宴会をするしかないのである。現状、5人以上でコースのみ予約を受け付けているらしい。
これまでも10人で1人1万円とか、店舗貸切でお茶会とか、いろいろな宴会に参加してきたが、本日は19人で2階を貸切、お粥の鍋の会なのである。お粥の鍋は順徳の名物とのことだが、食べるのははじめて。イマイチ想像ができない。2階に上がると、すでに食材が準備されている
テーブルに並ぶ具材に胸ときめかせながら、まず、ビールを飲みつつ、口開けは定番の塩蒸し鶏なのだが…
これが、この店で食べた中でも、過去最高の出来だ。塩加減と言い、輝かんばかりの湿度の具合と言い、素晴らしい。蒸し鶏は時間をおいても美味しいが、やはり、出来立てを昼に食べるに限るのだろうか。
そして丸テーブルにお粥を満たした鍋が運ばれてきて、ここから饗宴がはじまる。 具材はお母さんの手により順番にお粥に投入される。
最初に、まだ活きの良いエビがお粥の中で踊り、引き揚げられるとお皿に移される。
以降も具材をいっぺんに入れるのではなく、順番にひとつずつ投入され、食べていくスタイル。野菜が最後に登場するところとか、潮州火鍋にも少し通じるところがあるのだろうか。
そしてこの海老であるけれど…。頭も皮も、そのままパリパリ食べられてしまう海老はぬっとりとした旨味があり、お粥に包まれる熱伝導の具合が絶妙なのだろうか?びっくりするほど旨い。しかし、まだまだ序の口なのである。
目の前の鍋に投入された記憶の無いアワビがやってくる。今回、19人なので、鍋が2つなのだが、こちらで海老が躍る間、隣のテーブルの鍋では鮑が踊っていたのだ。だから茹でられた鮑は回ってきて食べることはできるが、2つの鍋で投入される具材が一部異なることになるのだ。仕上がっていく出汁の配合が異なるのである!この事実にザワつくテーブル。そして、あっさりだが噛む程旨味の鮑…。
続いて鶏団子。これは両方の鍋に投入されていた
なんだこの鶏団子。咬むと、いままで食べた中で、最高の旨みがジュワッと染み出してくる、なんだこれは。
一つ一つの具材を噛み締めながら進むのだが、落ち着く暇は無いのである。次はとんでもなく大きな帆立が投入される。
なかなかこのサイズは見ないぞ…材料費どういうことになっているのか。
鍋奉行の手により、絶妙な火の通り加減で引き揚げられる具材。これまた過去最高の帆立…。このあたりから、具材そのものと、お粥の中に蓄積された出汁が複雑に絡み合い出すのがわかる
そして、この皿の底の粥。具材をすくうときに、少しだけすくってしまうお粥。ここまでの具材の旨味を吸って、お粥がどんどん進化している。味の過程を楽しむべく、皿の底のお粥を奪い合う面々…
次から次へと、腸詰入り魚団子、イカ、鶏肉、あさりと投入される具材
ふわふわの団子も美味しいし、イカが下味も切り方も絶妙、具材が良いだけでなく、どれもこれも一工夫がある。鶏からはとんでもない旨みが出ており、熊本産のあさりもこれまた……だんだんテンションがおかしくなってくる。一体感が高まる。外に並んでいる皆さん申し訳ありませんと口では言いながら、しかし、美味しいものを口に含むたびに、思わず笑いが出てしまうのだ…
ここで椎茸である。
静岡産の極上のどんこは、自ら素晴らしい出汁を出しつつ、お粥の出汁を受け止め、いやらしくぬらぬら輝いて、味はもはや合法麻薬。マジックなキノコ
やさしい山芋を経て
ここでようやく、各自に、少しだけお粥スープが配給される
ここまで出汁を受け止め続けたお粥は、もはやお粥の概念を超越している。なんだか涙が出てくる。幸せすぎてあらぬことを口々にしだす面々…
さらに、牛肉。どこの部位なんだろうか、羊のようなジビエのような、野生さえも、感じられる牛肉。お粥という豊饒の海で生命力にあてられて、野蛮ささえも取り戻したかのような、肉の旨味
大根は、全てを受け止めて輝いている…。
さらにはレバーまで投入される
旨味が完全にオーバーフローしている、もうこれ以上勘弁して欲しい、いや、もっと!
ほっくり甘いかぼちゃにしみじみしたところで、最後に油条が投入される。
ここまでの全ての旨みが染み出したお粥を油条が吸って、あぁあぁ、声にならない声だけが響くのだった。大満足。
ありがとう南粤美食、こんなお粥は生涯初めて、一生の思い出になります。皆さん、今の南粤美食は、宴会を予約して楽しむに限ります。宴会を予約しましょう。
…
……
食後のクールダウン、神奈川県民ホール6階『英一番館』でアップルパイにコーヒー
山下公園直近、大さん橋やベイブリッジがよく見える、港を見下ろす落ち着いた空間で、居心地も最高なのに、なぜかいつもガラガラに空いている謎
カッチリしているが緩いサービスも、とても好み。シブいデートにも最高だと思うのだけどな。もっとみんな利用して欲しい。その後、やなぎみわ「神話機械」を再訪。
石川町から新杉田に向かい、京急に乗り換えて横須賀中央へ。歩いて三笠公園まで。『SENCE ISLAND 感覚の島』夜の猿島で展開されるアートイベントに行く。
島内は海岸沿いを除いて撮影禁止。個別の作品がどうこう…というよりも、暗さと、波と風の音と、樹々のざわめきや虫の声に包まれ続ける非日常体験が楽しい。
そしてなにより、神社跡で繰り広げられた、Atachitachiのダンスパフォーマンスが素晴らしかった!暗闇の向こうに横須賀の夜景が見える神社跡、そこでの2人の動きや息遣い、徐々に巻き込まれる観客との緊張感と弛緩。これまで見たダンスで、いちばん、心動かされたかもしれない。
暗くなってから猿島に渡る、という行為だけでプライスレスだけど、かなり広い、階段も多い島内、多数のスタッフを配置して安全管理しつつ、なるべく暗さを体験して貰いたいという意識で運営されてて、期間限定イベントのために良くやったなぁ、と思う。昨日おとといはお天気のせいで中止になっていたらしい。今日は比較的暖かくて天気も良くて、よかった。そして、今日限定のダンスパフォーマンスに遭遇できたのは幸運だった
結局2時間半ほど長居して、また船で戻り、横須賀中央から電車で帰宅。遊び倒してしまった日曜日だった