日毎に敵と懶惰に戦う

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出張帰り、木次と亀嵩と八雲本陣と出雲民藝館

三刀屋のビジネスホテルで目覚めて5時過ぎ。出雲空港から夕方の便をとっているのでそれまでどうするか。松江や出雲空港などもいいのだが、近々、観光で別途来る予定もあるので、あまり初回だと来ないようなところに行くことにする。

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ホテルを出たのが6時頃。木次の駅に向かってぶらぶら歩く。報恩感謝

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山のお社からは太鼓の音が聞こえてくる

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ある家の前を、歩道の比較的車道側を通って歩いたら、大音量の警告が流れてびっくりした。家の人は人が通るたびにこの騒ぎでうるさくないのだろうか

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斐伊川を渡る

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昨日、『木次の駅前には、砂の器のロケ班が拠点とした老舗旅館や良い居酒屋があると聞く。川を挟んですぐの三刀屋には、場外馬券売り場にパチンコ屋が3軒、チェーン居酒屋にいくつかのコンビニ、ロードサイド店舗、インターチェンジ、モーテルのような時代のついたビジネスホテルがある』と書いたが、なるほど、木次の駅前はまったく風景が変わってくる

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駅前は街道筋の風情を色濃く残し、創業100年を遥かに越す旅館天野館もある。

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造り酒屋もある

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居酒屋や寿司屋もあるし、焼鯖太巻や、出雲地方で月遅れの端午の節句に食べるという笹巻きなどを売る店もある。

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この看板建築も大変良い

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軽率に、こちらにこそ人の暮らしが…みたいなことを言ってしまいそうだが、しかし、三刀屋側に4軒も密集していたコンビニはこちらには無いのだ。こちらも子供の姿は見かけたが、生活のリアリティという意味では、より三刀屋側なのだろう

木次と三刀屋、川を挟んでこれだけ対照的な顔を見せる街。意図してそうしたのか、意図せざる何かによるものなのか…

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木次駅で木次牛乳をやるための牛乳も、木次駅前では買えそうになかったので、三刀屋のローソンで買ったのだった。

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木次駅から備後落合行の列車に乗る。いよいよ、『砂の器』の色が濃くなってきた。自分は『砂の器』、加藤剛が出ている砂の器が大好きで、それはそれは何十回と見たのだが、あの映画の醍醐味は丹波哲郎…と日本全国を鉄道で旅するところであって、丹波哲郎亀嵩を訪れるため、宍道木次線の備後落合行に乗る。その木次線、備後落合行である。

しばらく走ると、汽車は出雲八代駅に着く。

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療養所に行く父、本浦千代吉と、本浦秀夫、後の和賀英良が亀嵩駅で別れるシーンがあるが、実際に撮影されたのはこの出雲八代駅だった

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今西警部は出雲三成で降りるのだが、わたしはジープではなくそのまま汽車に乗ったまま

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もう一駅、亀嵩である

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一度は来たかった亀嵩

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ズーズー弁に音韻の類似する地方はありますね、音韻?おすすにすんぶんと言えば、関西や中国地方では出雲地方の、出雲地方!その、カメダ、である。カメダカだかカメダケだか、そんなことはどうだっていいんだ、の、亀嵩、である。

興奮して映画を知らない人にはよくわからなくなっているが、そのままやります。

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と言っても、この駅に、映画の風情があるわけでもない

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実はこの蕎麦屋の看板が邪魔で、実際の映画の撮影はもう少し先の駅で撮られている。この駅には、こんな看板があるばかり。イメージ的には三木謙一巡査なのだろうか…

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蕎麦屋にはサインがたくさん飾られていた

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さて…

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亀高駅から4kmほど歩くと、放浪の旅の途中、体調を悪くして寝込んだ本浦千代吉が、三木謙一巡査に保護された神社、そして根負けするくらいの義心故に管轄外に追い出すことなくその息子本浦秀夫の面倒まで見たために、後の悲劇につながるわけだけれど、その亀嵩神社があるらしいが…

歩いていくのはなかなか難儀だけれど、出雲三成近くを出たバスが、亀嵩駅を通って、砂の器の記念碑やら、湯野神社(亀嵩神社)やら、道の駅酒蔵奥出雲交流館(駐在所の再現などあるらし)に向かっているようだ。しかし土日は本数が少なくて使えない。本数の多い平日なら利用できそうだけれど。

いろいろ思案して今日はこれまでとした。亀嵩の集落などもなかなか雰囲気がありそうだけれど。戻りの汽車を待つとかなり時間があるので、一つとなりの駅まで歩くことにする

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となりの駅と言っても、そうそう近くは無いけれど

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途中、亀嵩分かれというバス停があった。よい名だ

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しまねっこ

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小一時間歩いて、出雲三成まで出てきた。

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ここは奥出雲町役場があるところ。砂の器に出てきた三成警察署は今は無く、三刀屋雲南警察署に統合され、三成警察署は三成広域交番になっているようだ。

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出雲三成駅は、観光案内所やお土産売り場を併設した立派な建物。仁多米、出雲蕎麦、舞茸をお土産に買った。こんな時期に仕事帰りにウロウロしているからには、せめて地元に出張旅費は落としていかなければ…

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出雲三成から宍道行の列車に乗る。宍道からは西へ…というところなのだが、乗り換え時間が少しあるので、車窓から見えた建物が立派で見にきてしまった。

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向かいに小学校があるから、おそらく、その小学校の旧校舎なのだろう

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駅に向かう途中、重要文化財の住宅の前を通ってみる

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寄るつもりは無かったのだが、少し覗きこむと、どうにも雰囲気が良い。ハタと考える。本当は宍道から12:24の列車に乗るつもりなのだけれど、12:58の特急に乗っても、西出雲には同じ時間にたどり着くようだ。特急料金くらいはいいだろう、と決めて、こんにちは

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おおこれは

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なかなか重厚な

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『八雲本陣』は、街道筋で栄えた宍道の本陣であり、母屋は重要文化財になっている。後に大正天皇が昼飯食べたり昭和天皇が寄ったり、その後旅館になり、というところのようだ

この手の豪邸はいろいろ見ているが、建物の良さはもちろん、かなりフリーダムな感じがなかなか良いのだ。

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当然、土地柄、松平不昧公の影があちこちチラつくんだけど、後から増築移築した部分、庭園に至るまで気合が入っていて、センスも非常に良くて、なんかこざっぱりしていて嫌味が無い。

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旅館にするためにあちこち増築もしてるので、やたらと廊下が長くて広くて。

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大広間とか、客室とか、なんかそのまんまになってて、自由に寛いでいってください、という雰囲気。なんだか鷹揚なのである

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煙草盆は旅館のころに使われていたものだろうか

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この施設、極力案内が無いのも素晴らしい。やたらと案内看板があったり、酷いところになると、解説音声がずっと流れていたりするじゃないですか。あれ大嫌い。そういうのが無くて、よろしい。他に人がいないのでのんびりさせてもらう

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大正天皇が来て昼飯食べたのが1907年。地方のそういうのは大抵、だいぶ前に知らされて、増築したり調度を新調したり大騒ぎなんだよね。いくらかの下賜金は出るらしいのだけれど、とても見合うものでは無いらしい。この時、東郷平八郎随行したそうで、当然どこでも大人気、『日露大勝利』の屏風が時代を感じさせるだった

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堪能させていただきました。宍道駅に戻る。宍道の駅は、JR西日本のラグジュアリートレイン『瑞風』を歓迎する看板があちこちに。次回の立ち寄りは2020年12月と書いてあったが、ちゃんと来るのだろうか…

特急に乗り、出雲市に向かい、乗り換えて西出雲へ。

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出雲民藝館は長いアプローチから気持ちが上がる。

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長屋門を潜ると正面に豪農山本家が生活を続けている母屋、その右隣、米蔵を改装した本館

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ここにはほんものの暮らしに根付いた民藝の数々が並び、静かな空間で存分に民藝の精神を受け止める

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広い空間にゆったりと民藝が並ぶ本館も良いし

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木材蔵を改装した西館、河井寛次郎が絶賛したが今は途絶えた、出雲大津の素陶器のかまどなどが沢山並ぶ空間も、また良い

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西館前で休憩し

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それから、売店へ。松江の民藝の名店『objects』セレクションで、島根県の各窯の陶器をはじめとした民藝が並び、出雲民藝館は、出雲の民藝館であるぞ、と誇っているのだった。

出雲民藝館には3年前にも来ていたのだけれど、そのときは年始で休館中であり。ようやく訪問できました 

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 あの時はどこかにマイルで来たのだけれど、なかなか濃密で楽しい旅だった 

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 西出雲駅に戻る。道すがらの家々や田んぼや畑などを見ていると、出雲地方は豊かなのだなあ…と改めて思う。出雲市駅で降りて、そばを食べに行ったのだが…

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臨時休業かな…。駅に戻る道すがらのアーケードには人がいない

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そんなアーケードの中の旭日酒造へ。

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コロナ対策で、試飲用の機械を1週間前に導入したらしい。おかみさんがなかなか良く喋る人で、100円でメダル6枚を売ってもらい、順に試飲。出雲大社の御神酒の「八千矛」が純米吟醸の丁寧な造りで、こんなに美味い御神酒もそうないのではないか。干支の名前を冠した日本酒だけ購入して出た。

骨董屋を覗き、しかし民藝の器はあまり見かけず、有田焼のよく見掛けるような赤絵のが多いかな。駅に戻ってバスで出雲空港へ。空港で軽く出雲そば。わりと美味しい

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16時10分のJAL便に乗り

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飛び立つと、宍道湖玉造温泉、松江、米子空港…と見えていた

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しばらくウトウトして目覚めると、栗東トレセンが見えていた

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羽田から帰宅し、作ってくれたカニクリームコロッケで晩御飯にして、夜は買ってきたお皿、出西窯のお皿に、甲府で買った桃を乗せる

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出張はつかれるが、ついでの旅は楽しい