酒田『こい勢』と村上『新多久』の幸せな一日
早起きして東京駅へ。6時8分の「とき」に乗り、新潟駅でいなほに乗り換える
車窓には冬の日本海が拡がる
酒田駅で降りた我々は
約束の地『こい勢』に向かうのだった
酒田『こい勢』でお寿司を食べる。ヤリイカ、ノドグロ、鱈の昆布締め、
サヨリ、ガサエビ、ウマズラハギ、
イワシ、ウニ、
鱈の白子、本マグロ大トロ、
ここまででお任せ10品3000円。鱈は昆布締めも白子も感動的で、今年は寒鱈まつりは中止ですが、この時期に酒田でタラが食べられて良かった…。3000円でいいのだろうか、毎度申し訳なくなる
さらにお好みで、北前ガニ、穴子、
サバ、バイ貝、
車海老黄身酢朧漬け、本マグロ赤身のヅケ、
生牡蠣に、ガサエビの唐揚げに、鱈のドンガラ汁も。
よくよく振り返るとやりすぎだな?身が詰まって頭から食べるガサエビはもちろん、鱈の汁がね、様々な部位が山ほど入ってて、鱈ってこんなに美味いんだな、と思ったですよ。こい勢、ごちそうさまでした
ちょっとバスに乗って山居倉庫へ
また戻って本間美術館をぶらり。
山居倉庫の資料館は休館、本間家旧本邸も休館、土門拳美術館も休館、あちこちお休みなので、本当に寿司だけ食べに来たぞ、というテイで、酒田をあとにします。
そして着いたのは村上である
本来ならばANAの便で庄内空港に着いて、そこから酒田をまわって村上へ…のはずだったから、ある程度ルートとしては妥当性があったんだけれど。
ANAの羽田庄内便がコロナの影響で減便されてしまい…本当に寿司を食べるためだけに村上酒田間を往復するぞ、ということになった。しかし、こい勢のお寿司は食べたかったのだ
お茶屋さんをめぐりつつ村上の街をぶらぶら。こちらは常盤園
さらに九重園。建物の中まで見せてくれる。村上は、このように町屋の中を見せてくれるお店も多い
本日のお宿に到着。村上の泊まりは『よはくや』さん。
宿については明日紹介するとして…あれだけお昼に食べたのに、夜は夜でもちろん、食べるのである。はい、こちら、『新多久』である
さて、やっていきます
カウンターが良いです、とお願いしたら、ちゃんと2人でカウンターに通されて、
しかもこの日、どうも私たち2人しかお客がいなかったみたいなのだ…なんという贅沢…
先付のメガニから折重なる各部位が魅力的で
八寸は穴子わかめ巻きやら虹鱒燻製やらヒラメの昆布巻きやら全て美味いが、手間暇かけて炊き上げた黒豆に良さに驚愕。
葛打ちしたキジハタの椀の上品さ、にんじんがバカに甘い。
そして刺身の旨味の引き出しも驚くばかり。醤油もいいが笹川流れの塩がまた合う
火を通したボタンエビの可能性が広がる葛打ち、
真鱈の白子は炙って餅米と混ぜ混ぜすると「手が止まらない」って本当にあるんだという気持ちに。
佐渡の寒鰤は干して濃縮された旨味に焼き魚の魅力を再発見し、
安田の真鴨はネギしょってやってくる
粟島のズワイガニは3つの調理が一皿の上で競演し蒸すだけなんて勿体なかった、
三条の猪とか食感も様々な食材が里芋に包まれ、
岩船コシヒカリがもうねー、寒鰤のヅケが事ここに至っても出てきたり、塩つけただけで最高だったり、いくらでも食えるよ米は美味すぎる
残ったご飯は塩結びにしてもらい、
牛蒡アイスで締め。どれもこれも感動的に美味いコースを、距離を取ったカウンターで、というか、そもそも店は2人だけの貸切状態で、いろんな話を聴きながらゆっくり味わう、それはそれは贅沢で楽しい時間だった。
和食というのはこんなに美味しく、そして楽しいんだ、ということを思い知らさた。村上や新潟の素晴らしい食材が、様々な表情で旨味を引き出され、次から次に押し寄せてくる。驚きと発見の連続。端的に言って最高。ずっと記憶に留めたいがまた新鮮に味わうためにすぐ忘れたい。
ちなみに。酒を一ヶ月ぶりにまともに飲んだんですね、村上の〆張鶴に大洋盛。あれだけ飲んでた酒、しばらく飲まないと、まあ飲まなくてもやってけるよね?と思ってたけど。ごめん、やっぱり、日本酒は美味いわ…。
ミシュラン一つ星、10,000円のコース。しかし、到底、10,000円で一般化してよいコースではない。このために旅行しても良い、そう思わせる。
私は「美味しいもの大好き」な顔をしながら、ごはんそのものが1人1万円を超すような食事は一昨年くらいまであまりしたことがなくて、5000円くらいでコスパも良くてとても美味しいもの、みたいなのが、自分の中の幸せの基準になっていたけれど。去年あたりから色々と食べて、そして「新多久」に来てしまい、世界が拡がるような思いをしている。
例えば、自分の狭い経験の中だけど、大阪『れだん』3900円と、米子『桔梗屋』5000円と、村上『新多久』10000円を比べると、あ、なるほど、みたいな感慨があるのだ。飛び道具と外連と本寸法の中の刷新とでも言うか…本来同じ土俵で比べるものじゃないし、もちろん『れだん』大好きで今後も通うのだが、やはり、目指すところの違いというか。こういうの、うまく言語化できるようになりたいな。
味がめっぽう美味しいのは勿論、この材料がこんな味にとか、組み合わせで何倍も美味くなるとか、食材、調理法、見た目や器や歴史や文脈までも、自分の中の経験や知識の引き出しや板さんとの会話の中で理解が深まり、解像度が高まって、面白くなっていく。そう、なにより、楽しかったのだ、新多久は。
最近は、こういう「楽しさ」を南インド料理や現地系中国料理に求めがちで、それは、よく知らないものを知るが故の楽しさもあると思っていたのだけれど。ある程度は知っていたはずの和食にこんな「楽しさ」があるとは。私はまだ何も知らなかった。そしてもっと色々知りたくなる。
そして、しかし、和食でそれをやろうとすると、間違い無くお金が掛かるのだ…
そんなこんなをつらつら考える、宿への道
なんにしても、今日はやりすぎた。やりすぎて幸せ。お宿では
『角銀』の桜餅を食べながら、宿で茶をしばきます。地元の茶はさっきからあちこちでいただいておりますので、ここは雲南紅茶で…
在華坊(@zaikabou)/2021年01月16日 - Twilog