日毎に敵と懶惰に戦う

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相国寺承天閣美術館『若冲展』

若い男性が、今出川駅の自動改札の扉が開くのももどかしげに、飛び出し、階段を駆け上がっていく。そんなに急いでも、と内心笑いつつ、しかし、自分の足も自然と、だんだん、早まる。そう、相国寺承天閣美術館で待ちに待った『若冲展』だ。このために京都まで来たのだ…。
http://jakuchu.jp/jotenkaku/
去年、皇居の三の丸尚蔵館で、5回に分けて見た、伊藤若冲の『動植綵絵
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060408/1144506035
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060506/1146924216
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060617/1150553132
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060722/1153653755
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20060902/1157206029
平成11年からの修復が終わったことを受けて、だったのであり。その素晴らしい色彩、構図、とにかく息を呑んだのだが。現在、宮内庁所蔵になっているこの30幅の『動植綵絵』であるけれど、もとからそうだったのではない。元は、伊藤若冲が『釈迦三尊像』と共に、この相国寺に寄贈したもの。明治時代に寺領を守るために明治時代に皇室に献上された後、120年間、『釈迦三尊像』と離れ離れになっていたのだ。
今回、特別に、何十年か越しの願いが適い、この『動植綵絵』を借りられることになって、『若冲展』が実現した。約3週間の短い期間で。昭和59年に建造された承天閣美術館の建物は、何時の日か実現するかもしれないこの展示のための建物…だというのだから、くらくらするような話だ。これは万難を排しても見に行かねばなりますまいて。

到着したのが9時20分ごろ。10時から開場に備えて行列に並ぶつもりだったのだが、するするすんなりと中に入れた。後から聞いた話によれば、数日前から9時には開場していたらしい。おかげさまで、まったく行列せずに、中へ。
鹿苑寺の襖絵などが展示されている第一展示室から、釈迦三尊像動植綵絵の第二展示室へは一方通行なので、じっくり鑑賞して次に進まないといけない。第一展示室からしてたいした混雑で、作品を見る最前列をキープするために、遅々とした行列に張り付く。しかし、おかげでじっくりと見れるので結構です。主に水墨画を中心にしたこの展示室では、「鹿苑寺大書院障壁画」が原寸大に再現された床の間などで見ることが出来、虫食いまで緻密に描写された葡萄の葉、月夜の芭蕉、そのほか、鶴やら龍やら鯉やら虎やら亀やら、いずれも素晴らしい。超絶技巧な筆使いと墨の濃淡が本当に天才であるなあ。
それから、私、若冲の描く伏見人形の惚けた味が大好きで、ここでもひとつ見られて嬉しい。
第一展示室で1時間近くを過ごして、途中のスペースで少し落ち着きを取り戻すべく、椅子に座って休憩。よし、準備は万端。第二展示室に進みましょう。
第二展示室に一歩足を踏み入れると…うわっ………。ああ………。言葉も無い。中央に釈迦三尊像を置き、その左右の壁に、ずらり、と並ぶ動植綵絵。その圧倒的な迫力!まさに圧巻。ああ、もう、泣きそう…つか、泣いた。こんな感じ。
http://pencil-jp.net/vrpodcast/archives/data/20070512/archive.html
勿論、この壁に幾重にも張り付く人人、人の波なんだけれども。そして係員の『立ち止まらずに…』という声はうるさいほどに響いているんだけれども。もう、まったく、気にならない。この部屋の中央に立ち、一人でくるくる廻りながら、圧倒され続ける。幸せだ。
一つずつ、端からじっくり、人波を掻き分けて鑑賞していく。菊花流水図がやっぱり素晴らしいなあ。もみじの燃えるような赤も、群れる鶏も、咲き乱れる牡丹も、いや、とにかく全部良い。
そして、今回の配置。全30幅の並べ方については学芸員の人が頑張って考えたらしいのだけれど、一枚の絵を見ていて、ふっ、と後ろを振り向くと、ちょうど真向かいの絵との対比で、その絵の意味が幾重にも拡がって見えてきたりして、なるほど、30幅全部揃うとはこういうことなのだ、といちいち感動しっぱなし。釈迦三尊像を中心に、そうだ、やはり、これは全部揃ってこそ、なんだな。
配置の件も含めて、大変素晴らしいエントリはこちらで
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1012
展示室内にはどんどん人が増えていくけれど、そして入場を制限しているみたいだけれど、何時まで経っても去りがたく、中央に戻って全体を見回しては、気になった絵に突進、を繰り返して時を過ごす。もう何十年、全部揃うことはないかもしれないのだ。それを思うと、まったくもって去りがたく…。
1時間近くいただろうか、未練を断ち切って、開場を後にする。ありがとう、ありがとう。2500円のカタログは勿論買った。

開場出てすぐのお店ではいろいろなグッズを販売していて、絵葉書、クリアファイル、そしててぬぐいなど、だいぶん買い込んでしまった。この時点で11時30分ごろ。

入場するための行列が長くなっていて、すでに入場までは100分待ちになっていた。


なお、より詳しい、ちゃんとしたレビューを見たい人は以下のリンクを見てください。
http://b.hatena.ne.jp/zaikabou/%e8%8b%a5%e5%86%b2/