日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

六本木アートナイト

田町で下車、この時点で9時を廻っている。ここから六本木ヒルズに向かう港区のコミュニティバスちぃばす』は、普段ならばとっくに終わっている時間なのだけれど、この日は延長営業している。

そう、この日は、『六本木アートナイト』というイベントがあるからなのです
六本木アートナイト
美術館がどんどん増えて、近年急に『アートの街』になった六本木で、夜通し開かれるアートイベント。ロンドンやパリでは、年に一回、一晩中美術館などが開館し、公共交通機関も終夜運転し…というイベントがあり、日本でもそれにあやかったイベントをやってみましょう、ということらしい。まだ初回なので、なかなか広がりがなかったり、運営がグダグダだったり、問題点も見えることになるイベントになるだろうけれど…なんだかんだで六本木のアート周辺に思い入れのある身としては、とりあえず参加するしかないではありませんか。
まず企画の趣旨から言えば、六本木のメインの美術館『森美術館』『サントリー美術館』『国立新美術館』の3つは終夜営業しなければ話にならないと思うのだけれど、一番期待できそうな『森美術館』はよりによって展示替えの最中で休館。『サントリー美術館』と『国立新美術館』は営業時間を延長したものの、それぞれ11時、10時でおしまい。うーむ、まあ初回ですからね、次回以降があればがんばっていただきたい。その代わり、六本木ヒルズではいろいろなアートイベントがおこなわれていた。
アリーナでは、ヤノベケンジの『ジャイアント・トラやんの冒険』7.2mのトラやんが鎮座まします。



会場に到着したのは10時前。もしかしたら閑散としているのでは?と思っていたが、屋台がたくさん出ているアリーナにはかなりの人数がつめかけている。ちょうど10時に、トラやんが火を噴いて、観客大盛り上がり!いっせいにカメラを構えて次に火を噴くのを待ち構えていたけれど、ちょっとだけしか噴かなかった。会場全体が放火魔のように心ひとつにしていたのだけれど…。10時からはトークショーがはじまって、例の『トラやんの世界』の映像が流されたりしていた。ヤノベケンジの作品は、ほんといろんなところで見るな
「ヤノベケンジ」の検索結果 - 日毎に敵と懶惰に戦う
ある意味、使い勝手が良い…のかもしれない。
さて、ヒルズ内の別の場所へ。毛利庭園では、先日横浜トリエンナーレの会場、三渓園で見た
横浜トリエンナーレ2008 そのほかの会場編 - 日毎に敵と懶惰に戦う
霧のインスタレーションの中谷芙二子による作品が。ここでもやはり、毛利庭園にもうもうたる霧を発生させていた。毛利庭園の池、桜、そして照明、霧が、幻想的な空間を作り出していて、とても素敵になっている。




これ以外にも、六本木ヒルズ内にはさまざまな作品が


横浜や妻有でもおなじみ、丸山純子の花もありますね

日比野克彦プロデュースで、2m四方のキューブに、いろいろな人がアート作品を展示する企画も

11時をまわったところで、六本木ヒルズから、東京ミッドタウンへ移動。まだまだこの時間だと…というか、週末の六本木なんて、アートナイトだろうとなんだろうと、一晩中街には人がいますな。東京ミッドタウンでもアートキューブがいくつか

さて、こちらに移動してきたのは、24時30分から、アトリウムで『Tokyo Midtown ART BOX』という企画があり、立川談春が落語をやるというからなんですね。この時点で11時過ぎだし、整理券を配って云々という話も聞いていないから、まだ大丈夫だろうけれどちょっと様子を見て…と思ったら。なんか、入口近くに行列が。聞けば、すでに60席のいす席は整理券を配って満席になっており、これは立ち見の200人のための行列だと言う。
それではならぶしかありません。こんな『整理券のようなもの』を貰って

行列に。それにしても今夜は寒い。平年の気温よりもかなり低い。もっと暖かければ…と思いつつ、しかし厚着をしてきて良かった。じっと待つ。並んでいる間も行列は増えるのだけれど、どうも、さっきの『整理券のようなもの』を配る人も、なんであたしはこんなことをやらにゃならんのだ…と無言で言っているような不機嫌な面持ち。『整理券のようなもの』を貰ったはいいけれど、時おりあるアナウンスも『持っていれば入れる』と言ってみたり『持っていれば8割方入れる』といってみたり、200人制限だからそれ以上は並んでも入れませんと言ってみたり、なんだか並んでいて不安になってくる。
開場時間の24時を20分以上過ぎてから、ようやく行列は動き出して、すでに照明が落とされて暗くなっているミッドタウン内を誘導され、アトリウムへ。座席はすでに満員、立ち見と言われてもかなりのぎゅうぎゅうつめ。こんなに大勢来ることを予想していなかったのかしらねえ。落語のスタートも20分押しになっていて、なんだかなあ、と言うような若干不穏な空気。

会場はほぼ真っ暗、サーチライトがきらめき、窓の外の芝生広場では、風に揺れるたくさんの光る風船がゆれている。
ここで登場した(スポットライトは点灯しました)談春。開口一番、すみませんね、ずいぶん待たせたみたいで…寒い中並んでたんでしょう?いろいろあってイライラしていると思いますが、私が一番イライラしています、と言って会場爆笑、空気はひとつに。さすがです。六本木アートナイトですか、意義も目的もさっぱりわかりませんが、などと言いつつ、すぐに噺に。死神だった。例の呪文は『あじゃらかもくれんアートナイト、深夜に落語ってどうなのよ』だった…。
死神の下げはいろいろあるけれど、なるほど、ある意味“死なない"下げもあるのだな。なるほど。噺には大変満足、いいもんが聞けました。この後もジャズライブなどが続くみたいだけれど、私は芝生広場へ。気温はますます下がっている。震えながら見渡し、そこに広がっているのは


ああ、一面、風に揺れる光る風船。そう、まるで、『死神』の最後、一面ろうそくの明かりが広がるような。談春、うまいなあ。芝生広場に下りる




ゆらゆら揺れる風船の中を歩き回ると、なにか、幻の中にいるような気分だ。しんしんと冷え込む静かな芝生に思い思いに座り込む人たちもおり。不思議な体験。
さて、寒い。とにかく寒い。建物の中に戻ろう。先ほどの空間ではDJイベントか何かをしていたが、興味を惹かれたのは、暗闇に浮かび上がるエスカレータだった。


時間は2時をいくらか廻ったところ。今回のイベントに合わせて、ミッドタウンの中のスタバが終夜営業したりしているけれど

なにしろ六本木なので、こんな時間でもいくらでも開いている店はあるよなあ。光麺でちょっと腹ごしらえ。六本木ヒルズに戻る。タリーズも終夜営業か

ヒルズのアリーナ、3時を前にしてさすがに人は減っていたけれど、それなりの人数がぶらぶらと歩き回っている。3時から、ジャイアント・トラやんが歩き回って、再び火を噴いていた




正面から撮影したので、よくわかんないけど…。それから、のすのす歩き回るトラやん



まあしかし、それなりにみんな盛り上がって写真を撮ったりしているのだけれど、下の人が一生懸命運転しているなあ、みたいな、静かな雰囲気であり。断片的にトラやんが動いたり、暗黒舞踏のようなことが行われていたり、イマイチ、盛り上がりに欠けておるなあ、というのが正直な印象。散漫なんですよね。まあ、来年以降があれば、がんばってほしいなあ、とは思うのであります…。
さて、本日、展望台は6時まで特別営業しているというので、上ってみました。ワンコイン500円。

で、まあ、予想通り…というか、寒さに震えて避難してきた人たちの仮眠所のようになっており、さながら難民キャンプの様相。でも、夜景はとにかく綺麗だったなあ…



日の出までいようかとも思ったけれど、疲れたので始発で帰ろう。実は、六本木から渋谷へは1時間に3本、新宿は1時間に2本、池袋と東京へは1時間に1本、それぞれ無料シャトルバスが運行されているのだった。


4時20分の東京行きバスにのり、ゆったりと東京駅へ。こういう足回りをきちんとしたのはえらいと思います。駐車場も、一晩無料で開放していたみたいだし。とにかく、前例の無いことでいろいろ頑張ったとは思うよ。来年以降もあるのなら、もっとがんばってほしいなあ、まずは3つの美術館の終夜営業は絶対必須、と思ったのでした。京浜東北線に乗って帰宅。
土曜日の昼間から夜にかけてのイベントについては、『弐代目・青い日記帳』のTakさんが詳しかったので、そちらも是非。展示作品の写真も多いし。ドゥ・ジェンジュンの「私はあなたの跡を消す」は確かに面白かった
「六本木アートナイト」|弐代目・青い日記帳
作品の大きな写真がたくさん!デイライトバウンドさんとこの記事がとっても素敵。
http://d.hatena.ne.jp/hey11pop/20090329/1238343322