日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

駆け足で巡るあいちトリエンナーレ2010

会期が31日までと閉会が迫る中、あいちトリエンナーレに行ってきた。午後から行動開始して20時まで、とにかく一通り見て回る…ということになりそう。本来はパフォーマンスが充実しているんだけれど、スケジュールも合わないし時間が無いので、その方面への言及は無しです。あと、一番好きな高嶺格の作品は期間限定でもう終わっているんだね、残念。
名古屋駅のチケットショップで国際美術展の入場券を購入(1800円→1200円)して、まずは地下鉄で一駅、伏見へ。駅から各会場に向かう案内がきちんとしており、街の辻には案内人がちゃんと立っており、相当お金かけてやってるんだなー、というのが良く分かる。会場の場所も気合いが入っているし、最近迷走中の横浜トリエンナーレの、一番いろいろ豪華だった第1回の開催よりも、よほど気合いが入っているようだ。

会場はいくつかに分散しており、まずはその一つ、名古屋市美術館へ。見ればすぐわかる通り、黒川紀章先生でござるよ

ここの会場は全面撮影禁止。ぱっと見インパクトがあるのは、細いチューブを縦横に這わせ、血を思わせる赤い液体が動いている塩田千春の作品。ツァイ・ミンリャンの作品がとても変だ。迷路のようなまっ白い空間に沢山の小さな個室、個室の中には、ベッドと、テレビと、トイレットペーパーと、ごみ箱。そう、イメージとしてはちょんの間か何かか。どの部屋のテレビも、登り窯のようなところの中に置かれた、朽ちたベッドを延々と写しだすだけ。そこで行われることが想起される生々しい出来事と、対極な無菌室のような空間と、画面に映し出される土の香り、それぞれがミスマッチで、ユーモラスなような、怖いような。トム・フリードマンは雑多な感じ。
2階に行くと銀色の無数の破片が舞い落ちるジュラティンの作品がきらきら綺麗で、それをかき集めてまたまき散らせる係の人が、パフォーマンスみたいで楽しそうで良かった。あとは地下の島袋道浩の漁村美術。篠島という漁村の島で執拗に収集した、民俗蒐集的な。醤油画のような美術体系の偽史を語るものかな、と一瞬思ったがそうではなく。構成の完成度が高い。この会場はこんなところです。常設展に荒川修作とか河原温とかの作品が『郷土の美術』として展示されており、なるほど、確かに愛知の人だよなあ…。なんか『郷土』から想起されるイメージとかけ離れているけれど。
街の中にもちょっとした作品展示場があったり。これは市美術館からほど近い二葉ビル

それぞれ見ながら歩いていけば、ほとんど交通機関を使わずに全部見れるようになっている。結構沢山歩くけどね。会場間を行き来するベロタクシーとか、レンタサイクルとかもありました。街中に点在している作品は無料のもの、有料のものがあり、中央広小路ビルは有料だったな


『マッキントッシュのプロセッサを疑人的に再創造したユーモア溢れる作品≪Man OS1≫』ってのは、いや面白いけど、仮装大賞じゃないんだから…。ドイツの人らしいけれど、もしもドイツに仮装大賞があったら、この人達この作品を『アート』として作ろうとは思わなかったんじゃないか。
栄の繁華街のほうに歩いて行くと、まもなく役割を終えるテレビ塔が見えて

メイン会場のオアシス21愛知芸術文化センター

オアシス21の屋上に韓国のおばちゃんの団体さんと一緒に登ってみれば、草間彌生祭り



プリウス草間彌生

会場内も草間彌生


うはは。草間彌生祭り。愛知芸術文化センターは、8階と10階をメインに、他のフロアにもいろいろ展示があり、かなり集約されている。ここでインパクトがあったのは、蔡國強の作品、水槽を泳ぐ人物の影を巨大な和紙に写し取ったあと、火薬で焼いた作品がとても迫力があって凄かったですね。ちゃんと蔡國強に気合いの入った新作作って貰うんだからたいしたもんだ。志賀理江子は巧いなあ、と。ジャン・ホァンの巨人とか、三沢厚彦とか


これ以外にも豊嶋秀樹が構成した回廊に20体もの作品があり。とにかく、この会場にはでっかくて派手なもの集めてみました、って感じかなー。あんまり一貫性は無いけれど。あ、この建物の11階の回廊から、オアシス21のほうが良く見えました

オリヴァー・へリングの作品が面白かった

世界の3つの老人ホームで、老人たちが行うパフォーマンスの映像。文句無しで楽しい、思わず笑ってしまう。そのほか、タチアナ・トゥールヴェの意味深な小部屋、なんか心に引っかかるものがある。非常に意味深。
以下はドボククラスタ向け情報。愛知芸術文化センターのエスカレータはとても素敵

地下のギャラリーで展示していた『中川運河-忘れ去られた都市の風景-』って作品に、ぐっときました!
…さて


次の会場、長者町会場に移動する途中、ちょっと疲れたのでコメダ珈琲で一休み。カフェオレとミニシロノワールで元気が出たので、また廻るぞ。長者町は、日本の三大繊維街。そう、繊維街と聞いてあなたも予想する通り、どちらかと言うと寂れてしまっている。名古屋駅と栄、二つの繁華街の真ん中にありながら、他と少し違う時間が流れているような地域になっている。その古い建物をリノベしたり、ちょっとした街角、倉庫など、街中に点在する沢山の会場で構成されているのが、今回のあいちトリエンナーレの『長者町会場』なわけですね。前回の横浜トリエンナーレにおいて、黄金町バザールをちゃんとトリエンナーレに組み込んだ感じだ。規模とクオリティは比べ物にならんけどな!
特にこの長者町会場以降、今回のあいちトリエンナーレは、横浜の2008は駄目だったなあ、という感想ばかり浮かんでしまうのですよ…。
雑多な雰囲気で、街中を歩いているだけでなかなか楽しい




長者町繊維卸会館は

まず、建物の味わいが素晴らしい

淺井裕介

ナウィン・ラワンチャイクンは、街で働く、住むお年寄りにインタビューした映像と、そしてこの絵がなかなか素敵でねえ

とにかく居心地の良い展示空間なのだな。ボランティアの人があちこちにいて、この卸会館にいたお年寄り男女と若い衆『もう疲れちゃったよ(笑)』『これで最後?』『まだ明後日も』『人が足りないみたいで』『市役所の人が毎日スタッフやってる(笑)』なんて話を、実に楽しそうにしていたのがとても良い感じだ。ここ以外にも味わいのある建物が多数。超急階段の不思議な構造、スターネットジャパンビル




エルメ長者町は階段の先に三畳間だけがあったりする謎の間取りで、ちょんの間かなにか?と思ったのだけれど、繊維問屋の宿舎だったそうな。その狭くて暗い部屋で上映されているのが、アデル・アブデスメッドの作品、闘犬と鶏と蛇と蛙とサソリとタランチュラなどなど…が延々と死闘を繰り広げている映像で、めちゃくちゃ怖い(笑)
旧玉屋ビルの山本高之の作品、子供がかわいい、のだけれどかわいいの収まらない何か

中愛株式会社の地下で上映されている映像のクオリティがとても高く、お客さんもすし詰めになっていた。全部見ている時間はとても無く…。あとは、綿覚ビルに展示されていた、これはあいちトリエンナーレの一部ではないらしいのだけれど、91年の名古屋国際ビエンナーレでグランプリになった蔡文穎の『砂漠の泉』は凄い。とまあ、こんな感じで

長者町会場は極めて面白かった。さらに歩いて納屋橋会場。ここは倉庫の建物1つで開催


ここは撮影禁止。事前に評判を聞いていた梅田宏明の作品、30分ほど並んだけれど鑑賞。目を閉じて光を見る作品で、白黒とカラーの2つを見ることができる。非常に強烈。いままで体験したことが無い経験をすることができる。小泉明郎はいつもの手法で。非常に面白いのだけれど、ちょっと、演劇チックすぎるところがやや萎えるなあ。小金沢健人の映像はぼんやり見てると楽しいです。カーメン・ストヤノフの映像、おっさんが電波演説をやっている様子を延々写した、モンドなフィルム。なんだこりゃ。スン・ユァン+ボン・ユゥの作品、窓が開いて本が飛んでくる、大仕掛けの舞台装置と、本が1冊飛んでくるだけの、なんだかよくわかんなさ。バカバカしくて面白い。とにかく、この会場は非常に密度が濃くて、満足できる内容だった。
一通り見回って、12時からはじめてもう7時過ぎ。これでも相当速足だったので、一日ではなかなか辛い鑑賞ですね。それでも、満足度は高くて楽しいトリエンナーレでした。2008年の横浜トリエンナーレと、いろいろ比べながら見たなあ
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会期はあと2日、しかもお天気も悪いですが、何かの参考になりましたら
特に山本高之や小泉明郎の作品について、とても丁寧に説明されてて良い感じだったので、リンクさせていただきます
愛知トリエンナーレ - OUT-1 FILM