日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

水戸芸術館『高嶺格のクールジャパン』茨城県立近代美術館『二年後。自然と芸術,そしてレクイエム』

7時前に家を出て、東京駅へ。本日は水戸に向かうのだけれど、バスで行くことにします。八重洲南口から出る水戸行の高速バス。水戸芸術館の目の前のバス停に止まってくれるので、特急で行くのと実質あまり変わらないし、回数券(2枚組)だと片道1850円と大変、お安いのです。

首都高速から常磐道に入り、渋滞もなく、東京駅から1時間45分で、水戸芸術館最寄りのバス停『泉町一丁目』へ。

さて、水戸芸術館高嶺格のクールジャパン』を見ます
水戸芸術館|美術|高嶺格のクールジャパン

なんと居心地の悪い展覧会なんだろう。いまの日本の社会状況、空気に、無自覚で馴染んでいる状況を曝け出され、抉り出されて、ぐりぐりと内から責められていくかのようだ。
最初のいくつかの部屋、わりとありがちだよね、とどこか突き放して、微笑みながら上から目線で見ていた自分、それが、『ジャパンシンドロームの部屋』の正面から向きあうほどに辛くなる映像で、それまでの部屋の印象がボディブローのように効いてくる。
最後の『トランジットの部屋』は、ビッグブロウジョブや鹿児島エスペラント的な仕掛けなのだが、冥界から呼んでいるような咆哮、意味不明の映像、ゲシュタルト崩壊する再稼働反対、空疎に平和を訴える合唱、冗談とも真剣ともつかぬ渾然一体の混沌で、身の置き場を失ってポカンと眺めていた。
展示物の空々しさばかりでなく、会場全体の、たいへんチープな構成の寒々しさ、解説ペーパーの白々しい嘘、部屋を進むごとに身に絡まる、前の見えない黒い柔らかい壁、いろんなものが、とにかく、不安と居心地の悪さを演出している。特に白い『ガマンの部屋』、我慢しなさい、の声が延々と聞こえてくるあの部屋の監視員は、わたし、やりたくないなあ…と思った。
個別に言えば、やはり『ジャパンシンドローム』でしょう。水戸、関西、山口で、商店、飲食店、動物園などに行き、放射能の影響を聞いて交わした会話を、舞台で再現した映像。地域、個人による反応の温度差を見るとこで、自分の今の立ち位置、考えについての再考を迫られるのです。
会期も残り少ないですが、やはり、人を選んでお勧めする展覧会かな、と思いました。水戸芸術館高嶺格のクールジャパン』カタログは会期終了後の3月11日発行2800円ですが、今なら、2300円で予約すると、送料込みで送ってくれるそうです。
高嶺格は、やはり、横浜での展覧会がいまでも印象に強く残っている。これ以外の高嶺格体験についても言及してますので、併せてお読みください
横浜美術館 高嶺格『とおくてよくみえない』の不穏さ - 日毎に敵と懶惰に戦う
美術館を出て、あるいて千波湖の湖畔に出る。ハクチョウがたくさん


茨城県立近代美術館『二年後。自然と芸術,そしてレクイエム』を見る
企画展 | 茨城県近代美術館では、茨城ゆかりの作家、横山大観・小川芋銭・中村彝をはじめ、日本と西洋の近代美術作品を紹介しています。

横山大観『生々流転』が展示替無しで見れるのは、東近美でもまず無い、珍しい機会。この作品、1923年9月1日から始まった院展の出品であり、関東大震災により、開始3時間で急遽閉鎖されたという。河口龍夫の震災後の作品が目を惹く。津波が襲った海岸で拾った貝がカラフルに成長した作品など。中西夏之の作品は、今年の作、展覧会用に作ったものなのかな?ロビーに展示されている

関東大震災阪神大震災、そして東日本大震災に関連する作品や、揺れる大地、自然との曖昧な境界などをテーマにした作品が並びの、やや生硬だけど、なかなか充実した内容でした。『川ー水辺の風景』をテーマにした所蔵品展と、関連性が高く、あわせて見ておきたい。常設のほうでは、木村武山の彩色杉戸絵が迫力あり。武山は大観、春草、観山などと共に北茨城の五浦に移転してる。須磨の内田信也の豪邸のために描いた杉戸絵、阪神大震災でお屋敷は解体されたけど、絵は無事で茨城に引き取られ、今回の震災も無事に乗り越えての展示。全25面、豪華でした。
美術館内では、ユニセフの写真展をやっていたり、茨城県内の被害の写真展スライドの上映もあったり。東北三県に隠れがちですが、茨城の東日本大震災の被害の大きさ、あまり注目されないゆえの微妙な立場も、改めて感じたのでした。茨城県立近代美術館にも、敢えて残しておく傷跡が。ロビーにある彫像が倒れて傷ついた床を、そのまま残しておくそうだ

中村彝の新築再現アトリエも見てから美術館を離れ、水戸駅へ。駅ビルにある、常陸野ネストビールの店『True Brew』で昼飯

またバスに乗って東京へ…なんか、帰りのバスはかなり余分に時間がかかるんだね。途中の八潮でつくばエクスプレスに乗り継ぎができるというので、乗り継ぎ切符100円を購入し


秋葉原へ。ちょっと用事を済ませて一旦帰宅し、また出て、横浜にぎわい座立川談春の一門会

幕が上がって、師匠に弟子の二つ目2人、前座3人並んで御挨拶。前座、春太郎の道具屋後で、前座と師匠の違いを見せます、と言って余計なくすぐり無しで前座噺の子ほめをやる談春師匠、親切と言うか、意地が悪いと言うか…。仲入後は春吾さんの持参金。狂気を隠しきれない感じで、なるほどイリュージョン、という。いろいろ聞いてみたい。トリの談春師匠の夢金、脂ののった、雪と寒さと貧しさがすぐ間近にあるような、素晴らしい夢金でありました。堪能しましたよ。
ちょっと酒房ぴーに寄り道して、帰宅したのであります。
在華坊(@zaikabou)/2013年02月09日 - Twilog