不思議の山形県立博物館と山形美術館、仙台「いたがき」、そして常磐線を下る
朝、起きたら6時4分。うわー、酒田から6時の列車に乗るはずだったのに!しかし慌てても仕方ありません…というか、新庄から山形の移動手段が新幹線になるだけである。昨日は5時起きであちこち動いて酒も随分飲んだからね…。しばらくふとんの中でウダウダ過ごして、身支度整えて、宿を出たのが7時30分。
宿のおばちゃん、出掛けに、車の中ででも食べてね、とおにぎりを持たせてくれた。ありがとうございます。宿の人、みなさん親切で、良い駅前旅館だ、白鳥荘。
速足で酒田駅へ。10年くらい前から更地になったままの駅前の土地も、ようやく開発が進むらしく
それにしても酒田、食べ物も美味いし素晴らしいところなのに、商店街の寂れっぷりとかなんとかならんもんなのか…。再来週、26日27日には寒鱈まつりがあるそうで、賑わうことでしょう。いずれにしてもまた来るぞ、酒田。
駅のNewDaysで宿で貰った以外の朝飯を調達しようと見てみたら、JAあまるめのおにぎりが売られており、さすが庄内。お米も特別栽培米とかつや姫とか使っていて、さすが庄内。調達して陸羽西線の車内で食べたら実にうまかった。
酒田から、だんだん雪深くなる車窓を眺めて新庄へ。
乗り換えの合間に何故か駅ビルに中にいるうさぎを眺めて
ふるさと納税の返礼品にこんなものくれるらしい、新庄
こんどは山形新幹線に乗車、山形へ。
山形は20年近く前、銀山温泉に行くために夜行バスを降りて以来で、その時はすぐに乗り換えてしまったから、ちゃんと駅周辺を散策したことが無いのだ。だから今回はちょっと散策していきましょう。
まずは駅から北に向かって、山形城址へ。最上義光像を眺めたりしつつ
山形県立博物館へ。ここは何と言っても、1992年に尾花沢で出土された国宝「縄文の女神」推し。博物館のあちらこちらに縄文の女神が…
しかし、肝心のご本尊は出開帳から戻ってきていなかったのです。東京国立博物館の縄文展から、さらにパリに巡回して、なんと展示は明日、14日からであると。ということは、今はこの博物館のどこかにいるのだね…。こちらはレプリカ
見られなかったのは残念だったけど、国宝附の土偶残欠もとても質が良いもので、造形が面白かった。
博物館は一通り見て、歴史の解説では江戸時代に多くが割かれているのだけれど、最上川の舟運やその出発点である大石田の賑わい、あるいは城下町山形の繁栄について詳しいのに、酒田の繁栄についてはほとんど触れられていない!
やはり庄内は現代でも別の国なのだろうか…。山形は村山(山形市)、最上(新庄市)、置賜(米沢市)、庄内(酒田市・鶴岡市)と4つの地区がありますが、庄内は独自文化色が強いのでありますね
博物館を出て、次に向かうは山形美術館。途中で見た二ノ丸東大手門は、復元時に台湾檜を使ったんだけど、山形は全国で最初に日華親善協会が設立された縁もあるのだとか。
で、山形美術館ですが、ここはなんと、県立ではないんですね。入ってすぐに服部敬雄の胸像があって、いろんなことを察するわけですが…
山形新聞社社長、山形のドン、服部天皇とも呼ばれ山形財界はもとより山形政界にも絶大な影響力をふるった服部敬雄が初代館長を務めた山形美術館。山形新聞副社長がフランスに買い付けに行っていたり、その成立経緯がなんか不思議な美術館なんである。お隣、秋田県の、平野政吉と秋田県立美術館の関係のような不思議さを感じさせる。
服部敬雄についてはちょっと検索しただけで面白エピソードがたくさん出てくるわけですが、その影響力で全国チェーンの進出を排除していたので、山形にマクドナルドが出来たのはモスクワより後、という話がなんか好き。
そして現在、そのコレクションの核になっているのが「長谷川コレクション」で、今回、その全貌を見せる特別展が開催されている。このコレクションを寄贈した長谷川吉郎は元山形銀行頭取で、父親も息子も山形銀行頭取で、銀行のトップが世襲ってどういうこっちゃという感じですが、元は江戸時代に紅花で財を成した、紅花五人衆の一角、長谷川一族の人であると。
この長谷川一族、第一回貴族院議員にもなった丸長・長谷川家、その後隆盛し明治大正の山形経済を牽引した丸山・長谷川家や丸谷・長谷川家があって、長谷川コレクションの長谷川吉郎は丸山・長谷川家なんだそうで。展覧会のキャプションにも「(丸の中に山の字)長谷川家」と何の説明もなく書かれているので、ナニコレ?と思ったんだけど、山形の人は説明なしでその意味を知っているんでしょうね…
ちなみに長谷川一族の一人で今は山形美術館監事の長谷川憲治氏、大学卒業直後は松下電器産業に就職したんですが、山形は松下電器の販売会社が特殊な法人になっている3県、山形・山梨・沖縄のうちのひとつで、山形パナソニックの会長の清野伸昭氏は山形商工会議所の会頭をしていて…
ま、そういう話はこれくらいにして…。今回の長谷川コレクション、与謝蕪村の奥の細道図屏風とか、近世日本絵画になかなか良いものがあり、見ごたえがある。そしてさらに驚いたのが吉野石膏のコレクション。西洋絵画の展覧会だと頻繁に見る吉野石膏コレクション、これは山形美術館に寄託されていて、常時4-50点、印象派からピカソまで展示されている。これが優品ばかりて、とても良かった。
美術館を出て、てくてく繁華街の七日町へ。ラスクで有名なシベールの店舗でパンを買い(よもや、その後すぐに民事再生になるとは)
また山形駅。11:59の仙山線快速に乗って、シベールの美味しいパンを食べながら、山寺、面白山の車窓を眺める。
次第に車内が混雑してきて、1時間15分ほどで仙台駅着。
仙台で美術館など覗き、夜はかの有名な『一心』にでも行きたいと思っていたけれっど、居酒屋は日曜日休み、芹沢銈介美術工芸館は長期休館中、などと知り、イマイチ気持ちが萎えまして…日を改めましょう。本日は駅から歩いてちょっとの『いたがき』へ。
仙台でくだものといえばいたがき、のようであり。広い店内いっぱいに、お手軽から高級までくだものが山盛り、くだもの好きなら幸せになれる店…。
店内にフルーツパーラー的なものもあったので、フルーツ盛りを。みかんいちごぶとうブルーベリーキウイりんご洋梨グレープフルーツパイナップルバナナ、ボリュームたっぷり美味しかった。
仙台駅で売っていたもの。むすび丸かわいい
その赤べこはいらすとやでは…
常磐線は東日本大震災の津波被害があった区間は徐々に復旧してきたが、福島第一原子力発電所の事故の影響で除染が必要な区間は、まだ不通になったまま。それを見ておこうと思った。
電車が亘理駅を出ると、見通しが良くなり、このあたりは津波で大きく浸水した場所。駅も内陸部に移設して復旧したところも多い。
電車内には、津波警報が発令された場合の注意書きがある。
福島県に入り、最初の駅、新地。
ここでは、東日本大震災の津波で、駅舎も、停まっていた列車も、大破してしまった。このあたりが復旧開通したのは2016年12月10日、まだ1年ちょっとしか経っていない。
南相馬市の原ノ町に到着、また電車を乗り換える。常磐線の北のほうの区間はまだ特急列車が走っていないのですね、すべて普通列車。ちょっと走ると浪江駅に到着。
ここから南は、まだ復旧していない区間になるので、代行バスに乗り換える。駅には空間線量計があり、0.295μSv/hと、それなりの値を示しており、ここで普通に生活していると年間の被ばく線量は1mSvを越える可能性がある。
列車の到着時間に合わせて代行バスはすぐに発車し、20人ほど乗せたバスが国道6号線を南下する。帰還困難区域を通過するのでバスの窓を開けることはできない。バスの中には写真撮影はルールとマナーを守って、という掲示がされていて、いろいろと思いを巡らせる。
帰還困難区域に入る場所には警察官が立っていて、区域内に入ると、窓が全部割れているコンビニや、車まですべて草に覆われた中古車販売店などが続く。そして、夕焼けの中に、福島第一原子力発電所も見えた。
ここは原発から2kmも無い場所なのですね。脇道に入る口は閉鎖されているか、通行証確認中の看板が立っているか。
ところどころに緊急時の避難路の案内があり、あちこちに空間線量計が設置されている。あれからもう8年経つのに。
30分弱で富岡駅到着。富岡から竜田までの一駅区間は、まだ去年の12月に復旧したばかり。富岡駅には売店と軽食のお店も併設されていた。ちょっとお土産を購入し、電車に。651系の特急用車両がいわきとの間を走っており、なんか贅沢な気分になる区間。
いわきで乗り換え。
すぐに特急に乗って帰宅しても良いけれど、ちょっと温泉にも入っていきたい。いわき湯本のあたりに日帰り入浴できる場所があるかネットで調べて、水戸行の普通列車を湯本で降りる。
湯本は以前、常磐ハワイアンセンターに来るのに降りて以来かな。駅前はポツポツお店や温泉宿があるが、全体的にちょっと暗いですね。歩いて最初に向かったのは、駅から徒歩15分の「上の湯」。
お値段は150円の破格値。設備的には銭湯そのままで、広くもないけれど、とびきり熱くて硫黄臭い風呂が素晴らしい。59℃の源泉そのままで、自分で水で薄めて調整すればいいみたいなんだけど、立派なお絵かきの人が入っていて薄めずらい…。
お客さんは入れ替わり立ち替わり入ってきて、サッと洗ってサッと浸かってサッと出て行く。紋々のお兄さん含め、お客さんはみんな知り合いみたいで、一言挨拶している。番台のおばちゃんもちょっと喋ったけど、いい味出していた。昔はこういう、銭湯的な温泉がいくつもあったけれどどんどん廃業していって、今残っているのはここだけだという。
上の湯の近くには良い感じの酒屋があって、小さなテーブルもあったから、角打ちもできるのかな、と思った。
続いて、駅方向に来た道を戻り、もう一軒はしごする。駅から徒歩8分くらいの「さはこの湯」は、温泉街の中心部にあるシンボル的な建物。
こちらも230円と安い。それほど広くはなく、露天ぶろなども無いが、いかにも観光地にありそうな入浴施設という風情。お湯は適温で、硫黄の香りもそれなりにして、幅広く入りやすそうな雰囲気だった。わりと混雑してたけど。わたしは上の湯が好きだけど、普通に一軒入るとしたら、ここですかね。
もう一軒、駅から徒歩2分のところに「みゆきの湯」もあり、ここは250円。
入ってないけれどいろいろ評判を調べると、硫黄臭はあまりなく、比較的すいてて綺麗らしい。風情はイマイチかもだけど、駅から近いのは良いですね。いずれにしろ、どこも安くてよいと思いました。
2軒はしごして、このまま駅に戻れば19時台の特急に乗れる。しかし腹も減った。駅までの道に気になる店があれば寄る、無かったら駅弁で済まそうということにして歩いていくと、「おかめ」という店で、おっ、となる。
扉を開けて、雰囲気で、おっ、これは当たりだ、と思いつつ店内を見渡すと、吉田類さん来店されましたと書いてあって、ちょっと悔しいような気分に…
しかしきっとよい店であることは間違いないでしょう
店内いっぱいにつるされたメニューから、かつおの刺身、もつ鍋、から揚げハーフ。お刺身たっぷり
から揚げもハーフとは思えない量で、いずれも美味しい
お酒は会津の栄川
なかなかよいお店でした。小一時間ほどでさっくり上がって、湯本駅に戻り
上野までは特急列車で。車内販売の常陸野ネストラガーで〆ます。
それにしても、E657系、ほんとに乗り心地素晴らしいなー。ゆるゆる揺られて居眠りするうちに上野、東京、品川。乗り換えて日が変わる前くらいに帰宅したのでした。おつかれさまでした