日毎に敵と懶惰に戦う

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『よし料理』の雲南料理を食べながら日本で食べる海外飯について考える

火曜日、6時に家を出て羽田空港に出て、7時25分の便で伊丹へ。バスで甲子園に向かい、仕事先へ。昼飯も近所。午後もお仕事して、阪神電車でなんばに出て、宿に荷物を置く。さて。

朝、Twittterで見掛けて気になった店に来てみた。日本橋駅からほど近い、雲南料理『よし料理 美味しい 一緒にたべましょう』である

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店主と奥さん…かな、2人でやっているお店は他にお客さんがおらず、テーブル席に通されて、さて、メニューを眺めるが

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おおお…これはちょっとよくわからないぞ。ワクワクしてきたぞ。素直に行くなら水餃子とか炒飯なのかもしれないけれど、これはよくわからないものから頼んでみよう…ということで、とりえあず、安めの1品料理を3品注文してみる。安いので量もそれほどないでしょう。

で、最初に出てきたのがこれ。これはいったい…?

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あぶらげに、何か調味料を絡めて炒めたものだろうか。やや香辛料の気配はあるけれど、それほど突飛な味ではなく、概ねちょっと変わった醤油味…という感じ。そして量が多い。山盛り。若干の不安を感じつつ、ビールのおつまみにして食べていたら、次に出てきたのがこれ

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えっ、ちょっと待って…こんなの頼んだっけ?フライドポテトが、ほぼ同じような味付けで、大量に出てきたよ…。これは腹に膨れる…もっといろいろ頼もうと思ったけど難しい。というか、これはいったいなんなんだ。

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わたしが頼んだのは『雲南蜂蜜山芋餅』『昆明老奶洋芋』『大理香炒豆泡』の3品。最初のが『大理香炒豆泡』で、次のが『昆明老奶洋芋』であろうことは察せされるのだが、写真と全然違うので確信が持てない…

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『大理香炒豆泡』が雲南油豆腐炒めで、『昆明老奶洋芋』が昆明ミルク風ジャガイモであることは値段からも間違いないだろう。前者はまだいいのだが、後者が、どこがミルク風なのかさっぱりわからない。

謎が深まりつつ、とにかく目の前にある豆腐と芋の山を一生懸命胃袋に片付けていると、出てきました、おそらく『雲南蜂蜜山芋餅』

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はちみつ山芋餅3つ。これはまあわかる。しかし、イモモチを甘い味付けにしたものかな?くらいにぼんやり考えていたんだけれど、粉が多すぎるのか、芋感が希薄で、パンケーキみたいな何か、になっているのだな…。

素直に水餃子か何かを頼んでおいた方が良かったのではないかという気持ちと、目の前に発生している事象への抑えきれない興奮を抱えながら、しかしとにかく、やたらと腹に膨れる3品をひたすら胃に流し込む。

さすがにこれだけだと落ち着かないので、ご飯ものも…ということで、『雲南菠萝飯』パイナップルチャンはんを追加。来ました。おー…?

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写真とだいぶ違うぞ…

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なんかインスタ映えしそうな写真と違って普通の炒飯が出てきた。これはこれで、具沢山でなかなか美味しかった。

申し訳ないけれど芋を少し残して、美味しかったですか、と不安そうに聞く奥さんに代金を払って、店を出る。

面白かった。面白かったけど、堪能しきれたかはわからん…。雲南に自分が求めるものとは違う感じだったが、何が受けるかはわからんからなぁ…。お店の人も同じ気持ちだろう…

私の食べたことのある雲南料理というと四谷三丁目の店くらいなのだが、あの時も、米線などわかりやすい名物はあったものの、雲南料理なのか…?みたいなものも結構あった 

zaikabou.hatenablog.com

ほかに雲南料理の知識と言えばNetflixの『美味の起源』で見た雲南料理だけど、あれはスゲーんだけど、食材とか加工法的に、日本で手軽にほどほどの価格でやるのは絶対に無理、というものばかりなんだよな。山羊チーズ、自生している木の実、苦菜の漬物、豚を丸焼きして取り出す凝固した血液、牛の胆汁、蟻、土蜂、漆…こんなもん、日本の雲南料理屋に気軽に出してくれなんて、どうやっても無理。

なので、わかりやすく雲南料理やろうとすると、米線くらいになっちゃう。でも、『よし料理』はそういう方向でもない。米線が無い。しかし、食材とかいろいろ調達が難しいので、日本で手軽に入る食材で雲南ぽい何かを出そうとしていることは感じられる。そこが非常に興味深い。

で、そこで、何をして「らしい」とするのか、という方向性自体が非常に興味深い。方向性としてはいろいろ考えられて、「クオリティに拘らず名物料理とされるものを出す」、「名物な食材を使って現地ではしないような調理法をする」、「手近にある物を現地では日常的な調理法で料理する」などがある。「よし料理」は、各方向性が混線している感じだけど、その「手近にある物を現地では日常的な調理法で料理する」をやろうとしているっぽいところが面白いのだ。

たとえば海外在住の日本人が、日本の味が恋しくなったとして、現地で手軽に入る食材を、とりあえず醤油みりん酒で煮てみる、みたいな家庭料理を作ったとする。調味料は日本から持っていたりして調達する前提だが。これは非常に正しい家庭料理だし、間違いなく日本料理と言えそうだ。だけど、海外で日本料理店を出すとして、「現地で手軽に入る食材を、とりあえず醤油みりん酒で煮たもの」を出すだろうか?わりとハイコンテキストだし、店としては受けないのではないか。

あとから人に教えて教えて貰ったのだが、『昆明老奶洋芋』のようなものは実際にあるらしい

云南老奶洋芋的做法_云南老奶洋芋怎么做_美食杰

ただしこれは「ミルク風ジャガイモ」ではない。この場合の老奶は「おばあちゃん風」であり、ミルクじゃないのだ。お店の人が奶の字に引っ張られて、ミルクと誤訳してしまったと思われる。実際には、マッシュポテトをおばあちゃんでも食べられるように柔らかく炒めたものらしい。これを店では、安く手に入る冷凍フライドポテトを使って作ったので、不思議な事になったのだろう。

雲南蜂蜜山药饼』にしても、実際現地にも山芋か長芋を潰して餅粉を混ぜて焼く料理があるみたいなんだけど、この店は原料費を抑えたために粉が多いのか、いも餅みたいではなく、パンケーキぽくなったのだろう。現地ではどんな仕上がりになるのだろうか?後から振り返って、その距離感がどれくらいなのか、却ってワクワクしてくる。
やはり『よし料理』の面白さは、手近な食材を雲南風の味付けにするという、特定地方料理を名乗る店としてはあまり見ないパターンの方向性にあるのかもしれない。その上で、写真が実物と違ったり、翻訳間違いも発生して、極めてカオスなことになってるのだろう。

面白いなあ。面白いけどこのままだと流行らないだろうなあ。現地の人が現地のままに作って出している本格料理ともぜんぜん違うしなあ。雲南に行っておいしいものが食べたいなあ

中国全省食巡り2|雲南省西双版納(シーサンパンナ)で食べるべき料理3選 | 80C

そんなことを考えながらぶらぶら歩いて、もう一軒

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おなじみの『虎轍』へ。もともと、2人までで静かに、というお店なので、コロナでもあまり雰囲気は変わらず

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なんと、メニューに30分チキンがあるぞ…お酒は鯉川

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真鯛のからすみ掛け、地鶏ササミわさび和え

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大変おいしくいただきました

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その後はぶらぶらお散歩。黒門市場の小雀弥、まだ健在なんだなぁ!昔、散々呑んでわけわからなくなって、最後に来た覚えがある

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この時ですね 

zaikabou.hatenablog.com

 中華食材屋を覗いたり

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ここにりくろーおじさんなかったっけ?

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イタリアブランドだけど中国向けなの?

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そんなこんなで、お宿に帰り着いたのでした

在華坊(@zaikabou)/2020年09月15日 - Twilog