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日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

小林旭を見に行く

6時起床。今日から、大学時代の先輩に誘われて、2泊3日で大阪に行くわけであるけれど。14日の夕方に新歌舞伎座で、小林旭15年ぶりの座長公演を見る、ということ以外に何も決まっていない。いずれにしても、大いに食い、大いに飲み、大いに笑い、大いに語るのは確かなので、べつになんでもいいのだいいのだ。
身支度整えて9時過ぎに出かけて、新横浜発の9時53分のひかりに乗り込む。休日の新幹線はあまり乗ったことが無かったけれど、さすがに3連休の初日、自由席もかなりの混雑になっている。1号車はそれでも空きも目立ったのだけれど、発車して暫くした後、後ろの車両から西洋人の団体がぞろぞろぞろぞろと湧き出してきて、空席が埋まる。その中の中学生くらいの女の子が、隣に座っていた台湾人の旅行者老夫妻と楽しげに会話していた。英語で。この台湾からのご夫妻、日本語もなかなか流暢で、たいしたものだと感心する。『小さい』と『少ない』の違いを説明していた。
名古屋で1人と合流。さっそく缶ビールを開けて乾杯し、三井理峯先生の命日ですよ今日は、などと追悼するうちに、あっというまに新大阪に到着。御堂筋線で心斎橋に出て、心斎橋筋をぶらぶらし、戎橋のたもとのTSUTAYAでお茶しているうちに、もう1人からも連絡が入る。ほいで、『大黒』という店に昼飯を食べに入る。ここはかやくごはんで有名な店で、そのほか、いろいろなおかずも、味付けが品が良くて大変に美味い。焼き魚も脂がよく乗っていて、大変に結構でありまして…。ここでも、当然ビールが空くわけです。
飯を食い、まだ開演まで時間があるので、とりあえず、宿で一休みすることと相成る。宿は『観光旅館ひさや』。なにしろ安いので選んだので、どんなものか不安だ。道頓堀から橋を渡り、宗右衛門町を東へ東へ。どこまで行っても無料案内所ばかり(案内所ばかり増えて、肝心のお店が無くなって、案内所だけになったらどうなるのだろう…)、こんなところの旅館で大丈夫かと思う間に堺筋通りを渡り、その旅館は、あった。

万博のころに出来た宿なのだろうか?お世辞にも立派とは言えない宿だけれど、掃除は行き届いているし、宿の人は親切だし、なにしろ値段は安いし、良い宿だと思う。昔ながらの街中の旅館という感じだなあ。映画『家族』に出てくる、東京の旅館はこういう感じだったなあ。3時前に到着したのに、すでに6畳の部屋に布団が3つ、並べて敷かれていたのにはちょっと笑ったけれど。あと、部屋のトイレが狭すぎて、小用を足す際に立ち位置を決めるのに難儀したのは面白かったが…。
一休みして宿を出て、台風迫り、小雨降る中を新歌舞伎座へ。どーん。

どどーん。

小林旭。ちょうど開場時間になったところで、大阪的に着飾ったおばちゃん達がぞろぞろぞろぞろ、建物に吸い込まれていく。今回の出し物は『無法松の一生』なのだけれど…。まあ、こういうスターの興行は、前半お芝居、後半歌謡ショーの二部構成になっており、前半のお芝居はコスプレ大会のようなものなので、まあ、そのなんというか。それなりに。来月以降の演目のチラシも置いてあったけれど、舟木一夫『同期の桜』ってのはいくらなんでもあんまり酷いと思いました。
お客さんはおばちゃんおばちゃんおっさんおばちゃん、という感じで、若い人はほぼ皆無。30凸凹の私たち3人が一番若いんじゃないのかしらん?というぐらい。ほいでもって、今回の座席は、ちょっとしたご縁があって、桟敷席の一番前。これはいい記念になるわいわっはっは、と記念撮影していたら、係員がすっ飛んできてすぐにカメラを取り上げられてしまった。そりゃそうですね。
お芝居は、50分やって30分休憩、第二部が45分で25分休憩、しかるのちに、小林旭大月みやこの歌謡ショーが1時間15分。休憩時間が長い。その間にお弁当を食べるから、ということもあるのだけれど、始まってみるとその休憩時間の長さに納得する。小林旭、68歳なのに、まあ熱演すること熱演すること!大丈夫か、もうちょっと手を抜いてもいいのでは、というように走りまくる怒鳴りまくる。小林旭でっかいなー。しかもこの興行、25日間、まったく休みなしで、半分ほどの日は1日2回興行なのである!14日と15日は、二日続けて1日2回興行なのである!大丈夫か小林旭。そんなに稼がにゃならんのか。まだまだ借金があるのか。
大味で判りやすい脚本の無法松の一生のお芝居は続き、休憩時間。ピンポンパンポン鳴らしながら、会場へのご注意。食い物持ち込むな、花道に物を置くな、撮影禁止、携帯の電源切れ、小林旭グッズ3000円で発売中です、サイン入り生写真3000円で販売中です、開演すると足元暗いのでお気をつけください、演出の都合上プレゼントコーナーはありません(プレゼントコーナーって何?と思ったが、スターにプレゼントを渡す時間が設けられるのが、この手の興行のお約束らしい)…。しつこく、しつこく、休む間も無く、ピンポンパンポン鳴らしながらご注意が続く。あんまりのシツコサに笑いが止まらなくなる。そんなに客のマナーが悪いのか。
お芝居は、大月隆寛が見たら激怒しそうな甘ったるい解釈の脚本により、小林旭大熱演のうちに幕が閉じる。25分の休憩の間、会場のボルテージはいやが上にも上がり、同行者から小林旭伝説を繰り返し繰り返し吹き込まれる私のボルテージも天井知らずで上がりっぱなし。割れんばかりの大音響(新歌舞伎座の音響は音が割れるよ…)にのっていよいよ『ビッグ2オンステージ』がはじまりまする。今時、小林旭以外誰も履けないようなエナメル靴、着れないような怪しい光沢のタキシードに身を包み、嫣然と微笑んでゆったりとあらわれる小林旭。あきらー!あ、き、らー!
大月みやこも花道のすっぽんから登場。こちらも6じゅううん歳なのだが、凄いドレスで。歌い出すと、さすがの歌唱力。花道のすぐ脇のおばあちゃん、もう今すぐに死んでも後悔しない、というような恍惚の表情で、乗り出して聴いている。
小林旭はやはり素晴らしい。これだけのスター性を持ち続けている人がどれだけおるじゃろうか。確立された芸風。歌の間に挟まるMCも、聴いているときにはなんとなく納得してしまうのに、後から思い返すと何も残らない爽やかさ。ああ、スターだなあ。炸裂する旭節に惜しみない拍手を送り、最後を『熱き心に』で〆て、興奮のうちにステージは終わった。ああ、素晴らしい。
終演後、カメラを返してもらい、千日前の『大一楼』という店で中華。4500円のコースを頼んだら、「80周年記念ですから」ということで、まあ出るわ出るわ。前菜、フカヒレのスープ、海老、北京ダック、そして、鯛の揚げたの。これがでかくて凄い。

そしてなにからなにまで美味い…。ああ、美味い。その後も次から次へと美味いものが出てきて、店の人が「8000円相当です」なんて言っていたけれど、8000円でもこれだけ食えるかどうか。実に素晴らしいお店だった。
飯を食い、小林旭の話で盛り上がるうちに、この火照った体と心をどうしてくれよう、と衆議一決。カラオケへとなだれ込み、2時間弱で24曲、そのうち小林旭14曲、さすが、声の出し方の基礎が出来てると違うぜ、という感じで、熱唱劇唱絶唱、もうやけくそですというような壮絶なカラオケ大会と相成ったのだった。日付の変わる頃、宿に戻り、そのまま敷かれた布団に倒れこむようにして眠るのだった。