日毎に敵と懶惰に戦う

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一人旅では駅前旅館に泊まるのが好きだ

一人で意味もなくビジネスホテルに泊まるのが好きだ - phaの日記
phaさんのこの文章、とても共感できる文章だった。ビジネスホテルの部分もそうだし、後半の部分も、それに輪をかけて。ここからは、敢えてビジネスホテル、というお題に絞って話をするけれど。ビジネスホテルの一室で、夜、身の回りに余計なものもなく、iPhoneをいじってネットを見ていたり、ぼんやりとテレビを眺めていたりする時間は好きだ。何にも増してぽっかりと、自由を感じられる時間でもある。
ビジネスホテルは、チェックインとチェックアウトがシステマティックで、安くて、ネットから情報がたくさん得られるので地雷を踏む機会が少なく、便利な立地にあって、安眠できて、最低限度の仕事ができるデスクがあって、部屋にバストイレ洗面もあって…と、仕事で利用するには、まったくもってよくできている。そう、だから、仕事柄出張が多い自分は、宿泊の選択肢の筆頭は常にビジネスホテルになる。よんどころなくビジネスホテルに泊まる機会が多い。だからビジネスホテルはどうにも仕事の延長になってしまう。落ち着けない。客室にいてもパソコン拡げて仕事したり、電話がかかってきたり…。あまり気分が転換しない。
なるべく大浴場のあるところを選んで、ゆっくりお風呂に足を伸ばして浸かったり、バイキングの美味しそうなところを選んだり、新聞が付いているところを選んだり、時々はビジネスホテルでもちょっと高級そうなホテルを選んでみたり…と工夫はするのだけれど、それでもやっぱり、ビジネスホテルはビジネスホテルなのだ。
ビジネスホテルも嫌いじゃないけれど、必要があって泊まる機会だけで十分。だから、一人旅をするときは…そして出張をするときでもできる限り、ビジネスホテルを避ける。避けてどこに泊まるのか。とにかく安く済ませた時はカプセルホテルという手もあるし
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ちょっと手を伸ばして高級ホテルという手もある。京都大阪は5〜10年くらい前は高級ホテルの相場が崩壊していて、大阪のリッツカールトンとか、蹴上のウェスティン都ホテルとか、朝食付きで1万ちょっとで泊まれたりもした
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ただ、最近はUSJの流行や外国人観光客の流入もあって、そういう美味しい話はあまりない。では、どうするか。
駅前旅館に泊まるのです。わかりますか、駅前旅館。商人宿とも言う。『男はつらいよ』見ていると、大抵、車虎次郎が泊まっているあれ。映画『家族』で、井川比佐志一家が東京で泊まるようなあれ。地方のターミナル駅で降りると、いくつかあるビジネスホテルのネオンに混じって、よくよく目をこらすと存在している、『○○屋』と看板がついている、あばら家があるでしょう。アレです。
ちょっと大きな駅の駅前にあって、客室は畳の部屋に布団が敷いてあるだけ。テレビはあるけれど、冷蔵庫はあったりなかったり。廊下には冷蔵庫があって、共同で使うようになっていたり。風呂トイレ洗面は共同。朝起きると共同の洗面で、軽く会釈を交わして眠い目をこすりながら、思い思いに顔を洗ったり、歯を磨いたり、ヒゲを剃ったりする、ああいう宿です。夕食は付かない。朝食だけついて、5,000円前後。
こういう宿は、宿の人もものすごくやる気があるわけでもない。宿の亭主は大抵、あまりやる気が無いか、どこか抜けたところがある。帳場でいくら呼んでもなかなか出てこなかったり。代わりにおかみさんが、明るくてハキハキしていて、もったいないくらい良くできた人だったりする。宿は古いが、掃除はそれなりに行き届いている。
こういう宿に泊まって、晩飯は街に出る。食べログはあまり役に立たないので、太田和彦吉田類の名前と都市名を一緒に入れてググるか、あるいはやまけんさんか橋本健二さんのブログを頼るか、まあハズレもまた一興で、ぶらぶらと繁華街を行ったり来たりして、ピンと来る店を選ぶか。このピンが結構よく外れるんだけど、自分で選んだので文句は言わない。駄目だったら何件かはしごしてもいい。当たったときの喜びは望外。
ほどよく酔って宿に戻り、そんなに広くは無いけれど足は延ばせる風呂に浸かり、畳の上に敷かれた布団にゴロンと横になる。なにもすることはない。余計なものが無い。明日はどうしよう、明日考えればいいか…などと、ぼんやりした時間をすごし、テレビを見るとも無く見て、じきに寝てしまう。
目覚めると食堂に行って、自分でポットからお茶を出してすすっていると、朝食が出てくる。そんな豪華なものが出るわけじゃない。ご飯に味噌汁に、おかずが数品。ただこの数品のおかずの中に、1品だけ、ハッとするような、土地の味があったりする。干物のひとつもあると嬉しい。そしてまた同時に、大抵、ものすごくやる気の無い、サラダとも呼べないようなサラダとか、目玉焼きとハムとか、黄色いタクアンとか、ノリと納豆とか、まあそういうものが出てくる。
じゃあそろそろ出ようか…とお会計をする。カードは大抵使えなくて現金なんだけど。帳場で声を張り上げると、ややあってあんまりやる気の無い亭主が出てきて。会計を済ませる間に、ポツポツ、土地の話が出てきたりする。そんな宿。
きちんと綺麗にして、ちょっと高めの宿もある。まあどんなに高くても7000円とか8000円だけれど。最近の外国人観光客の増加に合わせて、比較的都会にあるこの手の宿は、外国人対応がしっかりしていたりもする。口コミで集まったいろんな国の人達が、食堂で各国語で情報交換を行っていたり。それはそれで、また良い。そういう宿。いわゆるボロ宿が好き、というのでもない。
そういう宿に泊まって旅をするのが好きです。そういう宿をどう探すか。駅に到着してから目についたところに飛び込んだり、電話帳で調べて電話したり…というのもあるけれど。存外、そういう宿でも、楽天トラベルに登録していたりする。自分は飛び込みをするほどの行き当たりばったりな人間でも無いので、大概は、とりあえず楽天トラベルから探す。ピンと来るところが無ければ、宿が自前のWebページを持ってる場合もあるので検索してみる。楽天トラベルとかじゃらんで見つけても、直接電話する場合もある。
朝食は付いていない場合もあるし、なんなら風呂は、ちょっと銭湯に行ってもいい。そんなに深いこだわりは無い。ただ、なんというか、通底する雰囲気のようなものはある。ネットで見てもなんとなく伝わってくる雰囲気が。
新潟は松代の『松栄館』しかり
大阪は天王寺の『葆光荘』しかり
新潟佐渡は両津の『金沢屋旅館』しかり
山形は酒田の『最上屋旅館』しかり
長崎壱岐は郷ノ浦の…名は失念したが…
静岡伊豆は修善寺の『五葉館』しかり
静岡は沼津の…これまた名は失念したが…
新潟は古町の『旅館にしやま』しかり
秋田市街の『なにわ』しかり
静岡は熱海の『福島屋旅館』しかり
福岡は博多祇園の『鹿島本館』しかり
福岡は薬院の『西亭』…これはちょっと高いか
天王寺の『葆光荘』は良かったのでまた行った
そういう宿に泊まって、旅をするのが、好きなのです。



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