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日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

横浜美術館『BODY/PLAY/POLITICS』とコレクション展

横浜美術館で、10月1日から、近年注目される現代美術作家6人によるグループ展『BODY/PLAY/POLITICS』がはじまった。

yokohama.art.museum

身体性を通じて、この世界と政治について掘り下げる作品が並ぶ。以下は9月30日の内覧会で撮影したものだけれど、写真については一部の作品を除いて、会期中もいつでも撮影可能になっている。

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ロンドンの生まれでナイジェリアに育ったインカ・ショニバレ MBEは、アフリカのアイデンティティを訴求することが結果としてヨーロッパに依存してしまう複雑な関係性を、さらにややこしく絡まった状況を現出させることで問うてくる作品

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 マレーシアのイ―・イランは、東南アジアではよく知られる女性の幽霊をモチーフにした映像作品。長い髪の毛で顔を隠した女性たちが、自分達の女性性やアイデンティティを語り合うのだけれど、まるで女子会トークみたいなノリのなかに、いろんな問題点が複雑に散在している。映像の中で何人もの女性が入れ替わり、誰が何を喋っていたのか、あるいはそれをわざと意識させないようにしているのか

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タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンは、燃え盛る炎と扇風機の映像。炎が弱まったり、強まったり、変幻する炎、みんな見つめてしまう。火を見るとプリミティブに滾るものがある。カンヌ国際映画賞でも賞を取ったり、2011年の横浜トリエンナーレでも作品があったし、最近、とみに活動が活発なアーティストですね。

ベトナムのウダム・チャン・グエンの作品、先日のあいちトリエンナーレでも見ている

色とりどりのレインコートみたいなものをまとった原付の集団が進む、あいちトリエンナーレの作品も展示されていたけれど、原付の排気ガスが作り出す長い蛇のようなビニールが排気音とともに舞うオブジェ、そしてホーチミンの街の中でダンサーがこの蛇と戯れる映像…様々な神話や英雄譚をモチーフにした作品なんだけれど、それはともかく街そのものの生命エネルギーを、原付というベトナムで象徴的な乗り物と、ダンサーの身体に託したような映像の、躍動感に見入ってしまった。今回、かなり惹かれた作品

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 石川竜一は、沖縄で丹念にポートレートや風景を撮影して木村伊兵衛賞を受賞するなど活躍している写真家だけれど、今回は沖縄以外で撮影した作品。特に特徴も無いように見える人々の写真と、個性的特徴的な人々の写真がならぶと、変わっているように見える人の普遍性を見て、普通に見える人に潜むかもしれない特殊な状況を夢想し、そして普遍も特殊も無い、ということが頭の中をぐるぐるしてくる。

撮影禁止になっていた、奥のほうの作品がさらに感慨深いもので、石川竜一、大勢の前で喋ったりするのはあまり得意な人ではないのだけれど、対象となる人と丹念にコミュニケーションをとって迫っている様がよくわかる

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田村友一郎は、横浜でその作品を多く目にしていて、大がかりなインスタレーションで空間を作りこみ、見るものをその世界に引きずり込むような作品を多く作っている。あざみ野の作品は強い印象が残っているし

黄金町での作品も面白かったし、『風が吹けば桶屋が儲かる』展の、駐車場に民家が現れてしまったインスタレーションも忘れられない

 今回は、横浜を舞台にしている。終戦後、進駐したアメリカ軍の将校クラブをそのまま展示空間内に作り出し、そこで米軍将校の肉体を見た日本人の意識、ボディビルディングへの憧れ、そして三島由紀夫…という世界に引き込んでいく作品なのだけれど、そのビリヤード台にですね

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 なんか、ボディビルダーがいるよ!マッチョな人がビリヤードしている!マッチョな人、毎日会えるの!?

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残念ながら、このマッチョなボディビルダーの人たちは毎日いるわけでなく、この日だけだったみたい。ですが、作りこまれた展示空間は、戦後の特殊な横浜の雰囲気を感じ取れるものだった。

映像が多いけれど、映像の多い展覧会特有のどこからはじまってどこで終わるねん…みたいなストレスがあまりなく、6人とも、とても力が入っていて、よく練りこまれた作品が並ぶ企画展だったのです。そして企画展に続いては、コレクション展も。

横浜美術館コレクション展 2016年度第2期 | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

最初の「描かれた横浜」のコーナーでは、さまざまに描かれた横浜の作品が並ぶ。コーナーの最後に地図があって、どこを描いた作品かプロットされているので、横浜好きにはこれ楽しい

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以前に別のところに書かせてもらったことがあるけれど、横浜美術館はコレクション展の充実ぶりも楽しい美術館であるのよね

今回はとりわけ、展示配置がスタイリッシュな感じ。前回のメアリーカサット展の時は女性作家の作品をたくさん並べていて見ごたえがあったし、今回も企画展に合わせて見せ方に工夫が見られて、毎回、楽しみです

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だから、横浜美術館は企画展だけでなく、常設展も見て欲しいのでした。そしてそして、この展覧会の開催中、横浜で現代美術の注目すべき展覧会をたくさんやってますので、そちらも合わせて訪問してほしいのでした。

塩田千春は10月8日~10日の週末で終わってしまうのもあるので、お早めに。でもそれが終わっても、柳幸典がはじまるし…。とにかく、横浜、この秋は現代美術の展覧会が充実しているので、以下を読んで、一緒に廻る展覧会も検討してみてください

横浜美術館『BODY/PLAY/POLITICS』展は、12月14日までです。

yokohama.art.museum

 

……………

以下は余談。展示会場を出て、グランドギャラリー、レセプションの会場へ。大変な人の出ですね、これは。展覧会期間中、この日がいちばん混むのでは…

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なんと文化庁長官まで来ていて、ご挨拶

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先日のサミットでも供されたという国産のスパークリングワインや、国産ワイン、さらに展覧会タイトルの合わせて『BODY』『PLAY』『POLITICS』と名付けられたカクテルなどが供されておりました。寺田倉庫プレゼンツで、気合が入っておるぞ

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木村絵理子主任学芸員と、アーティストの皆さんが登壇

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石川竜一さんが朴訥としておる。そして田村友一郎さん、イケメンである…。楽しいオープニングレセプションで美味しいお酒をいただいたり、旧知の方とお会いしたりしていたのでした