9月2日、土曜日。横浜高島屋の開店時間になぜか横浜にいた私は
開店と同時に流れ込み、埜庵のかき氷、鎌倉紅屋のクルミっ子切り落としに大行列が形成されるのを見ていて、つい、クルミッ子切り落しを買ってしまいました。
朝から亀戸へ。西大島に出来た、腸粉の専門店『陽記』へ。専用の蒸し器で作られる腸粉、つるっとしていて、おかゆも美味しくて、よいお店。徐々にお客さんが入りだしてるみたい。
ひるごはんを食べて、水道橋へ移動。珍しく、ラクーアでだらだらお風呂に入ったり、岩盤浴したり
観覧車に乗ったり。
その後、日本橋高島屋の『日本の民藝』へ。展覧会は横浜高島屋で見ることにしているので、民藝の売り場を、よだれを垂らしながら見る。で、その足でさらに上野へ
正直、イロモノっぽい人だなと思っていたけど完全に認識不足でした。アレは科学的博物学的見地から様々な寓意を込めた皇帝の肖像画であり、そもそも抜群に上手いし、静物画の歴史の嚆矢にもなっていたとは。展覧会自体も構成良くたいへん充実していて面白かった。
レオナルド・ダ・ヴィンチの素描とか、ハプスブルク家の美しい器とか、それはそれとしてとても眼福なんだけど、はて、アルチンボルドといかなる関係が…みたいなものが、順を追って見て行くと、ちゃんと展覧会全体の文脈に効果的に作用してるんですよね。そういう部分もよく出来た展覧会だった。
アルチンボルドの代表作である「四季」「四大元素」全8点、野菜や動物や花や魚を組み合わせて顔になっている作品は、まずそのパーツ自体が極めて精緻な自然描写であって、それが組み合わさって顔が出来上がっていることの驚きをしっかり体感できる。8点がドドンと並んだ部屋がとても良い。
アルチンボルドに倣った作品も点数がかなりあって比較できるのが良いところなんだけど、他の人のは顔にするのが優先で個々のパーツが適当だったりして、ぜんぜん違うのです。比べてみると、アルチンボルドの観察眼、上手さ、寓意も込めて肖像画に仕立て上げる才覚、そういうのが際立つのですね。
アルチンボルド展の最初にある、自分の顔を認識してアルチンボルド風にしてくれる仕掛けもとても楽しい。夜間開館で行ったらこのコーナーも遊び放題だったし、展覧会自体も空いていてじっくり快適に見られました。アルチンボルド展、9月24日まで、会期終盤で混み合いますが、金土の夜がオススメです。
美術館を出たらもう20時過ぎ。さてばんごはん、歩いて御徒町へ。『羊香味坊』へ。
ここのカウンター楽しいな!目の前ですごい火力であっという間に様々な料理が作り出されて行く、羊は焼かれる、寸胴で何物かどう考えても美味そうなスープが煮込まれている、作っているものすべて食べたくなる…。
羊肉はもちろん、大変美味しかった、
が、である。この店の魅力は羊肉だけではないのだ…。
発酵ササゲいんげんと干し豚バラ炒めの酸っぱくて複雑な味わい、
豚三枚肉と発酵白菜の蒸しものの脂が美味いのに酸味の爽やかさ、
初めての味の喜び。目の前の厨房で作られてるけどメニューに無いな?なもの、帰りがけに黒板メニューを見つけ、地団駄…
御徒町『羊香味坊』は勿論羊肉も至高なのだが、前菜やオススメメニューの発酵した「正体のわからない何物か」を本当は食べて欲しくて、それはまさに世界が拡がるような脳の中の領域が拡張されるような何物にも代え難い喜びで、あれほど安価に間違いない質の「何物か」が出てくる店は空前絶後だと思う。
良い白米とか、食べると涙が出るほど美味いものはいろいろあるが、それはあらかじめ約束された旨さであって、鮒ずしにしろ、酸菜にしろ、ビールにしろ、日本酒にしろ、あの、発酵した何物かの旨さは、それとは全く違う、目の前に新しい世界がぱあっと拡がるような旨さである。それは何物にも代え難い。
最近、南インド料理や中華料理の店に通ってしまうのは、そういう喜びを求めている部分が大きい。知らない味の楽しさ!しかし、そういう、知らない味、とくに酸っぱい系の味が、特に日本で万人に受け入れられるものではないことは認識しているし、それはあくまでも好き嫌いの話だから優劣の話ではない。しかし、とにかく、わたしは好きなのです…
大いに満足して、御徒町をあとにしたのでした