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東京国立近代美術館『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』

東京国立近代美術館ではじまったばかりの展覧会『No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会』に行ってきた
No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会 | 東京国立近代美術館
この展覧会は、国立行政法国立美術館に属する5つの国立美術館、すなわち、東京国立近代美術館京都国立近代美術館国立西洋美術館国立国際美術館国立新美術館のコレクションによる展覧会。このうち国立新美術館はコレクションをもっていないので、実質、4館のコレクションのよる展覧会となる。
美術館そのものをテーマとした展覧会で、美術館って何?という疑問に、AからZまで、36のキーワードをもとに作品を並べる構成になっている。もちろん、これらの国立美術館から選りすぐった169点だから、展示作品そのものも良いものばかりなんだけれど、今回の展覧会は特に見せ方が面白い。美術館そのものがテーマだから、額縁、吊り金具、温度計、などなど、美術館にとって欠かせないアイテム…



さらには、運搬用の箱までが展示物になっている

展示構成を検討するための模型があったり

運び込んだ作品を展示するまでの映像があったり。実際に展示された作品、作りこまれた空間を現実に目の前にしながら、その空間が作られていく様子、作品が展示される様子の映像を見るという体験がとても面白い


また、“Guard”というキーワードにおいては、美術館が作品を守り後世に伝えていくこと、そして作品をなるべく多くの人に見せること、二律背反な命題に応えるための施設であることを意識する内容の展示が。大仰な保護柵や、監視員さえも、展示物の一部なのである!

ここに展示されているのがベーコンの作品というのもまた興味深い。近年、作品を保護するための額装のガラスは、作品を見やすくするために非常に透明度が高いものになっているんだけど、ベーコンはあえてそれを拒否する。鑑賞者と作品の断絶を意識させるために、わざと映り込むようなガラスを使えという。展示構成に、さらに作品そのものをして二重の意味を持たせるような凝ったキュレーションが、随所になされている面白い展覧会なのですね。
光、これまた、美術館にとって大事な要素。印象派をはじめ、作品の大きなテーマともなり、視覚のためにも映像作品も光がなくては…なのだけれど、光は同時に作品を痛める敵でもある。まさに、美術館が抱える二律背反を象徴する存在。光をキーワードとしたコーナーでは、作品を照らすためのハロゲン光そのものも展示作品となっている

また、美術館のバックヤード…ということで、東京国立近代美術館京都国立近代美術館国立西洋美術館国立国際美術館の、保管庫を再現したコーナーもある。そこに、各館所蔵の藤田嗣治の実際の作品が展示されているという贅沢!どれがどこの美術館かわかります?




このコーナー、藤田嗣治がフランスにわたって成功する前の陰鬱な作品と、かの有名な戦争画アッツ島玉砕ではなく、アッツ島爆撃が並べて保管されているんだなあ…みたいな、ちょっとニヤリとする楽しみもあるわけです。
ジャーナリズム、のコーナーでは、この展覧会についての批評などをファイルして、展示にどんどん追加していくみたい。おや、現時点で、あの某有名ブロガーの記事も…。

美術館そのものをテーマにAからZまでのキーワードで構成される「No Museum, No Life?」展が開催されます。 | 弐代目・青い日記帳
これはもしかしたら、ブログの記事を書いて美術館の作品になってしまうチャンスかも…。まあ、そんなことをしなくても、最後のほうには、自分も作品になってしまっているんですか。鏡が

美術館とお金のコーナーとか、ちょっとクスリとしてしまうコーナーもふんだんにある。この展覧会、美術館好きな人には裏側が見える面白さもある展覧会であるし、展示されている作品も素晴らしいし、この裸体のコーナーは西欧の邸宅系美術館みたいな圧縮陳列もあったりしてね

館内はいくつかの注意点を守ればほぼ撮影自由なので

あまり邪魔にならない程度にちょっと記録の写真を遺したりしつつ、楽しみたい展覧会なのでした。もちろん、合わせて、素晴らしい常設展も見て欲しいわけです!
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『No Museum, No Life?―これからの美術館事典』は9月13日までです