日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

そばや

6時起床、歩いて出勤。途中、カウンター5席ほどしか無い、スナックのような喫茶店でモーニング。スナックのママ(推定65歳)と楽しいひと時。夜は9時まで仕事、再び歩いて宿へ。
道半ばに、なにやら「手打ち」だのと麗々しく書いてある蕎麦屋があったので、何かつまんで熱燗でも、と思い立ち暖簾をくぐる。惨劇の始まり。
見たところは普通の蕎麦屋なのだが、席に座り、メニューを見るとどうもおかしい。まず、つまみらしいものがまったく無い。ビールと酒はあるが。蕎麦は、「ざる」だの「かけ」だのの他に、「組み合わせの蕎麦」と称していろいろなトッピングが乗った蕎麦がメニューに書かれている。で、なぜか、みな高い。ざるかかけ以外、平気で1000円以上するのはどういうことなのか。ここは並木か竹やぶか。
とりあえず、全体的に非常に嫌ーな予感がしてきたので、酒をのんびり飲むのはやめて蕎麦だけにする。気持ちが落ち着いていれば、ざるかかけだけ注文したのだろうが、気が動転していたのだろう、思わず「天ぷらの卵とじそば」1100円なりを注文してしまう。
ややあって蕎麦が出てきたが、なんなのだろう、これは。器が洗面器だ。いや、洗面器ぐらい大きい。ついでに、お玉のような馬鹿でかいれんげが出てくる。食べると、不味い。これは個性のある不味さだ。天ぷらはやる気の無い海老(固い)にサービス良く衣がついていて、この衣がまた油が悪いのか不味い。卵は卵なので特にコメントの仕様が無い。蕎麦の味は、トッピングの味が強すぎてなんだかよくわからないが、冷静に考えると(こんなところで冷静になっても、良いことは何も無いもだが)美味くない。東北本線沼宮内だよ貴君。
箸袋に、味がある達筆な字と思わせたいような、要するに不愉快なほど汚い字で「御注文のおそば料理に置きましては全て、当店の粉びき小屋にて製造の純そば粉を使用致して居ります。蕎麦本体の風味を充分にお楽しみ下さいませ。」
突っ込みどころが多すぎてどう反応していいのか正直戸惑うが、とりあえず笑わせようとしていることは理解できる(違うの?)。中島らもの芝居に出てきた、「うちのコーヒーは40年間同じ味です。40年間ずっと不味いのです」という台詞を思い出す。粉を自分でひけば良いってものじゃないな。蕎麦本来の味を楽しめといわれても、トッピングの味が無駄に濃すぎて到底分からないし、蕎麦本来の味が分かるともっと悲しいことになりそうだし。(蕎麦そのものは美味くも不味くもないのだ)
メニューをもう一度みると、「組み合わせのお蕎麦」はすべて、「肉」「天ぷら」「あげ」「卵とじ」の順列組み合わせでできている。「肉と天ぷらと卵とじ」とか「天ぷらとあげと卵とじ」とか。じゃあ「肉と天ぷらとあげと卵とじ」は無いのかと探したが、無い代わりに最後に「おまかせ」というのがあり、これが一番高いので、おそらくこれを頼むと「肉と天ぷらとあげと卵とじ」が食べられるのだろう。有り難い事である。1680円也。とんだ「おまかせ」である。それぞれのトッピングがいくらなのか、方程式を解こうとしたが、それは勝ち負けで言うところの負けだな、という気がしてきたのでやめておく。
とかなんとか思う間にも蕎麦はいちおう減って、食い終わったらなんだか気持ち悪くなってきたので勘定を済ませて店を出る。レジのおねえちゃんが明るくて気が良さそうなのが、余計に悲しさとやり場の無い怒りとを催させる。有限な人生の貴重な一回の食事になんということをしてくれたのかと、実に不愉快。店の主人の底知れぬ悪意というか、それよりさらにタチの悪い善意のようなものを感ぜずにはおれない。
その後、コンビニで酒とお茶を買って宿へ。今日も銭湯に行って、日記つけて就寝。